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中央線「西荻窪」駅あたり

金継ぎ師·松本チアリとクリエイティブさんぽ

author: Mochtan Athyssadate: 2025/05/16

職業の数だけ“つい目がいく”光景あり。

「クリエイティブさんぽ」は、クリエイターや職人、研究者など、さまざまな専門分野を持つ人が好きなエリアを散策し、独自の視点で気になった場所を紹介してもらう連載企画。読んだ後にちょっとだけ視野が広がるかもしれない、未知の仕事への理解が深まるかもしれない、そんなレポートをお楽しみあれ。

7回目にさんぽしてくれたのは、金継ぎ師の松本チアリさん。

松本チアリ



Instagram:@chiari.mtmt

風情漂う骨董の街にて、ドラマチックな“破損”探し

金継ぎ師の松本チアリです。日本の伝統的な修繕技法「金継ぎ」で器を修繕したり、金継ぎ教室の講師をしています。

今回は気になる街をお散歩できるということで「西荻窪」を選びました。骨董店が多くあるイメージで金継ぎにつながる何かに出会えるかもと期待を込めて。

仕事ではじめての街に行く機会は多いけど、時間を気にしていたり、迷わないようにGoogleマップと睨めっこになったり。日常ではつい見落としている景色に気づけたらいいなと、ゆったり気のまま歩きました。

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西荻窪駅北口から住宅街へ。まず気になったのがこちら。よくある「止まれ」の道路標示ですが「ま」の一部が書き足されていたり剝がれていたり。金継ぎを始めてから欠陥や補修が可愛らしく思えて。完璧な状態よりこっちの方が好きかも。

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住宅街にある小さな公園の長いすべり台。この日は曇天でうす暗い中、鮮やかな水色のすべり台が印象的でした。石の階段とすべり台、近所の子供たちはここでどんな遊びを作るのかな。

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コンクリートの隙間になにやら植物が。こうゆう逞しい姿を見ると「ど根性大根」のことを思い出します。小学生の頃に朝のテレビニュースで見たムキっと筋肉質な大根がなつかしい……。

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もう営業されていないらしい理髪店のサインポール。おそらくガラス製で金継ぎ師としてはとても継ぎたくなるヒビでした。いつだったかこの三色の意味が気になって調べたんですけど、様々な諸説があって明確には分からないそう。でも世界共通でこのサインが使われているって面白いですよね。

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道路にある止水栓がいつも魚に見えてしまいます。一度何かのモチーフに見えるとそれにしか見えなくなりますよね。テーブルの木目、壁紙の柄、、小さい頃はそうゆうものがたくさんあったような。

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ちょっと歩いたところにまた発見。こちらは茶色で鯛焼きみたい。たまに3匹並んでいたり珍しい時はつい写真を撮っちゃいます。だれに見せるでもないけど撮ってしまう写真がたくさん。

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外壁のこうゆうヒビにもつい目がとまります。金継ぎに使用する漆は紫外線に弱く、水に長時間触れるのも苦手。実際に漆で継ぐことは難しいので想像で楽しみます。

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電信柱の「ネコ注意」に吸い寄せられてみると、そこは地元の酒屋さん。かつて看板猫がいたのだとお店の方が教えてくれました。店内には猫ちゃんの写真がたくさんでとても愛されてたんだなぁとほっこり。

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酒屋さんで買ったラムネを飲みながら歩いていると、なんと道端に割れたお茶碗が。思わず手に取って破損のチェックをしたところ足りないパーツもありかなりの重傷。今までお疲れさまとそっと戻しておきました。

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住宅の外壁に四角い穴。なんのための穴なのか考えが巡ります。動物たちの通路? コードやホースを通したりするのかな。

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いい感じのアンティークショップがあったので立ち寄りました。金継ぎして可愛くなるものがないかなと店内を見ていると、縁に欠けのある小さなポットを発見。こちらだと真鍮や銀で仕上げて経年変色を楽しむのも良さそう。ポットについて調べてみると、イギリスの子供用栄養食品の容器ということが分かりました。イギリスから西荻窪に来て、次はどんな用途で使われるのか。器の人生も何があるか分からない。

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深緑のカップの内側にはT字のひび。爪で優しく触ってひびの深さの確認をしてみると水漏れはしなそう。使う上で支障がなければ、破損している姿のまんまを愛でるのも好きです。

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ガラス製の傘立てがふたつ。どちらも大胆なひびが入っていて、またまた継ぎたくなる姿。予想外に住宅街にも金継ぎ心をくすぐられるものが豊富な西荻窪。

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二軒目は以前訪れたことのあるアンティークショップ。愛嬌満点だけど全然招いていない猫。陶磁器、グラス、古時計、マッチ箱などなど沢山の骨董品がごちゃっと楽しい場所。

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石が好きという話をしているとお店の方が珍しいものがあると、糸魚川の石と台湾の石を商品棚の下から出してくれました。拾った方も相当の石好きらしくすごい数。

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じっくり吟味した結果、こちらの4つを購入しました。漆を塗ったり、金を蒔いても素敵そうです。お散歩の最後に石をお迎えできるとは。

今回の散歩を振り返って、改めて“破損”に惹かれてしまうことに気がつきました。金継ぎしたらどんな景色になるのかなと想像する癖は抜けなそうですし、せっかくならこれからも大切にしたいです。割れたり、欠けたり、ヒビが入ったり。形あるものは破損がつきもの。そのままの姿を愛でるも良し、金継ぎするも良し。

変化に気づいて受け止めて、楽しんでいけたらいいなと思います。

時間を気にせず気ままに歩く、とっても贅沢な時間をありがとうございました。

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Mochtan Athyssa