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全自動じゃ物足りない人に。

淹れる工程も楽しめるデロンギのエスプレッソマシン

author: 田中真紀子date: 2022/06/21

コーヒーは日常的に口にする飲み物の中でもとりわけ嗜好性が高く、自分なりのこだわりを持っている人も多い。豆にこだわる人、道具にこだわる人、中には淹れる工程そのものを楽しんでいる人もいるだろう。そんな“コーヒーラバー”におすすめしたいコーヒーメーカーが2022年6月15日(水)、デロンギ・ジャパンから発売された。今回、発表会に参加して一足先のその魅力を体験してきた。

クローム仕上げのアクセントを施し、レトロ感のあるデザインも魅力の「デロンギ ラ・スペシャリスタ・プレスティージオ グラインダー付きエスプレッソ・カプチーノメーカーEC9355J-M」。市場想定価格は16万8000円(消費税込)

今回登場するのは「デロンギ ラ・スペシャリスタ・プレスティージオ グラインダー付きエスプレッソ・カプチーノメーカー EC9355J-M(以下、ラ・スペシャリスタ・プレスティージオ)」。エスプレッソやカプチーノが淹れられる、いわゆるエスプレッソマシンだ。デロンギといえば、ボタン1つでエスプレッソが淹れられる全自動コーヒーマシンが知られているが、これはあえて1つ1つの作業が独立した半手動式だ。

具体的にどのようなコーヒーメーカーなのか。日本を代表するバリスタの1人で「KOFFEE MAMEYA」代表の國友栄一氏に、実際にコーヒーを淹れてもらいながら製品特徴と工程をチェックした。

東京・表参道〈KOFFEE MAMEYA〉や、清澄白河〈KOFFEE MAMEYA -Kakeru-〉で珈琲豆専門店を手掛けるほか、香港やシンガポール、ロンドンでも活動する國友栄一氏

エスプレッソの味を左右するタンピングが手動でもコツいらず

「ラ・スペシャリスタ・プレスティージオ」は前述のように、エスプレッソを淹れるために必要な機能が独立している。グラインダー、タンパー(タンピング)、抽出機能、さらにカプチーノも入れられるミルクフロッサーが搭載され、1つずつ自分好みに設定しながら操作していくのだ。

グラインダーには、コーヒー豆を潰しながら粉砕し、均一な粒度に挽けるコーン式を採用。摩擦熱が起きにくいため、コーヒーの香りや風味を残せるとされている方式だ。また豆の粒度(粗さ)は8段階で調整でき、豆の種類や焙煎度に合わせて選ぶことができる。

「粒度が細かいほど味が濃く出るので、一般的に浅煎り豆は細かめ、深煎り豆は粗めで挽くのがおすすめです。最初は粒度を固定して、慣れてきたら徐々に自分好みに変えていくといいですね(國友氏)」

豆の粒度(8段階)から量、杯数、湯温(3段階)などが選べる

こうして挽いた豆は、セットしたフィルターホルダーに落ちてくるため、そのまま圧をかけるタンピング工程に移れる。

「エスプレッソを淹れる際の味を左右する工程は大きく2つあります。まずはコーヒーパウダーをホルダーに詰めるドーシング。このコーヒーパウダーの量によって味が変わってしまうため、プロは毎回計量することが多いですが、家庭ではなかなかできませんよね。そして次がタンピング。エスプレッソは、コーヒーパウダーに圧をかけて押し固める工程がありますが、固めすぎると抽出に時間がかかって“えぐ味”が出てしまい、緩すぎるとお湯がサッと流れて薄くなります。また水平に押し固めないと抽出ムラにもつながるため、意外と慣れが必要なんです」(國友氏)

確かに、筆者もかつて自分でタンピングを行ったことがあるが、やはり均一にしっかり圧をかけるのは難しく、プロがタンピングしたエスプレッソとの味の違いに驚いた経験がある。その点、本機で行うタンピングは、左にあるタンパーレバーを手前に引き、ぎゅっと力を入れるだけ。均一に圧がかけられ、コツいらずでプロが行ったようなタンピングができるのだ。

多少の力加減で圧も変わるが「タンパーレバーをマックスまで下ろすと安定的に圧がかけられます」
タンパーレバーを下ろすだけで、ここまで均一なタンピングができる

タンピングが終わったら、そのままフィルターホルダーを抽出する位置に移動してセット。お湯の温度を低温・中温・高温で設定したら、あとは本機の中央にある「OK」ボタンを押せば、エスプレッソが抽出される。

実際に2杯のエスプレッソを試飲させてもらった。1杯目は、プロセスが異なる3種類のエチオピアをブレンドしたもので、それぞれフルーティー、ベリーの香り、発酵した熟成香を持つ。酸味が強い種類だが「同じく酸味のあるフランスのゼリー菓子と一緒に食べることで、酸味が和らぎ、甘さが引き立つなどの味の変化が楽しめます」と國友氏。確かにかなり酸味が強く刺激的だったが、ゼリーと合わせることでフルーティーな味が引き立った。2杯目は、エルサルバドル、ブラジル、エチオピア、インドネシアと4か国の豆をブレンド。1杯目に比べると酸味は和らぎ、苦味や甘さが際立って感じられる。

少量でもガツンと刺激的なエチオピアのエスプレッソ。フランスのフルーツゼリー菓子「パート・ドゥ・フリュイ」とよく合う

最近の日本人のコーヒーに対する嗜好の変化について、國友氏は以下のように語っている。

「近年、食に対する安全性やストーリーを意識する人が多くなっているなか、コーヒーにもこだわりを持つ人が増えてきました。使用する素材がどのように生産されたもので、それをどのように“調理”し、何と合わせれば素材本来の魅力を最大限引き出せるのか。まるでワインを楽しむようにコーヒーを楽しむ人も多い。この『ラ・スペシャリスタ・プレスティージオ』は、素材の味を引き出すために導き出した方程式通りに抽出してくれるマシンといえるでしょう」

ミルクフロッサーでラテアートの楽しみも

本機ではエスプレッソのほか、アメリカーノ、スペシャリティの抽出も可能。さらにミルクフロッサー専用のスチームボイラーを使えば、きめ細かい泡のスチームミルクを作ることができ、エスプレッソを注いでカプチーノも楽しめる。ベテランバリスタで、本場イタリアのバールと料理を楽しめる「オステリア・バール・ヴィアポカポカ」の店主、若生直氏においしいカプチーノを入れてもらった。

3つの穴からスチームが出ることでミルクの対流を起こしやすくし、滑らかな泡のラテを可能にするという

「きめ細かいミルクの泡を作るコツは、最初に空気をたっぷり含ませること」と若生氏。ミルクジャグに入れたミルクの表面ギリギリにフロッサーを当てて泡立て、十分な量の泡ができたら、奥まで入れてミルクを温める。最後にあらかじめ抽出しておいたエスプレッソを注げば、専門店さながらのカプチーノの完成だ。泡がしっかりしていると、ラテアートも描きやすいという。

ちなみに先述の國友氏によると、お店に立っていてもエスプレッソの注文は10%程度で、やはりカフェラテやカプチーノで楽しむ人が多いそう。ミルクの甘さがエスプレッソの苦味・酸味を和らげてくれるので、やはりエスプレッソマシンにはミルクフロッサーがついているものがありがたい。

・・・・・

エスプレッソがボタン1つで淹れられる全自動コーヒーマシンがあるなか、なぜあえて半手動式なのか。取材をはじめてすぐに、筆者もその魅力を実感した。そもそもコーヒー好きな人の中には、淹れる工程を楽しむために1つ1つの道具を厳選し、あえてハンドドリップする人も多い。1つの工程を終え、次の工程に進むごとに完成へと近づく高揚感が味わえるのだ。

一方で完全な手動となると、やはりプロのような知識やテクニックが必要になってくる場合もある。そういった意味で、1つ1つの工程を味わいつつ、誰でも簡単に美味しいコーヒーが淹れられる「ラ・スペシャリスタ・プレスティージオ」には、ほかにない魅力を感じる。そして何より、こだわり派を満足させてくれる道具感のあるデザインに所有欲がそそられた。

数々のラテアート大会で優勝経験を持ち、SNS総フォロワー数はおよそ90万人を超えるラテアーティスト、馬場健太氏によるラテアートの実演も
ミルクをピッチャーから注ぎながら描く「フリーポア」と呼ばれるテクニックで、さまざまな絵を見事に描き出す

取材協力:デロンギ

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白物・美容家電ライター
田中真紀子

家電を生活者目線で分析し、雑誌やウェブ、テレビなど幅広く発信する専門家兼ライター。家電の最新情報をキャッチするとともに、日々多くの家電を使いこなし、暮らしをより快適にする採り入れ方を提案している。2021年2月、家電を中心に人が集まる場所として「家電サロン」を開設。
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