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動画撮影から編集、プレゼンまで実施

Z世代中学生たちのリアルiPad授業がビヨンドしすぎ!?

author: 出雲井亨date: 2022/07/11

全国の小中学生に1人1台のデジタル端末を配布する「GIGAスクール構想」の整備が急速に進んでいる。そんな中、学校の現場では授業がどのように変わってきているのだろうか。AppleのiPadを活用した授業を見学してみたら、予想以上にテクノロジーをフル活用した授業が行われていた。

すべての小中学生に1人1台の端末を

小中学生一人ひとりに学習用端末と、高速大容量の通信ネットワークを整備する——。そんな「GIGAスクール構想」を文部科学省が打ち出したのは2019年のこと。直後の2020年に新型コロナウイルスの感染が拡大したことで、前倒しで整備が進められ、2022年にはほとんどの地域で整備が完了した。

昭和の時代に幼少期を過ごした身としては、小中学校の授業で各自がPCやタブレットを使う様子など想像もできない。授業といえば、先生がチョークの粉を飛ばしながら黒板に書く文字を、必死でノートに写していた記憶ばかり。一体、今の教室ではどんな授業が繰り広げられているのだろうか。

そんな折り、Appleが報道機関向けにiPadを使った授業現場を公開したので、取材した。

GIGAスクール構想で学校現場に導入されている端末は、主に3種類。GoogleのChromebook系端末、Windows系端末、そしてAppleのiPadだ。地域によっても違うが、おおよそ生徒1人あたり4.5万円の予算で、端末や通信回線を用意する必要があるため、おのずと選択肢は限られる。今回見学した東京都墨田区立錦糸中学校では、キーボード付きケースを装着したiPadを使っていた。なお、文部科学省初等中等教育局情報教育修学支援・教材課が2021年10月に発表した7月時点のデータから算出すると、iPadは全国の小中学校275万台以上導入されている。

ニュース番組作りを通じて地理を学ぶ

訪れたときに行われていたのは、社会科の授業。教室内にあまり生徒がいないな、と思っていたら、なんと複数の班に分かれてニュース番組を作っているという。南米の国々を題材にニュースを制作することで、地域の特色を学ぶというプログラムだ。

「制作現場」を見学してみると、これが結構本格的。3、4人ずつの班に分かれ、それぞれ別の教室で撮影している。キャスター役の生徒はグリーンバック(映像合成用の緑色のスクリーン)の前に座り、正面に置いたiPadで原稿を確認しながらカメラ目線で読み上げる。撮影するカメラももちろんiPad。机や椅子をうまく利用して固定していた。ディレクター役(?)の生徒も自分のiPadで原稿を確認しながら、撮影をチェックしていた。

墨田区立錦糸中学校主幹教諭の古賀隆一郎先生

この授業を担当する墨田区立錦糸中学校主幹教諭の古賀隆一郎先生によると、ニュース番組作りの授業は全6回。最初にSafari(Webブラウザ)を使って対象国を調査し、ニュースの内容を考える。その後Pages(ワープロアプリ)でニュース原稿を作成し、4回目くらいでいよいよ撮影。Keynote(プレゼンテーションアプリ)で作成した資料を表示したり、iMovie(動画編集アプリ)で背景を合成したりと、かなり本格的な動画を作るようだ。

最終的にできあがった動画はクラス全員で鑑賞し、お互いに評価しあう。自分が受けてきた社会科の授業とはだいぶ様子が違う。

インプット中心から、クリエイティブな学びへ

iPadを取り入れたことで、授業はどう変わったのだろうか。「主体的な学びができるようになった」と古賀先生は説明する。これまで社会科の授業は、インプットが中心だった。皆さんも「ブラジルの特産物は?」「世界最大の流域面積を持つ川は?」といった知識を一生懸命覚えた経験があるのではないだろうか。

ところがiPadを導入したことで、これが大きく変わった。自分が調べた知識を「いかに正確に、分かりやすく人に伝えるか」を考えるようになったのだ。単に自分が学ぶだけでなく、班員と議論しながら表現方法を考えることで対話的な学びが生まれる。さらに自分が理解したことを動画表現を通じて人に伝えることで、自ら考える「深い学び」が実現できているという。

「振り返り」によってフィードバックを得られる

動画制作という高度な作業が、iPadというひとつの端末上で完結できる点もポイントだ。調査、原稿執筆、資料作成、動画撮影、そして動画の合成や編集など、必要なステップがすべてiPadと標準アプリだけでできてしまう。さらに学校現場向けにAppleが用意しているアプリ「スクールワーク」を活用すれば、先生は各班、各生徒の進行状況も詳細に把握できる。

実際、教育現場では、「使いかたが分かりやすい」「セキュリティ面で安心」などに加え、「子どもたちの創造性が刺激される」をiPad選定のポイントとして挙げる声も多いという。特にクリエイティブ系のアプリが充実しているのは、iPadの最大の強みだろう。

iPad導入で学びが変わったのは、社会科だけではない。ほかの教科でもスクールワークを使うことで、「インプット」→「アウトプット」→「ふりかえり」という一連の流れを回せるようになり、「一方通行になりがちだった授業が、主体的、対話的に変わってきている」と和田浩二校長は手応えを語る。

実は、筆者には小学生と中学生の息子がおり、二人とも学校から自分用のiPadを配られている。だが自宅ではほとんど使っている姿を見たことがなく、授業がここまで変わっているとは想像もしていなかった。むしろ毎日たくさんの教科書に加えて(キーボード付きケースを装着した)重たいiPadを持ち運ぶのはかわいそう、と感じていたくらいだった。

だが今回授業の現場を見学し、デジタル端末を使った教育に大きな可能性があることがよく分かった。それにしても、中学生のうちからiPadを使って動画を撮って編集し、プレゼン資料まで作ってしまうとは…。筆者の世代には驚きでも、YouTubeやTikTokで動画を見慣れた世代にとっては、ごくごく当たり前の感覚なのかもしれない。


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ライター・Beyond動画ディレクター
出雲井亨

経営論のような堅い記事から、ガジェットやエンタメ系記事まで幅広く執筆。特にクルマ、バイク、電動キックボードをはじめとするモビリティ分野が得意。Beyondでは動画ディレクターとしてTikTokなどの動画制作を手がけている。
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