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「アルトゥーラ」試乗レビューVol.2

マクラーレンの次世代スーパーカーに乗ってみた。【レーシングドライバー松田秀士さんの場合】

author: 松田秀士date: 2023/02/28

マクラーレンといえば、F1の世界で覇を競うレーシング・チームという印象が強いが、ロード・ゴーイング・カーの分野でも着実に存在感を増している。英国を代表するスーパー・スポーツカー・ブランドが放つ初のプラグイン・ハイブリッド・モデル「アルトゥーラ」に、世界有数の高速サーキットとして知られる富士スピードウェイで、世界有数のレースに挑んだ経験を持つレーシング・ドライバーの松田秀士さんが試乗した。

F1グランプリにハイブリッド(KERS)が導入されたのは2009年だった。この年、KERSの搭載はチームの意向に任されていたのだが、他チームが躊躇するなか踏み切ったのはマクラーレン・メルセデスだった。

その後KERS搭載はF1GPでレギュレーション化され、その流れを受けて公道を走る市販スーパースポーツモデルにもハイブリッド化の波がじわじわと押し寄せている。スーパースポーツモデルも、もはや環境対策なしでは存続することができなくなってきているのだ。

2013年に発表されたマクラーレン初のハイブリッド・ハイパーカーのP1。エンジンとモーターを合わせたシステム出力は916ps/900Nmを発生する限定モデルだった。その後2021年にはスピードテイルをリリースしている。

軽量化を意識したPHEV

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そして2021年、マクラーレン初の量産ハイブリッドモデルであるアルトゥーラを発売。価格は3,070万円(標準仕様)。それなりに高価だがP1(約1億円)に比べたら量産ゆえ、かなりこなれた印象である。

アルトゥーラは7.4kWhのリチウムイオン電池を搭載するPHEVだ。モーター駆動のみで走行するEVモードも備えていて、約31㎞をエンジン駆動なしで走ることができる。

PHEV化はバッテリーとモーター等を含めたコンポーネンツで約130㎏の重量増。スーパースポーツモデルにとって重量増は運動性能に即影響するから極力少なくしたい。そこでアルトゥーラでは新設計の軽量カーボンモノコックを開発。車重は1,498㎏(DIN)に抑えている。このモノコックは今後の電動化のキーとなるアーキテクチャーだ。

さらにエンジンも新開発の3.0L V6ツインターボ。120°のVバンクの谷間に2個のターボチャージャーを置く。出力は585ps/585Nmで720等に搭載されるV8エンジンよりも50㎏軽い160㎏だ。トランスミッションとの間にセットされるモーターは95ps/225Nmで、エンジンと統合したシステム出力は680ps/720Nmでトランスミッションも新開発の8速DCT。全長を40ミリ短縮しているが、これは後進をモーターの逆回転で可能としているため、リバースギアを削除して1速追加(前進8速)しても短縮できている。

アルトゥーラはACCやレーンデパーチャーウォーニング、ハイビームアシストなどのADAS(運転支援機能)を備えていて、これらを含めたエレクトリックプラットフォームをCANからイーサネットに変更し、ハーネス等のケーブル長を25%削減。10%以上の軽量化を達成している。つまりマクラーレンはPHEV化に際して徹底的に軽量化を意識していて、そのテコ入れはあらゆるコンポーネンツに及ぶ。

世界最高峰のレースで鍛えたハイブリッドを試す

前置きが長くなったが走り出そう。試乗会は富士スピードウェイの国際レーシングコースを2周×2回という走行。インストラクターがドライブする先導車を追走する。もちろん追い越し禁止だ。とはいえ2回目の試乗ではインストラクターがかなりのペースで引っ張ってくれたので、なかなかの速度で走行することができた。なので、その本気ドライブの模様をお伝えしよう。筆者自身このコースはスーパーGTマシンで過去に何度もレーシングしている。

ピットアウト時はEVモードでの走行を試みる、はずだったが、前の走行グループがバッテリーを使ったのか、エンジンはかかったままだった。ゆっくりアクセルを踏み込めば130km/hまでEVモードでの走行が可能なはずである。ま、これを求めてアルトゥーラを購入するオーナーはいないと思うので、このEVモードインプレはなしだ。

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1コーナーを立ち上がったところでコンフォートモードにセットする。これは20km/h以下ではエンジンが停止し、加速も64km/hまでEVで走行するモード。とはいうものの、サーキットゆえアクセルは全開なのでエンジンが止まることはない。そしてスポーツモード、トラックモードと次々にドライブモードを変更してゆく。加速力はかなり強烈で、どのギヤセレクトでもアクセル踏み始めにモーターがアシストするのでターボラグを感じずレスポンスが鋭い。

新型エンジンは8200rpmのトップエンドまで胸のすく強烈な加速。中低速域ではモーターアシストとのコラボで力強いトルクの蹴とばし加速を感じるが、リヤタイヤのトラクションが大きくコーナー立ち上がり加速でもしっかりパワーを路面に伝えている。

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0~100km/h加速は3.0秒で後輪駆動モデルとしてはかなりの俊足。前述したように、コーナーではリヤセクションのグリップが高く安定しているのでコーナー進入でも高い速度で飛び込める。リヤサスを新設計のマルチリンクにしたことでプラス350㎏のダウンフォースを与えたのと同じレベルのグリップを得ているとのことだ。

ヘアピンを2速で立ち上がる。まだステアリングを切り込んでいるときに思い切って全開! すると、リヤが巻き込むように少ない操舵角でクリア! Eデフ(電子制御デフ)が採用されているのだ。Eデフはコーナリング中の外輪の回転を内輪に対して上げる効果がある。紙コップを転がしたとき、小径円の底面に対して飲み口の大径円が曲がり込むのと同じような効果だ。

逆にブレーキングやコーナー進入の限られた環境で左右輪の回転を等速にして安定性を高める。これらをコンピューターによって状況に応じてコントロールする。後輪ステアーも似たような効果を期待できるが、詳細なコントロールではEデフが上質だ。

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タイトコーナーから中速コーナーではこのEデフの効果と思われ、リヤグリップが高すぎるプッシュアンダーステアーの傾向はみられない。

全開で次の300Rコーナーでは180km/hを軽くオーバー! 上り坂なのにすごい加速だ。そのまま全開でステアリングを切り込むと、リヤが少し流れる。しかし、カウンターステアーを当てるまでもなく、少しステアリングを戻すだけできれいにクリアしてゆく。安定感バツグン。というかこの速度でリヤを半ばパワーオーバー状態にさせるパワーにも感動する。

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短い試乗だったがハイパーカーでサーキットを走る爽快感に包まれた。そして、今後PHEVなどの電動車はどのように進化してゆくのか? それはF1マシンに答えがあるように思う。アルトゥーラのモーター電圧はおそらく400V前後だろう。そのままパワーを上げるためには電流量を上げる必要があるが、そうするとハーネスの発熱が上がり太くする必要に迫られる。これは重量増につながる。これを解決するには電圧を上げるのが得策。ハーネスの軽量化も可能となる。このため現在のF1マシンは1000Vを超えているともいわれている。実際EVのポルシェ・タイカンは800Vだ。

F1GPで最初にKERS投入に踏み切ったマクラーレン。彼らの今後の電動化から目が離せない。

photo:佐藤亮太


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レーシングドライバー/モータージャーナリスト
松田秀士

1954年高知県生まれ、大阪育ち。ビートたけしの運転手からドライバー歴をスタートし、28歳でプロレーサーを目指す。ツーリングカーからフォーミュラまで、幅広いカテゴリーで活躍。1994年に念願のインディ500に初参戦し、96年には日本人最高位(当時)となる8位でフィニッシュを果たす。国内のスーパーGTでは、100戦以上の出場したグレーテッドドライバーとして表彰を受ける。浄土真宗本願寺派の僧侶でもあり、小型船舶1級免許も所持。BOSCH認定CDRアナリスト。
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