ミュージシャン、芸人、アーティストなど、いわゆる「文化系」の人にとって、スポーツはどのような存在なのか。ゲストの人生を振り返りながら、“文化系とスポーツの距離感”を探ってみよう。
今回、自身とスポーツとの関わりについて語ってくれたのは、4人組バンド「リュックと添い寝ごはん」で、ボーカル・ギターを担当する松本ユウさん。「体を動かすことも、音楽も好きだった」と語る、彼のこれまでの人生に迫る。

松本ユウ
4人組バンド「リュックと添い寝ごはん」のVo,Gtを担当。高校在学中に「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019」への出場と初の全国流通盤リリースを経験。2020年12月に1stフルアルバム『neo neo』でビクター / SPEEDSTAR RECORDSからメジャーデビュー。何気ない日常を肯定する温かみのある楽曲性と親しみやすいキャラクター、力強く芯の通ったライブパフォーマンスで注目を集める。
Instagram:@matsu_yu_ryukuso
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YouTube:@sleeping-rices
スポーツをすればするほど、新しい自分になれる気がした。
小学生の頃から運動が大好きで、放課後になると必ず校庭に出て、友達と遊んでいました。ときには、オリジナルのスポーツを作って遊ぶこともありましたね。
小学3年生になると、「友達が入部するから」という理由でサッカー部に入りました。部活といっても、外部のコーチが指導する任意参加のチームで、活動の中心は週2回の放課後練習と週末の大会参加。当時は、センターバックという最後尾のディフェンスのポジションを担当していたのですが、フィールド全体を見渡せるのが心地よくて、とにかく楽しかったのを覚えています。

小学校生活をサッカーに捧げてきた僕ですが、中学ではバスケ部に所属しました。理由は、とにかく身長を伸ばしたかったから。中学1年生の頃の僕は、身長が144cmぐらいしかなくて、背の順も前から2番目だった。それが、とにかくコンプレックスだったんです。
幸い、バスケは小学校の休み時間にしょっちゅうやっていたので、手でボールを扱うことにはすぐ慣れましたね。コーチからは「自分が下手だと思って練習しろ」とよく言われていたので、「絶対にうまくなってやる」と毎日必死に練習に打ち込んでいました。それに伴って、ご飯もすっごく食べるようになって、気付いたら身長が30センチも伸びていて(笑)。

当時の僕は、バスケが上達したり、身長が伸びるたびに、自分に自信がついていくのを感じていました。スポーツをすればするほど、新しい自分になっていく感覚がして、それがとても嬉しかったんです。
音楽はプロを目指すもの。スポーツは気持ちを解放するもの。
小中と、運動に打ち込んできた僕ですが、ピアノを習っていたり、バスケ部と吹奏楽部で悩んでいた時期があったりと、実は音楽にもすごく興味がありました。結局、身長を伸ばすことを最優先しましたけど(笑)。
音楽に目覚めたのは、「SAKEROCK」というバンドと出会ったのがきっかけ。「こんな音楽が作れるんだ」と感化されて、中学1年生の頃にはギターを買ってもらいました。
ただ、バスケに熱中していたのもあって、3年間まったくギターに触れず……。中学卒業間際に友達とバンドを組むことになって、やっとギターと向き合いました。

それから「高校で音楽がしたい」と考えるようになり、軽音学部が強い高校を受験。猛勉強の末、無事合格し、念願の軽音楽部に入部しました。
バンド活動を始めてからは、自然とプロを目指すようになりましたね。というのも、小中学生の頃は、「スポーツ選手になりたい」と思うことがあっても、自分の体格的に現実的ではないなと薄々感じていたんです。でも音楽は体格は関係ないし、ピアノの経験を活かせるという高揚感もあって、「自分ならできそう」という謎の自信がありました。

それからスポーツは、本気で取り組むものから“息抜き”へと変わりましたね。進学校ならではの窮屈な雰囲気の中で、体育や昼休みを使って友達と運動すると、なんだか気持ちが解放されるような感覚がありました。「やっと自由になれた!」みたいな。
いい音楽を作るために、運動はきっと必要な存在。
大学時代は、音楽活動が忙しくてサークルには所属していなかったものの、高校時代の友人と定期的に集まっては、ソサイチ(7人制のサッカー)の大会に出場したりしていました。
ただ、友人たちが就職して忙しくなると、次第に集まる回数も停滞気味になってしまって。少し寂しく感じていたときに、知人がギャロップ林さんの率いる「FC林」を紹介してくれたんです。今は、月2回ほどチームの集まりに参加していますね。
やっぱり運動をすると、代謝がよくなる感じがします。代謝がよくなると呼吸がしやすくなり、正しい発声にもつながるので、音楽活動に運動は必要なんだと、この仕事を始めて実感しました。

特に、スポーツ前のイメージトレーニングは、創作活動に活きているなと感じるんです。空間把握能力っていうんですかね。サッカーで「ここに誰がいてどういうプレーして」と考えるのと、歌詞を書くときに「あの人はこんな視点でこういう世界を見ている」と創造するのは、同じ筋肉を使っているなと思います。
そういえば、僕は幼い頃から、「この人が見ている世界はどんなのだろう」と妄想する癖があって(笑)。もしかすると、チーム競技が好きなのも、妄想できるからなのかもしれないです。
成長を実感できたり、息抜きできたり、音楽活動に活かせたり。思い返せば、スポーツはその役割を変えながらも、僕の人生にずっと寄り添ってくれていると感じます。
Text&Edit:しばた れいな