心地よく酔って、健康になれる原宿の薬酒バー『木馬®︎』。そのオーナーが新羅慎二さんだ。アコースティックシンガーのほか、起業家、ラジオ番組「循環RADIO」のパーソナリティ、芸術家などの幅広い顔を持つが、もう一つの活動名が“若旦那”。レゲエユニット・湘南乃風のメンバーとして、こちらの名前をよく知る人も多いはずだ。
「ハーブのおかげで今の自分があります」。そう語る新羅さんが勧める“ソウル”な一杯は、もちろん薬酒。その魅力はもちろん、“タオルを回す人”だけでなく“植物大好きな人”としても活動をするようになったきっかけなど、幅広く話してもらった。
新羅慎二
1976年生まれ。2001年にレゲエユニット・湘南乃風の“若旦那”としてデビュー。2018年から本名名義での活動を本格的にスタートし、音楽活動や役者、ラジオ番組「循環RADIO」(InterFM)、ZINEの編集長など多方面で活躍。ライブ前に欠かせない薬酒は“声帯ブレンド”。
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社会的意義を模索。ピースフルな起業家・新羅慎二が生まれるまで
―薬酒の前に、まずは“若旦那”ではなく“新羅慎二”さんとしてのお話を聞かせてください。起業家としての活動はいつスタートしたのですか?
実は湘南乃風のインディーズ時代は経営も担当してたんですよ。レコード屋さんへの営業や流通から、出入金のチェックまでやっていました。メジャーデビューしてからは、その時に得たノウハウを活かしてレコード会社を立ち上げたりもして。ミュージシャンと社長の二刀流なんです。
―その頃から新羅慎二という名義で活動していたのですか?
社長業はずっと本名でやっていました。ただ今のようにメディア露出はしていなくて、表に出るときは“若旦那”という棲み分けですね。でも、アコースティックシンガーを始めたあたりから、“若旦那”のイメージが足を引っ張ることに気づいたんです。「コンビニの前でカップ焼きそば食べてそう」「迷走してる?」とか好き勝手言われるし(笑)。こんなに頑張って毎日いろいろ練習しているのにですよ? “若旦那”と切り分けなきゃいけない、と思って2018年に“新羅慎二”名義での活動も本格的にスタートしました。
―新羅慎二名義では医療支援なども行われていますね。
湘南乃風でもヒットを出したし、実はレコード会社の社長として有名なラッパーを世に送り出したこともあったんです。でも、自分の活動の社会的意義が徐々に分からなくなっているところもあって。音楽でお金儲けをしているうちに貨幣主義的な価値観に飲み込まれている気がしたんですよね。「本当にやりたいことってそんなんじゃねえだろ」と。その一方で、稼ぎ続けないと自分や会社の従業員が生きられないという葛藤もあった。そしたらある日、とあるドキュメンタリー番組を見ていて、難病で死にそうな男の子が映っていたんです。「俺が音楽をやってるのはこういう子どもを救うためだ」と思って。
―音楽活動の社会的意義を再認識できたのですね。その傍でヴィーガン活動もされていたのはどのような理由ですか?
僕自身はお肉も食べるんですけど、ある時医者に乳製品が身体に合わないと言われて、オーツミルクに切り替えたんです。そこからヴィーガンの人たちとも交流するようになって、その考えに共感もしました。でも、彼らが安心して食事できるお店があまりないことを知って。平等に過ごすための“選択肢”が必要だと思って、ナッツミルク専門店の立ち上げに携わりました。それが“Unity(団結)”というか、平和の象徴になると思ったんです。
―新羅さんの現在の活動を拝見していると、平和や平等という言葉がキーワードのように思えます。その考えは昔からありましたか?
全然ありませんでしたよ(笑)。湘南乃風がデビューした20代の頃なんて、どう勝ち上がるかばかり考える人間でしたから。でも、僕にとっての音楽作りは“自分はどう生きるべきだろうか”の答え探しでもあったんですよ。それを続けていく中で、競争社会や貨幣主義の中で苦しむ自分に気付けたし、平等な世界を作りたいという願望も生まれた。そしてハーブの魅力に気付けた。音楽が僕を成長させてくれたんです。
「ソウルを感じる」。クリーンな飲み物・薬酒の魅力
―ここからは薬酒のお話を聞かせてください。新羅さんの出会いのきっかけはなんですか?
2022年から23年にかけて、湘南乃風の20周年キャンペーンをやっていたんです。ライブツアーを企画したり記念アルバムを作ったりと忙しくしていたら喉を壊してしまって。お医者さんにステロイドを処方してもらって騙し騙しやっていたんですけど、一向に良くならなかった。そんな矢先に、藁にもすがる思いで紹介してもらったハーブの調合師さんに「薬酒おすすめだよ」と。
―具体的にどのような効果がありましたか?
身体に合ったハーブが使われた薬酒を飲んだら、ステロイドなしでも歌の仕事を続けられるようになりました。それだけでなく、身体の調子がよくなった気もして。ハーブの成分って水やお湯よりもアルコールの方が溶けやすいらしいんですよ。
―2023年には原宿に薬酒専門のバー『木馬®︎』を立ち上げるまでにのめり込みました。その魅力はなんですか?
生き物って本来はこうやって生きてたんだなと、ヒトとしての“ソウル”を感じるんです。例えば野生の熊はお腹を壊した時に必ず食べる草があるらしくて。同じように、化学薬品が生まれる前は、ヒトもこんなふうに植物と共存していたんだろうなと身をもって体感できるんです。それに、胃腸が弱っている時や睡眠不足の時など、自分の健康状態によって美味しいと感じるハーブが異なるのも面白い。自分の身体に対する解像度が高くなりますね。
「強壮・免疫強化ブレンド」 1200円
―『木馬®︎』の薬酒のこだわりはなんですか?
調合師の方とタッグを組んで症状や目的に応じたハーブをミックスしています。血行改善効果が期待できるエゾウコギなどを使った「強壮・免疫強化ブレンド」や、抗ウイルス作用が期待できるエキナセアなどを配合した「アレルギー・花粉症ブレンド」などメニューのバリエーションも豊富です。10種類近くのハーブを贅沢に使っているのも他のお店ではあまり見ないこだわりかなと。割り物はウォッカやラム、ウイスキー、ノンアル対応のソーダやお湯などを用意しているので、お好みで選べます。
―お客さんの反響はいかがですか?
よく聞くのが「飲んだ翌日にむくみにくい」という話。健康に対する意識が高い人ほどいいリアクションをしてくれます。ちなみに湘南乃風のファンはほとんど来ません(笑)。乱暴な飲み方をしがちな若い子ほど、こういうクリーンなお酒のことも知ってほしいですけどね。
「この一杯を世界へ」。ハーブと作る健康的な未来
―今後はハーブを通してどのような活動をしていきたいですか?
植物愛が高じてその調合師の方と『植物最高Radio』というポッドキャストも始めました。うちの薬酒を自宅でも飲みたいと言ってくれるお客さんもいるので、いずれはブレンドを市販したり、アルコールゼロの滋養強壮エキスを手がけたいです。もしそれが軌道に乗ったら、海外にも輸出したい。実は僕、自分が作ったものを世界に発信したいという目標がずっとあるんです。でも、湘南乃風のような日本語の楽曲だとやはり限界があって。
―ハーブが新羅さんの長年の夢を叶えてくれるかもしれないと。
そうですね。最終目標は世界中の“未病(病の一歩手前の不調)”を治すこと。パンデミック下では病を理由に国や人同士がいがみ合うような光景もありましたが、ハーブの力によってもっと平和な世の中が近づいたらいいなと思うんです。
木馬®︎
住所:渋谷区神宮前3-28-8-3F
営業時間:19:00〜24:00
定休日:日曜
TEL:03-6844-3934
Instagram:@mokuba.harajuku
※薬酒に関する情報は個人の感想であり、個別具体的な疾病には対応しておりません。