職業の数だけ“つい目がいく”光景あり。
「クリエイティブさんぽ」は、クリエイターや職人、研究者など、さまざまな専門分野を持つ人が好きなエリアを散策し、独自の視点で気になった場所を紹介してもらう連載企画。読んだ後にちょっとだけ視野が広がるかもしれない、未知の仕事への理解が深まるかもしれない、そんなレポートをお楽しみあれ。
5回目にさんぽしてくれたのは、特殊メイクアーティストの快歩さん。
快歩
1996年生まれの特殊メイクアーティスト。きゃりーぱみゅぱみゅやyamaのライブのほか、Official髭男dismやKroi、yamaなどのMVに作品提供。2020年には、オーストラリアで開催された特殊メイクのコンペティション WBF 2020 World Championships special effects makeupにおいて、世界のTOP3に選出された。
Instagram:@ kaiho10
WEB:www.rana-jpn.com
下町で垣間見る異界。人智を超えた造形と“気配”にインスピレーションを得る
日比谷線の「三ノ輪」駅のあたりは、高校卒業後に上京して始めて住んだ場所。浅草が近いからか下町情緒があり、ひっそりとした雰囲気で過ごしやすい。別のエリアに引っ越した今でも、コーヒー豆を買いに行ったりと、なにかと馴染みがある街だ。
今回はそんな三ノ輪の商店街から少しそれた道を中心に、作品作りのインスピレーションになりそうな、なにか“気配”を感じるモノや場所を探しながら散歩した。
三ノ輪駅から商店街に向かう途中の高架下。最初に気になったのは、見慣れない形の電灯。高架下の塗料が剥がれてボロボロになった様子も、ここだけ時が止まっているようだ。
三ノ輪商店街の天井。何度も通った場所だけど、よく見ると何層にもレイヤーが重なった見応えあるデザインになっている。お店の2階に上がらせていただいて、窓を開けて天井を眺めながらボーっとしたりしてみたい。
やたらと角度が急な階段。「荷物多かったら大変だなー」とか考えながらずっと眺めているとだんだん変な見え方になってきて、トリックアートみたいに思えてきた。
きっとかなり昔から営業されている銭湯の外壁。色の組み合わせや柄のバランスに民族的なニュアンスを感じて見惚れてしまう。どうしてこのデザインにしたのかすごく気になる。
植物に覆われてしまっている建物。何かこの一角だけ違う世界からやってきたみたい。何かが潜んでいそう、などと妄想しながら眺める。
道路脇の植物。複雑に絡み合った木の枝のディテールが何かの作品に使えそうで、つい観察。綺麗に切り落とされず、このまま残して欲しいと思ってしまう。
道端に咲いていた花。重力に逆らうような造形をしていて、なかなか自力では思いつかないデザイン。植物にはいつも凄みを感じる。綺麗だけど、よく見ると毒々しかったりするところが興味深い。いつか何かの参考にしようと、頭の中の引き出しに保管した。
道端に咲いていた白い花。綺麗だけど、よくみると花の中から何かが生まれてきそうな、そんなイメージが湧いてくる。花って無茶苦茶面白い!!
不意に感じた視線の先にあった、ハッピーなポスト。個性的なサングラスと塗料が錆び落ちてしまっているディテールが妙に馴染んでいる。
居酒屋さんの前にサンタの服をきてポツンと居た人形。なんの動物なのか、なんのキャラクターなのか、全然わからない。サンタの服は新しそうだが、ずっと外に置かれているのか、人形そのものは煤けてくたびれている。真っ黒な目に何か感情を感じる。一体この人形はなんなんだろうか。
屋根の上に置かれたイスを発見。なぜこんな場所に? ここでくつろいでタバコでも吸っていたりするのだろうか? イスに登って隣のビルの窓に出入りする動線なのだろうか? “何か”がそこにいる妄想をしてしまう。
路地の隙間にも魅力を感じて目がいってしまう。「この奥はどんな場所なんだろう?」とか、 やはり“気配”を感じて妄想が広がる。
日頃から街を歩いていて、無意識に気になるモノや場所。この企画を通してじっくり向き合ってみると、それが面白いアイディアに繋がるんだなと改めて気づく。他の街でも時間を作って、不思議な場所や変な場所を探す散歩をまたしようと思う。