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どうせ買うならこれがいい vol.8

パンのミミが“乾杯”を変える。老舗ベーカリーから生まれたクラフトビール『Better life with upcycle』って?

author: 生駒 奨date: 2025/05/22

たくさんのものがあふれる現代、「おしゃれ」「便利」はもはや当たり前。ファッションアイテムやインテリア・雑貨、食べ物やドリンクも……あらゆるモノ・コトに対して、せっかくお金を払うならエシカルなほうが良いと考えている人も多いのでは。そんなあなたに向けて、「どうせ買うならこれがいい!」と思えるようなプロダクトやサービスを紹介する本連載。

vol.8で取り上げるのは、2022年に生まれたクラフトビールブランド『Better life with upcycle(ベターライフ ウィズ アップサイクル)』。運営するのは、創業102年目を迎える老舗のブーランジェリー・栄屋製パンだ。

創業以来、地域密着のパン作りを続けてきたという栄屋製パンが、クラフトビールブランドを立ち上げるに至った経緯とは? ブランド代表者の吉岡謙一さんに、『Better life with upcycle』の物語を訊いた。

Better life with upcycle

パン工場から出る「切り落とされて不要となった食パンのミミ」を、モルトの一部に代替して醸造を行うことをコンセプトとしたブルワリー。パンをハブとしたコミュニティから、食の未来にゆるやかにアクセスすることを目指してさまざまな活動を展開している。

WEB: https://upcycle-beer.com/
Instagram: @upcycle_beer
X: @upcycle_beer

「パン職人の仕事の4割が“無視”されている」。老舗ベーカリー経営者の抱いた危機感

「パンのミミ」を原材料にするというユニークなブルワリー『Better life with upcycle』。ブランド誕生の背景を、栄屋製パン専務取締役の吉岡さんは「パン職人たちの仕事をもっと届けたかったんです」と話す。

「パンのミミは、食パンで言えば全体の40%ほどの重量。こだわりと高い技術を持つパン職人たちの仕事が、40%も届かず無駄になっていることがもどかしかったんです。日々、使われないパンのミミが目の前に積み上がっていく光景を切ない想いで見ていました」

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学校給食用のパンを中心に、毎日たくさんのパンを生み出している工場

そんな時、吉岡さんはとある情報に衝撃を受ける。イギリスのブルワリーが、廃棄されるパンを原料にクラフトビールを醸造している、というのだ。「これができるのは日本ならうちだけだ」と確信し、吉岡さんはすぐに動き始めた。

ビールのOEM(委託製造)を請け負う会社に片っ端から連絡し、協業を依頼。なかなか良い反応は得られなかったが、持ち前の熱意で粘り強く営業活動を続けた。そして2022年6月、『Better life with upcycle』をローンチし、最初の商品を発売。クラフトビール作りを思い立ってから、わずか8か月後のことだった。

「パンのミミという原材料を最高のレシピでクラフトビールにしてくれるブルワリーに巡り会えましたし、ブランド作りやロゴなどのクリエイティブ面も任せられる仲間が社内外にいました。パン作りで得た人脈も活かして周囲を巻き込めたからこそ、ビジョンがスピーディーに実現していったんです」

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たった1年で醸造所を設立。その裏側にある“反骨精神”とは

クラフトビール作りという新たなスタートラインに立った吉岡さん。しかし、当初は知名度が上がらず、ECサイトの売上やプレスリリースへの反応も鈍かったという。そんななか、手応えを得るきっかけとなったのは「ユースたちからの反応」だった。

「若くてカルチャーに興味がある方々に向けた展示イベントに参加した時、思ったよりもすごく多くのお客さんに試飲していただけて、『おいしい!』『飲みやすいし、パッケージもおしゃれでギフトにも良さそう』と、たくさんオーダーがもらえたんです。その時に、『自分は1人じゃなかった』と思えました。もっと多くのお客さまに届けて、その人たちの豊かさや楽しさに貢献したいと感じたんです」

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イベント出展の様子

以降、『Better life with upcycle』は商品製造を他社の醸造所に委託する形から脱却し、自社醸造所を設立する方針に舵を切った。その時の心境を、吉岡さんはこう振り返る。

「お客さまのリアルな反応を見聞きして、ブランドが軌道に乗ってきたことを実感すると同時に、『もう自分だけのものじゃない』とも感じました。率直に言うと、大きな資本や儲けだけを考える人たちが寄ってきそうな気配もあって。事業をさらに成長させるという責任感と、独立性を保つという中小企業の反骨精神で、できるだけ早く自社醸造所を持つことを決めたんです」

そして2024年、決断から1年2か月という異例の短期間で自社醸造所をオープン。自らレシピを開発し、クラフトビール作りを極められる環境が出来上がった。

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ビールが苦手なユースにも。『Better life with upcycle』定番商品をご紹介

現在、『Better life with upcycle』では定番テイストから旬の材料を活かした期間限定商品まで、幅広いラインアップを展開している。最大の特徴はもちろんパンの風味。味わいは多種多様ながら、どこかパンの香ばしさが感じられるクラフトビールがそろう。

Beyond magazine 読者にはビールが苦手だったり、すぐにカクテルに切り替えるという人も多いのではないだろうか。そんな人にも飲みやすく、ゆったりとした時間を共に過ごせるのが『Better life with upcycle』のクラフトビールたちだ。ここでは、定番として通年楽しめる3つのクラフトビールを紹介する。

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左から『India Pale Ale』『American Wheat』『Extra Special Bitter』。セットでも販売中

India Pale Ale(インディアペールエール / IPA

南国を思わせる柑橘系の香りが舌に広がるクリアなIPA。ESBとは別の飲み味を目指し、ホップの華やかさや苦味が存分に感じられるのが特徴。

American Wheat(アメリカンウィート)

小麦とオーツ麦によるシルキーな口当たりが特徴。ジューシーさのなかに草やハーブの風味が感じられ、クリアな苦味によって柔らかく飲みやすい1杯に仕上がっている。

Extra Special Bitter(エクストラスペシャルビター / ESB

モルトの甘みが感じられる銅褐色のクラフトビール。ホップの苦味ではなく麦の風味がしっかり感じられるから、ビールが苦手な人にも飲みやすい仕上がり。チルなひとときのお供に最適。

暑い日に楽しみたい1杯。サマーシーズンのおすすめクラフトビール

『Better life with upcycle』は、さまざまな生産者や農家などとのコラボレーションにも積極的。自社の「パンのミミ」と同様、それぞれの生産過程で出るロスを活用した商品を開発することも多いのだそう。公式ECサイトや取扱店舗を覗けば、旬な原材料を使用した限定商品がたくさん見つかるはずだ。ここでは、2025年のイチオシ商品をご紹介しよう。

Ume Sour Ale w/ Honey(ウメサワーエール ウィズ ハニー)

梅酢を作る過程で破棄される梅の果肉を原材料にしたビール。福井県で育てられた梅の実を使用している。暑い日にぴったりな酸味のある爽やかな飲み口。

Golden Stout(ゴールデンスタウト)

黒くない黒ビール。2種類のコーヒー豆が使用されており、チョコレート、スパイス、ベリーのような豊かな風味が楽しい1本。夏の夜にゆったりと楽しむのはいかが?

仲間や顧客との、気軽で長期的な関係を。『Better life with upcycle』が掲げる“サステナブルな未来”とは

『Better life with upcycle』は現在、公式ECサイトやクラフトビールを取り扱う小売店で販売している。2025年夏から秋にかけては、さまざまなイベントにも出店を予定しているそう。吉岡さんは、今後のさらなる野望について次のように話してくれた。

「遠くない将来、念願の自社直営店をオープンさせるつもりです。パン作りだけをしていた時、『職人の仕事をお客さまに届けたい』『お客さまの生活や人生を豊かにしたい』と思って試行錯誤していたのが、今の『Better life with upcycle』につながっている。そんな僕たちの世界観を、より伝えられる場所を作ります。それが、事業が長く続いていくことにもつながる。仲間たち、お客さま、みんなと長期的な関係を築くことが僕にとってのサステナブルです」

「サステナブル」「アップサイクル」という言葉に手垢が付き、その本質が問い直されている現代社会。そのなかで、クラフトビールを楽しみながらナチュラルなコミュニティを築いていくことが、『Better life with upcycle』の提案するサステナビリティだ。安心できるパンの香りと、誰もが飲める気軽さ。まずは1杯味見して、このゆるやかなサイクルに加わってみてもいいかも。そう思わせてくれる、愛すべきブランドだ。

『Better life with upcycle』のクラフトビールが購入可能なイベントが近日開催予定!

<イベント①>
イベント名:農大ビアフェス2025 in 世田谷
日時:5月24日(土)11:00~18:30/25日(日)11:00~18:00
場所:東京農大世田谷キャンパス

<イベント②>
イベント名:CURRY & BEER FESTIVAL 2025 in 川崎
日時:5月23日(金)16:00~21:00/24日(土)11:00~21:00/25日(日)11:00~19:30
場所:川崎駅前 かわさきフェス広場

<イベント③>
イベント名:EBINA BOOZE FEST 2025
日時:2025年6月7日(土)11:00〜19:00/8日(日)11:00〜19:00
場所:ビナガーデンズ イベント広場(海老名駅から徒歩1分)

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編集者・ライター
生駒 奨

ファッション、アート、映画、文芸、スポーツなどさまざまな分野で編集者・ライターとして活動。企業のオウンドメディアでのコンテンツディレクションにも携わる。好きなものはビーグル犬、洋服、森博嗣の小説、ホラー映画。
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