アートをショート動画で紹介する『耳で聴く美術館』。運営するのは動画クリエイターのavi(アビ)さんだ。
2021年8月から本格的に運用して約4年。2025年5月現在、TikTok21.4万人、YouTube18.6万人、Instagram13.9万人、SNS合計約54万人ものフォロワーを抱える“アートインフルエンサー”として活動中だ。
現在インフルエンサーとして全国の美術展を巡り、華やかに活動するaviさんだが、20代前半は「自分が自分でいられなくなった」絶望の日々を過ごしていたと振り返る。

稀人No.012
「耳で聴く美術館」主宰/動画クリエイター・avi(アビ)
1992年生まれ、大阪府出身。神戸大学発達科学部で美術教育専攻。2021年8月から「耳で聴く美術館」をスタート、動画クリエイターとして活動中。TikTokやYouTube、Instagramなどで年代問わず様々なアート作品や美術展等を紹介する他、若手アーティストへのインタビューなど、幅広い切り口からアートを発信する。
Instagram :@mimibi_art301
TikTok :@mimibi301
YouTube :@mimibi.art301
公式サイト:https://www.mimibi.ch/
「こんにちは!アーティストさん」:https://konnichiwa-artists.com/
アートを発信して4年、SNS総フォロワー数約54万人

箱根 彫刻の森美術館(※「耳で聴く美術館」提供)
「まさか炎上……? なにかやらかした……?」
作業台の脇に置いているスマホが、ずっと光っている。作品リストを整理しながらそわそわとスマホ画面に視線を送るのは、ひとりの女性。
彼女は、ギャラリーのアルバイトが始まる前、TikTokにひとつ投稿を済ませていた。世界的なパフォーマンスアーティスト、マリーナ・アブラモヴィッチの作品『Rhythm 0(リズムゼロ)』を紹介する40秒ほどのショート動画だ。
ババババババババ...…! 投稿してから1時間ほど経っていただろうか。スマホの様子が、どうもいつもと違う。TikTok通知のポップアップが、勢いよく倒れていくドミノのように次々に重なって表示され続けている。アプリがバグっているかもと、一瞬思った。
「……バズってる……!!!」
心臓がバクバクする。投稿が拡散されていく不安と、動画を評価される喜びが、混ぜこぜになる。慌ただしいスマホ画面が視界に入るだけで、身体じゅうに妙な感覚が広がっていく。勤務中、彼女はずっと気が気でなかった。
アルバイトが終わってすぐ、TikTokを開く。自分が作った動画がわずかな時間で想像を超える人数の人たちに見られている。1日で200万回再生され、1週間ほどで500万再生を記録した。
2021年、太陽がじりじり照りつける蒸し暑い8月の出来事だった。

ファッション他多彩な切り口でアートの世界へ誘う(※「耳で聴く美術館」提供)
この投稿をきっかけに飛躍したアカウントは、アートをショート動画で紹介する『耳で聴く美術館』。動画クリエイターのavi(アビ)さんが運営する。
「心が震えるアートの話をしよう」をコンセプトに掲げて、美術展とアーティストを多彩な切り口から動画で表現し、見る人をアートの世界に誘う。60秒以内のショート動画はエンタメ性が高く、小難しさは感じられない。
動画内のaviさんの静かで穏やかな語り口は、不思議に「次の休日にでも、アートを観に行ってみよっかな」という気持ちにさせてくれる。
華やかに活動するaviさんだが、20代前半を振り返ると絶望の日々だったと語る。
図工や美術の授業が好きだった子ども時代

モエレ沼公園(※「耳で聴く美術館」提供)
1992年、aviさんは大阪で生まれた。父は公務員、母は専業主婦の“ごく普通”の家庭で育った。
小学生のときは仲良しの友人とずっと外で走り回って遊ぶような活発な子どもだったが、家に帰ると本を手に取った。想像がかき立てられるミステリーものを好んだ。学校では手先を使うような細かい作業が得意で、図工や家庭科の授業で課題が出るたびに、細部までこだわって表現することに夢中になった。
中学では美術の授業が好きだった。風景画などを描くよりも文字のレタリングといったデザイン系の授業が多く、aviさんは次第にその魅力に惹かれた。美術の先生から課題の出来を高く評価され、クラスメイトの前で褒められるのが嬉しく、モチベーションに変えて取り組んだ。
高校卒業後は、神戸大学発達科学部で美術教育の道に進む。
「当初は心理学部希望だったんですが、偏差値が高くて断念したんです。高校3年生の秋、得意なことをもう一度改めて棚卸しして進路を検討しました。小学校で好きだった図工や家庭科、中学で美術を褒められたことを思い出して『美術ならがんばれる!』と舵をきりました」
個人一人ひとりを認めてくれる、心地よさ
aviさんは大学生活のなかで、自身の世界を広げていく。
まず、講師陣が異彩を放っていた。美術分野からは抽象画家や鉄の彫刻家、音楽分野からはダンサーや指揮者といった面々が、本業のかたわら教壇に立つ。講師の発する言葉の数々が、世間一般の常識とは異なる柔軟で自由な発想ばかりで、aviさんの好奇心を刺激した。
なかでも成績の評価方法がユニークだった。全体でランキングするのではなく、学生一人ひとりの取り組みを評価するやり方に、aviさんは居心地の良さを感じた。
また、10歳年上の社会人学生の、時間をかけて丁寧に課題に取り組む姿に驚いた。なぜなら、小学生のときから「速さは正義」が当たり前になっていたaviさんにとっては真逆の世界で、新鮮に感じられたからだ。

松本市美術館(※「耳で聴く美術館」提供)
学生時代は、未知の世界を体感するため、さまざまな場所に積極的に足を運んだ。
2012年3月には、東日本大震災の慰霊祭ボランティアメンバーとして、岩手県大船渡地区を訪問する。
ひと目見ただけでわかる津波が襲ったであろう場所。被災者が話す声に入り混じる喜怒哀楽。テレビではわからなかった事象が、五感を通してaviさんの心に迫ってくる。
仮設住宅では、高齢の女性が、まるで自分の孫に接するかのように、明るくおしゃべりしてくれた。しかし、黙祷の時間だけはまるで様子が違った。女性はaviさんの手をとり、ぎゅっと握りしめる。つなぐ手を通じて、女性の想いが全身に流れてくるようだった。
現地を訪れなければ体感し得ない感情があることを、aviさんは知った。
未知のものに、もっと出会いたい
翌2013年、aviさんはアートの概念を大きく覆す体験をする。
大阪から岡山・宇野港行きの格安シャトルバスが運行されていることを知り、友人と一緒に、瀬戸内海に浮かぶアートの島・直島への弾丸日帰り旅行を決行した。
目的は常設の美術館と、本村地区で展開する「家プロジェクト」の鑑賞だったが、建築家・安藤忠雄が設計した美術館「地中美術館」にも立ち寄った。
展示作品はジェームズ・タレルが2000年に発表した「オープン・フィールド」。光を利用したアート作品で、スクリーンのなかに入り込むような体験ができる。
「どうぞ靴を脱いでおのぼりください」と係員に促され、パネルに続く階段へと案内される。階段奥には青く光るパネルのようなものがある。でもそれは係員によるとパネルではなく、その向こう側にある空間への入り口だという。
この時点ですでに自身の存在の境界が曖昧になったような不思議な感覚で、aviさんの全身の神経は大きく戸惑っている。目の前は奥へと広がっているはずなのに、青いパネルがあるようにしか見えない。
青いパネルのなかに足を踏み入れる。体が光に包まれて、天井がどこにあるのかわからない。壁もどこにあるのかわからない。友人の輪郭もぼやけて見えて、この世のものではない異世界に迷い込んでしまったような、神秘的な体験だったという。

「空間のなかに溶け込んでいったような不思議な時間でした。世界が180度ひっくり返ったような感覚です。あの空間のなかでは非科学的な世界を信じてしまいそう、なんてことだ! という感激で、しばらく呆然としました」
aviさんは、アートが持つ可能性に心を震わせた。
「未知のものに、もっと出会いたい」
ジェームズ・タレルの「オープン・フィールド」アート体験は、aviさんに美術展へと足を運ばせる原体験になった。
「詰んだ。人生終わった」
学生一人ひとりの個性を重視する講師陣と美術を体系的に学んだ4年間。もちろん就職先も美術関係で探したものの、関西エリアでは美術館の学芸員や美術の教職員の枠そのものが極端に少なかったのか、なかなか見つけられなかったという。
「今でこそアート特化ライターや美術関連の広報マンなど、美術の知識を活かして活躍できる仕事は幅広くあるとわかるのですが、当時は仕事の探し方すらわかりませんでした」
aviさんは先輩にならい、大手企業に就職しようと目標を据えて100社にエントリー。地元の某大手鉄鋼メーカーに就職が決まった。
2ヶ月にわたる新入社員研修。毎日グループワークをこなすものの、人目を極度に意識してしまい「間違えたらどうしよう」「人前で話すことがこわい」など不安に押しつぶされそうな毎日を送る。
個性を打ち出すことを良しとする大学生活から一変し、月曜から金曜まで決められた場所で決まった業務をする、いわゆる「サラリーマン」の働き方に心身がついていかず、違和感を覚えていく。
与えられた業務を要領よくこなすこともできなくて、定時以降も仕事が終わらない。上司も同期も、いい人に恵まれた。励ましの言葉をかけてくれるが、ぶわっと涙が溢れてしまう。そのたびにトイレに駆け込んで泣いた。食欲も落ちる。入社2年目の終わり、完全に会社に行けなくなった。
「完全に詰んだ。私の人生、終わった……」

アーティスト・大河紀さんの作品(※「耳で聴く美術館」提供)
休職中、心療内科やカウンセリングに通いながら、会社の寮で過ごした。心の傷を癒すように、ハーバリウムやドリームキャッチャーを無心で作った。手を動かしているだけで、本来の自分に立ち返れるような気がした。
深い失意の底に沈むaviさんを救ったのは、書店で出会った哲学者・池田晶子さんの書籍だった。生死をテーマに書かれたタイトルに惹きつけられ、本に手を伸ばした。
「『死』について、誰もが漠然と怖いもののように認識しているけれど、そもそも生きている誰もが経験していない。死ぬのは、心なのか体なのか。当たり前に使っているその言葉を、いま一度じっくり考えてみようと、本のなかで提案していて、確かにそうだなって。池田さんのメッセージがストンと心に落ちて、今の自分が鬱々とした気分になるのはおかしなことではない。起こるべくして起こっているだけ、という考え方に切り替えられるようになりました」
その後は会社に行けない自分を、ちょっとずつちょっとずつ、時間をかけて受け入れた。
aviさんは、2回休職したのち、2018年に退社した。25歳だった。
「好き」をひたすら試す、納得するまでやりきる

キース・へリング展(※「耳で聴く美術館」提供)
aviさんは気持ちをスパッと切り替えた。過去に思い描いていたキャリアは、もう二度と自分の人生のなかで叶うことはない。となれば、あとは好きなことだけすればいいのでは? そう大胆に振り切った。
もともと学びたかった心理学を学ぶために、社会人向けのカウンセラー養成学校に通った。動物病院でアルバイトを始めたのは、動物が好きだから。体を動かすことも好きで、スポーツジムのパーソナルトレーナーの仕事も掛け持ちした。さらに、ギャラリー2箇所で美術展の企画運営のアシスタントとして働いた。同時に、Adobeのソフトを使えるようになりたくてデザイン会社でも働いた。
気の向くままに行動するなかでもいちばんやりがいを感じたのは、美術館併設ショップのアルバイトだった。
「美術展に合わせた書籍をショップで販売するため、美術書籍の選書の仕事を任されました。次の企画展とマッチする美術書を専門の書籍問屋が提案リストを送ってくれて、内容を読み込んで検討するのがとても楽しかったです」

サルバドール・ダリ、ゴッホ、世界の美しい美術館、アーティストにまつわる絵本と、多彩な書籍にふれるうちに、有名作品が描かれた裏側や時代背景の知識を得た。
かつての直島でのアート体験と同じく、未知の世界に踏み入れていくような感覚と似ていた。
コロナ禍で勢いづいたTikTok旋風に乗る
時が経ち、2020年3月。新型コロナウィルス感染症が猛威を振るい、仕事をしていたギャラリーも自宅待機になった。
時間を持て余したaviさんは、当時爆発的に流行していたTikTokをずっと眺めていた。
そのなかで、TikTokだけで約70万人超(※2025年5月現在)のフォロワーを抱える映画感想TikTokクリエイター・しんのすけさんのコンテンツに惹かれた。
「『この映画がつまらなかった』というような内容の動画で、それが何十万回も再生されていたことに当時は驚きました。共感のコメントも寄せられていて、オープンなプラットフォームで『つまらない』と、ネガティブな感想を直球で表現してもいいのか! と。同時に、作品の感想を言うのがコンテンツになっているのも面白いとも感じました」
aviさんは瞬時に「スマホ1台あれば自分にもできそう。私も美術書で得たアートの知識をコンテンツにしてショート動画を作ってみよう」と思い立った。興味のままに動くのはお手のもの。
手探りで撮影して投稿すると、ポジティブなリアクションが返ってきた。見てもらえたことが純粋にうれしかった。当初は40秒ほどの動画をひとつ作成するだけで2日間費やしていたが、2~3本作るとコツがわかり、60秒のコンテンツなら2~3時間で作れるようになった。
TikTokは、投稿してからすぐに反応がわかる。クリエイティブな側面とすぐに結果を出したい“せっかち”なaviさんの気質。磁石が引き合うかのように抜群の相性だった。aviさんは水を得た魚のごとく、毎日投稿を目標に、ひたすら行動し続けた。

「耳で聴く美術館」Instagramより
やるからには戦略的にやろうと、見た目も工夫した。
フォロワーの男女差が発生するのを避けるため、あえて中性的なビジュアルを意識した。さらに第一印象でちょっとした違和感を抱いてもらうために髪の毛をブルーに染めてミステリアスな雰囲気に。アートを発信する動画クリエイター・aviを徹底的に作り込んだ。
2021年8月、個人アカウント名を「耳で聴く美術館」に変更し、アート特化の動画クリエイターとして本格的に活動をスタートさせた。アカウント名の由来は、aviさんが中学生の頃からラジオを聴くのが大好きだったことから。夜、耳からの情報だけを受けて想像の羽を広げる時間が、とても幸せだった。
人生を変えたメガバズ。雲の上の存在「森美術館」とコラボレーション
「耳で聴く美術館」が初めてバズったのは、冒頭に記したマリーナ・アブラモヴィッチのパフォーマンスアート『Rhythm 0(リズムゼロ)』を紹介するショート動画。
鑑賞者が、6時間の間に限り、彼女の身体に自由に触れたり道具を使ったりできるパフォーマンスで、暴力と人間性をめぐる問題提起として大きな衝撃を与えた作品だ。道具には銃やナイフといった自らの生命を危険にさらすものもあり、そのアート作品の是非についてaviさんが動画で問いかけた。心を揺さぶるメッセージ性もあって瞬間風速的に広がり、500万超の再生を記録した。
「メガバズは、純粋にうれしかったですね。実は、30歳までに何者かになりたいという目標を据えていたんです。自分が死んだとき、誰の記憶にも残らずに忘れ去られてしまうかもという恐怖感に常にさいなまれていました。けれどフォロワーを得れば自分のことを覚えてもらえる、自分の存在を知ってもらえているという安心感が強いです」

勢いづくaviさんに、さらに追い風が吹く。2022年2月、「TikTok creator academy(ティックトック クリエイター アカデミー)」と称した学習支援プログラムに応募し、1期生100組に選出された。数十万円の制作支援金が支給され、同じ目標に向けて切磋琢磨するクリエイター仲間の横の繋がりができた。動画のフィードバックをし合うなど、仲間の存在はaviさんにとって活動継続の大きな刺激になった。
@mimibi301 TikTok Awards Japan 2022ありがとうございました✨Education部門最高でした!#tiktokawardsjapan2022 #tiktokアワード #耳で聴く美術館 ♬ オリジナル楽曲 - 耳で聴く美術館
「TikTok Awards Japan 2022」Education部門受賞を報告したTikTok投稿
2022年4月、TikTokが森美術館とパートナーシップを締結し、コラボイベントにTikTokクリエイターとしてaviさんも参加した。aviさんにとって森美術館は、神戸で仕事を終えたその足で新幹線に飛び乗って駆けつけたことがあるほど雲の上の存在だ。
当日、TikTokサイドの運営者が、森美術館の広報担当を紹介してくれた。
その際、「いつも動画を見ています。ぜひ一緒にお仕事しましょう」と言われて、胸がいっぱいになった。
「日本のなかでもトップクラスの森美術館に『耳で聴く美術館』を認知してもらえている。ただただ感動でした」
すぐに仕事のオファーが来た。5ヶ月後の2022年9月30日金曜日、森美術館で開催中の展示会「地球がまわる音を聴く」解説ツアーを森美術館の担当キュレーターとともにLIVE配信をすることになった。
「初めての大役をいただき、いちばん印象に残っているお仕事です。生配信ですから失敗は許されません。準備に1ヶ月くらい費やしました。16名すべての出展アーティストの基本情報と作品を、図書館で必死にリサーチしました。会話中の相槌のバリエーションを増やしたり、配信中に寄せられるコメントを想定して応えられるように知識を頭に叩き込んだり。とてつもなく大変でしたが達成感もあり、動画撮影したスタッフとともに大きなステップとなった貴重なお仕事になりました」
若手アーティストが安心して自己表現を続ける環境をつくりたい

「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2023」ではガイドツアーを担当(※「耳で聴く美術館」提供)
「耳で聴く美術館」の発信活動をはじめて、2025年8月で5年目を迎える。
これまで、さまざまな属性のひとたちにアートの間口を広げるべく、作品を象徴するコピーを添えてアート作品を紹介するほか、美術展グッズや美術館併設カフェのグルメ情報、デートにおすすめの美術館など多彩な切り口を駆使して動画を作成してきた。その努力が実り、SNS総合計約54万フォロワーを抱え、大きな影響力を持った。
アートを気軽に楽しむきっかけを提案した次のフェーズは、同世代の国内若手アーティストの力になりたいと話す。若手アーティストを紹介するサイト『こんにちは!アーティストさん』で過去のアート作品やインタビュー動画といったアーカイブを蓄積していき、アート作品の購入につながってほしいと意気込む。
note後援による耳で聴く美術館のアートイベント「耳で聴く美術館の展覧会」、2023年11月4日・11月5日に開催〜
また、アーティストが持つ繊細な心を守る世界を作っていきたいとも願っている。それはかつて、aviさんが大学でポジティブな衝撃を受けた、一人ひとりの個性を大切にする“自分が自分でいられるやさしい”世界でもある。
最後に、同じ時代を生きる同世代の読者に、aviさんが共有したいメッセージを尋ねてみた。
「いまは、スマホ画面を通じてなんでも擬似体験ができてしまう時代です。だからこそ、いっさいの先入観を捨てて、現地を訪れて自分の五感を研ぎ澄ませて実物を体感してもらいたい。作品とじっくり対話する時間を、もっと人生に取り入れてほしいなって思います」
取材を終えてカフェをあとにする。ぬるっと湿った生暖かい風が通り過ぎ、雨がしとしと降る。aviさんのあわい水色のワンピースがひらひらと揺れる。
「このあとまだ行ったことのない美術館に行くんです。それではここで失礼します~」

執筆
野内菜々
兵庫県在住ライター。 ジャンルレスで地域のヒト・モノ・コトの魅力を掘り下げるべく、取材・インタビューライターとして活動中。「聞くこと、書くこと」を通じて「誰もが自然体で笑顔で過ごせる世界」を目指す。自然に寄り添う暮らしが好きで、気がつけば草花木、生き物を観察する日々。プライベートは二児の母。きなこが好き。

編集、稀人ハンタースクール主催
川内イオ
1979年生まれ。ジャンルを問わず「世界を明るく照らす稀な人」を追う稀人ハンターとして取材、執筆、編集、イベントなどを行う。