人は遅刻をする生き物だ。遅刻しない人などきっと存在しないはず。だから重要なのはどのような「言い訳」で、待たせている相手に納得してもらうかだ。
しかし、遅刻の理由を正直に話した結果、相手が怒ってしまっては元も子もない。ときには頭を捻ってみることも大切だ。相手が納得してくれば及第点。クスッと笑ってくれれば完璧。きっとお互いにとって良い一日になるはず。
ならば、その言い訳を本気で考えてみようじゃないか。今回はラッパー・valkneeさんとYouTuber・たむらかえさんの2人に集まっていただき、さまざまなシチュエーションに応じた遅刻の言い訳を考えてもらった。しかし、取材は冒頭から波乱の展開を迎えることに。

valknee(バルニー)
ラッパー、アーティスト。東京を拠点に活動中。Zoomgalsとしての活動やAbema TVから配信された「ラップスタア誕生2023」への出演、和田彩花、REIRIE、lyrical schoolらアイドルへの楽曲提供など活動の幅を広げる。2024年4月に1stアルバム「Ordinary」をリリース。Podcast「ラジオ屋さんごっこ」を隔週配信中。
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たむらかえ
大理学修士新卒引篭エリート社会人」というキャッチフレーズで注目されるYouTuber。2022年9月より開設した「たむらかえ」チャンネルでは、お菓子作りにユーモラスなアフレコを乗せた“お菓子エンタメ”動画が人気。2023年10月からはサブチャンネル「たむらかえ2」を始動し、独自の視点で日常を切り取るVlog やトークコンテンツが幅広い支持を受ける。
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たむらかえ
たむらさん、遅刻
――今日はよろしくお願いします!
valknee:よろしくお願いします! ちょっと早く着いちゃってすいません。今日のテーマが遅刻なので……遅れるわけにはいかないなと思って早めに来ました。
――今日は、時間にきっちりされているイメージのvalkneeさんとあまり時間に縛られていなさそう? なイメージのたむらかえさんと「遅刻の言い訳」をテーマにお話を聞きたいと思ってお集まりいただきました。が、実はさっそくたむらさんから連絡がありまして……。
valknee:まさか。
――15分程度遅刻するそうです。
valknee:やばいですね(笑)。
ガチャ(ドアが開く音)
??:おつかれさまです~。
――あ、たむらさん! と思ったら撮影スタッフか……。到着時刻を遅めに申告して罪を軽くする手法かと思った。ちなみにvalkneeさんは15分って遅刻だと思いますか?
valknee:普通に遅刻ですよね。3分ぐらいまでは階段を上っている時間とか道に迷っているバッファ時間としてセーフ扱い。それ以降は「おやおや~?」って感じになってきます(笑)。
――やっぱり時間にきっちりされているんですね。それにしてもたむらさん遅いですね。
(集合時間から27分経過)
――あ、たむらさんそろそろ着くそうです! ちょっと出迎えに行きましょうか。
たむら:本当にすいません……。

valknee:30分遅刻はやばいですね(笑)。
――裏切らないですね(笑)。改めましてお二人ともよろしくお願いします! まずは、たむらさんに遅刻された理由を伺ってもよろしいでしょうか?
たむら:自宅に来賓の方が来ていて、その方を手厚くもてなしていまして。
――お客様が。
たむら:まあ友人なんですけど。お味噌汁などを作ってゆっくりと朝ご飯を食べていたら遅くなりました。
valknee:ええ……! いや、その言い訳は通用しない(苦笑)。でもお客さん目線では魅力的なシチュエーションだ。
たむら:なんとなく絶対に間に合うだろうという自信はあったんですよ。ちょっとゆっくりしていても、最悪タクシーを使えば間に合うと思っていたんですけど、全然間に合いませんでしたね。

リアル遅刻現場です。フィクションではありません。
――たむらさんは普段から遅刻することが多いですか?
たむら:気持ちとしては全然したくないんですけどね。人のことは待たせたくないし、初対面ならなおさらなんですが。
valknee:誠実な気持ちですね。

――valkneeさんは逆に時間に厳しく、遅刻しないイメージがあります。
valknee:valkneeとして活動を始めるまでは普通に遅刻してましたよ。大学の友達との約束とかは遅れていたけど、そもそも身の回りからいなくなっていきました。
――自分の成長を妨げる人を「一人ずつ身の回りから消していった」とPodcast「ラジオ屋さんごっこ」で言ってましたね(笑)。逆にみなさんは、いつから遅刻するようになりましたか? というのも、子どもって大人ほど遅刻しない気がするんですよね。
valknee:大学生のころですかね。1限にまったく出られなくて全部落としていたんですけど、基本誰も注意してくれないじゃないですか。そこから学生時代は遅刻が習慣づいた気がする。
たむら:私は授業に遅刻することはなかったけど、大学に入るとバイトとかサークルとか要素が増えてくるじゃないですか。バイトが長引いて遅れるとか、予定がだんだんと詰まってきたことで遅れる理由が生じた気がします。
valknee:じゃあ自分の中に優先順位があるんですね。その中で授業はかなり上の方だったんだ。
たむら:そうですね。でも大学の授業とか部活の遅れが影響して、少しずつ“遅れ癖”がついてきた気がする。逆に高校までは遅刻って絶対にしちゃいけないものだと脅迫的に思っていました。でもだんだんと5分ぐらいは遅刻に入らないか、と。

遅刻のセーフは3分まで!?
――言い訳を検討する前に、そもそもどこからが遅刻ですかね?
たむら:基本的に5分とか10分くらいなら遅刻とは思わないですね。もっと言えば5分早く着くよりも5分遅く着くほうがマシだと思っているので。たとえば7時集合だったら7時5分到着でGoogleマップで調べていきます。最後の徒歩で巻くイメージ。まあだいたい駅から出るのが難しかったりしてさらに遅れるのですが。
valknee:私は3分までは遅刻じゃないかな。でも1分遅れるなら「ちょっと遅れる」って連絡して、10分以降は「10分遅れます」って具体的に言うようにしてます。
たむら:最近そういう連絡やらなくなっちゃったな~(笑)。
valknee:えー。あとは10分遅れそうだったら「15分遅れる」って伝えて、多少遅れてもいいようにバッファを取っておくこともするかな。
たむら:でも「10分遅れる」って言葉が強いので、仮に8分しか遅れなかったとしてもみんなの記憶の中では「10分遅れた人」になるわけじゃないですか。だから早めの時間を申告しておけば、12分遅れても「10分遅れた人」になるので得なんですよ。
――なるほど。我々はすでにたむらさんの術中というわけですね。

たむら:あと1人で待たせる場合はちゃんと時間通りに行くようにしているんですが、3~4人とか大人数のときは遅れてもいい時間の幅が大きくなる気がします。人が多いと自分がいる必然性が減るのでめっちゃ遅れてもいいかって。
valknee:それはあるかもしれない。大学時代に周りにだらしない人がたくさんいた頃から大人数の遊びの方が好きですね。まあ誰かしらはいるしって意味で遅刻されてもそこまで気にならなかったかも
――大人数であることで、たむらさん的には遅刻“しても”大丈夫で、valkneeさんは“されても”大丈夫って認識なんだ。対照的ですね。たむらさんは遅刻されて怒ることってあるんですか?
たむら:怒るまではないですが、会社勤めの友達が遅刻していると「社会人のくせに遅れてるのかよ。やってけるのか?」って気になります(笑)。

valknee:立場と紐づいているのめっちゃおもろい。でも私の周りに、前日遅くまで飲んでたという理由で遅れて来る友達がいるんですよ。しかも仕事の飲み会。次の日約束してるとわかっているのに、なんでそんな遅い時間まで仕事の飲み会をするのかが意味不明。それはイラついちゃいますね。
――年齢が上がるにつれて出てくる問題ですね。
valknee:“会食”だからとか言うじゃないですか。なんで仕事の飲み会がうちらの約束より優先されるのかって話ですよ。
――確かに、遊びも仕事も「約束」としては同じはず。ちなみに、遅刻のオーソドックスな理由として寝坊があると思います。寝坊で遅刻のご経験は......?
たむら:全然ありますよ。
valknee:潔いな。

たむら:でも遅刻の理由としては予定をつめ込みすぎて、間に合うと思ったら読みが甘かったってことが多いですね。いけると思ってても直前で調べたら思ったより遠いとか。
――自分のことを信用してるんですね。私もそのタイプかも。
valknee:私は自分のことをまったく信用していないです。だから2日前とかには調べておいて、「準備」「移動」「予定の本体」でそれぞれGoogleカレンダーに入れておくようにしてます。
たむら:えぇ……。
valknee:そうでもしないとできないんですよ。目についたもの全部「あ、これやってないじゃん」ってすぐ別のことやろうとしちゃうから。改善するためにvalkneeとしての活動を始めるタイミングぐらいで、“全て”をカレンダーに入れるようにしましたよ。「風呂」「睡眠」「起きる」とか本当に全てを入れたキモいカレンダーを作ってます。カレンダー通りに生活をするロボットですよ。

遅刻の言い訳を実際に考えてみた
――お二人の“遅刻観”も見えたところで、ここからは「言い訳会議」スタート! デート、仕事、結婚式などシチュエーションごとに遅刻の言い訳の最適解を探っていこうと思います。

【お題 ①】前から約束していたとっても楽しみなデートや友達との約束で、30分以上の遅刻。その理由は?
valknee:これは「鼻血が出てなかなか止まらないせいで遅刻」とかどうでしょ。ワクワクしすぎて止まらなくなっちゃったっていう。
たむら:あー、血が出るのは結構いいかもっすね。
valknee:有無を言わせないというかね。マジでやばいやつかもしれないしで、結構シリアスな雰囲気を醸し出して許さざるを得ない感じ。
たむら:ただ鼻血とか腹痛とか体調系は心配から始まっちゃうのが懸念点かも。「今日楽しめるのかな……?」みたいな不安が生まれてしまいそうじゃないですか?
valknee:じゃあ「鼻血が出すぎて多摩川ぐらいの幅になっちゃったから渡るのに手間取った」ぐらいにしとくか。
たむら:うん、それなら体力が有り余っている感じがするから大丈夫ですね。ちなみに「お腹が痛すぎて各駅で降りてた」って言い訳は結構使いますよ。

――経験者は語る、ですね。反対に30分の遅刻の言い訳としてこれは悪手だろ、というものってどんなですかね?
valknee:特定の言い訳の話じゃないけど、一緒にPodcastをやってる昔からの友達は、定期的に30分以上の遅刻をするので手を変え品を変えいろんな言い訳を繰り出してくるんですよ。「荷物が届くと思ったら届かない」とか「家族と喧嘩になっちゃった」「オンライン会議が」とかバリエーション豊富かつ、「嘘だ」とは言いづらい絶妙なラインで。まあ嘘だろうなと思ってますが(笑)。
たむら:事実かどうかよりも、どれだけ納得させられるかが大事ですよね。あと手抜き感は良くないかもですね。「頭痛くて」よりも「家を出る前に映画観始めちゃって……」とか言われたほうがなんとなく罪が軽いかもです。「納豆混ぜてたら勢い余って天井についちゃってそれを拭いてた」とか言われたほうが嬉しい。
valknee:それいい! こいつはダメだって思いつつ盛り上がれる。
――まとめると、「楽しみだった」ことを伝えつつ言い訳の手を抜かないってことですね。これは友達間のコミュニケーション全般に使えそうです。では次。

【お題 ②】絶対に遅れてはいけないはずの仕事で、なぜか遅刻。その理由は?
たむら:こういう絶対に遅れちゃいけないやつはできるだけ体調が悪いほうがいいので、「緊張しすぎてめっちゃ吐いてた」とかですかね。周囲の「え、大丈夫ですか?」の時間で遅刻自体を曖昧にできる(笑)。
――実際に使ったことありますか?
たむら:大学の部活とかでちょっと使ってましたね。でも絶対にってほどではなかったかも。集合時間が決まってはいるけど、集まっても一部のやる気ある人が準備して、他の人は手持ち無沙汰になる時間ってあるじゃないですか。そういう時間を回避するために使うことはあります。
valknee:それはみんなの生きやすさを向上させる取り組みですよ。実質全員集まる必要全然ないだろって時間ってありますよね。ちょっと違うけど、高校で体育の授業を始める前に準備体操とグラウンドを何周か走るみたいなルールがあって、やる気があるやつらは休み時間に先に済ませるんですよ。でも私としてはこれは授業の一環だろうという認識だからチャイムが鳴ってからチンタラやることにして。周りから睨まれたりしましたけど、「ふーん。無視」って感じで。
たむら:ボーダーラインを和らげる取り組みですね。
valknee:そうそう。活動家なんですよ。言い訳はどうしよう。良い感じにエモい雰囲気に持っていってうやむやにするとかどうすか。
――うーん……絶対に遅刻しちゃいけないシチュエーションは絶対に遅刻しないほうが良さそうですね。

【お題 ③】友達の結婚式に1時間遅刻。その理由は?
――次はプライベートだけど重要度がやや高い用事ですね。
valknee:これはそもそも遅刻しても案外大丈夫なパターンじゃないですか。例えばご祝儀を忘れちゃったとかは定番。小さいハンドバッグみたいなやつで行くから財布も忘れやすいし。あとさっきの「実質まだ集まらなくてもいい時間」が実は結構長いので言い訳しなくても大丈夫。
――言われてみれば結婚式って意外とゆるいかも。参加者も多いからさっきのお二人の理屈で言えば自分がその場にいる必然性がかなり低い。
たむら:シチュエーション的に周りから「遅れてんじゃんよ~!」みたいな感じでニヤニヤされながら会場に入ることになると思うので、言い訳はできるだけ変なほうがいいかも。なんかびしょびしょに濡れた状態で「ごめんごめん! 今って何時?」みたいな意味わからない感じで行けば多分大丈夫です。
――意味わからない笑いに回収させる手法。
valknee:ただ盛大な結婚式をやる人たちの執念というか気合いの入り方ってちょっと私には想像できないレベルだからな~。バレたら怒られそう。遅れてはいるけど「駆けつけた」感を出したいですよね。「ハアハア……間に合った!」とかやれば“友情”を醸し出せる(笑)。
たむら:それ最高ですね。大事な仕事が入ったけど“それでも来た”感。

【お題 ④】集合時間に「5分だけ遅れる!」という連絡から音沙汰なし。からの20分遅刻。その理由は?
――これ、個人的に一番腹立つかもですね。valkneeさん言い訳を考えるとしたらどうですか?
valknee:これは実際にあることなんですけど、「Googleマップの位置情報がバグって今自分がどこにいるのかわからなくなった」とか。新宿とか池袋とか人が密集してる場所で起きがち。「このあたり“氣”が悪いね。ちょっと怖いかも……」とか言っておけば説得力も増してGOOD!

たむら:実際「待ち合わせが難しい」はちょっとありますよね。さらに自分ではコントロールできない要素が2つ重なってしまったものとして「トイレの場所が見つからなくて」は有効。これでばっちり20分は稼げますね。
――これまで遅刻の言い訳を検討してきましたが、そもそも遅刻って悪いことなんですかね?
valknee:確かにさっき話に出た「生きやすい社会のためのゆとり」のために遅刻を許容するという考え方はある。
たむら:誰かが遅刻するとやる気がある人が損をしがちなのでかわいそうだなとは思いますかね。だからみんなが遅刻しないようにしたほうが社会にとってはいい。
valknee:社会を成り立たせるうえではね。
たむら:全員が悪びれなくなったらおそらく集まってなにかに取り組むってこと自体ができなくなっちゃうので「悪い」ですね。
valknee:うん。今回は一応「悪い」としましょうか!
――遅刻は悪いことだけど、だからこそ自分と相手に想像力を働かせた“言い訳”の工夫次第でお互いが嫌な思いをしないで済むことは多いかもしれません。そして連絡やコミュニケーションをサボらないことですね!
valknee:たむらさんが遅刻してきたときはやばい人が来たなと思いましたけど、言い訳もおもしろいし、ペースに飲まれた気がする。結局はコミュニケーション次第。
