職業の数だけ“つい目がいく”光景あり。
「クリエイティブさんぽ」は、クリエイターや職人、研究者など、さまざまな専門分野を持つ人が好きなエリアを散策し、独自の視点で気になった場所を紹介してもらう連載企画。読んだ後にちょっとだけ視野が広がるかもしれない、未知の仕事への理解が深まるかもしれない、そんなレポートをお楽しみあれ。
10回目となる今回さんぽしてくれたのは、スケーター・アーティストの熊谷一聖さん。

熊谷一聖
1996年、大阪府生まれ。10歳でスケートボードに出会い、現在は「adidas skateboarding」「pop trading company」などのブランドからスポンサードされながら国内外で活動。その傍ら、水彩画やスケートボードの廃材を用いた立体作品も製作している。
Instagram:@isseykumatani
もし滑るならこうする! 街の縁石や傾斜で妄想トリック
大阪を拠点に活動しているスケーター・アーティストの熊谷一聖です。映像作品や専門誌で自分のスケートや滑りを表現したり、スケボーの廃材を使ったアート作品を作ったりしています。
今回は中津駅周辺をさんぽしながらスケートスポットを探したいと思います。スポット選びにはその人のセンスが表れるので、全スケーターにとって重要な要素。普段行かないエリアを通れば無意識のうちにスポットを探してしまう。長年スケートしていれば誰しもがそうなるのです。
スケートスポットは人伝いで教えてもらうこともあれば、近年はGoogle Mapのストリートビューで探したり、他人のインスタから周りの写っている情報から特定したりもします。とはいえ、普段行かないエリアへ出向いて、自分の足で探した方が発見が多く、実際のスポット周囲の状況も知れるので、今でもその手段を選ぶことが多いです。
関西圏以外の人のために説明すると、中津駅は梅田駅のひと駅隣にあって、歩いてでもすぐに行けます。ただ、僕は住んでいるのが別のエリアというのもあり、あまり降りることのなかった駅でもあります。
近年は駅の周辺が再開発されたので、新しいスポットができているかもしれないと思いこの場所を選びました。あくまでも今回はスケーターが妄想しながらたださんぽしただけです。実際にスケボーはしてないです。では参ります。

Osaka Metroの中津駅から地上へ。近くにある大通り沿いの駐輪場を歩くと、早速スポット発見。写真のフェンス沿いにあるコンクリート製の縁石です。
だがこのままだと滑れない。スケートワックスを縁石に大量に塗り込んでスライドできるように育てる必要があったりします。路面も良くないので、そのままスルー。

昔に少しスケートした事があるマニーパッド(台)が花壇とスケートストッパーによりクローズ。残念。

大通りの裏道。「人気の少ない道の方がスポットがあるんだよな~」と思いながら歩いていると、小さなバンク(傾斜)が連続。さらにその先にスロープまで見えるじゃないか。遠くから見ただけで、お、いいスポットっぽい! いい映像が撮れそうな予感。さらに近づいてみる。

肝心のスロープはレール(パイプなど、ボードを滑らせるための棒)がバンクから近すぎるため、レールを飛び越えるオーバーなどの技は不可能。バンクが連続しているだけではいいスポットとは言えないということですね。残念。

高架下で気になったスポット。よくある少し傾斜掛かった壁はウォールライドと言う壁を走るトリックにうってつけ。壁から突出した部分もあるので、変化のあるウォールライドができるかも。

その壁の続きにあるトンネルの鉄骨。年季の入った壁にギラギラした蛍光オレンジがカッコいい。トンネル内でシンプルなトリックを決めるだけでも絵になりそうです。
駅から離れて、昔からの製造系の会社などが立ち並ぶエリアへ。ここまでくると再開発の雰囲気は徐々に減っていく。この雰囲気、スポットありそう。

古めの会社脇。写真左側にレッジ(高めの段差)。しかも黒い鉄の部分はワックスを塗って“育てる”必要もなく、車輪を接触させて滑るグラインドがしやすそう。レッジの先をグラインドして、奥のエントランス部分に乗って降りる、みたいな動きをイメージしました。

再び大通り沿いに出ると、マンション下に岡本太郎を意識していそうなオブジェ。すぐ側に完璧な大理石カーブ。直線ではなく曲がった形というのがかなりいい。スケーターにとって大理石の素材は大好物。しかしカーブ先にガラスがあったりと、リスキーなポイントも多め。形だけ言えば最高なスポットとして覚えておきます。

高架下の駐車場に生えていた2本のレール。年季の入った感じが渋い。ただ路面の状態が悪く、レール先のスペースもほぼないので何かトライするのは無理そうです。残念。

雰囲気も渋めで撮り甲斐がありそうなカーブ(縁石)を発見。金具がアングル(角度)の役割を果たすので滑りやすそうだけど、腹ぐらいまであるので高すぎる。
ブラジルのスケーターのティアゴ・レモスなら届くのかな、とか思いながら歩いていると、いつの間にか梅田駅近くに。これでさんぽは終了です。
あまり訪れることがなかった中津エリア。実際に撮影するまではいかないような惜しいスポットが多かったものの、想像以上にスポットが多かったのが発見でした。
ただ、これを見て実際に滑りに行こうというスケーターがいたら、スケボーは常にリスクと隣り合わせ。完全に自己責任だと思ってください。スポットだけを見るのではなく周りの状況を把握するのもストリートスケートにとって重要なのです。
スケーターではない方も、今回のさんぽをきっかけに、スケーター視点で街を見てみるのも面白いかもしれません。お付き合いありがとうございました。








