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アート

デジタル疲れに、触れる解毒剤

TRIPPYHOUSINGが陶芸に見出す「無心」の探求

author: Beyond magazine 編集部date: 2025/07/27

デジタルが生活の中心となり、スマートフォンが体の一部となった現代。AIの進化がさらなる情報との向き合い方を迫るいま、私たちは本能的に「デジタルデトックス」を求めている。脳をリセットできる趣味がじわじわとブームになっているのは、まさにこの心の渇きを反映しているからなのかもしれない。
 
「スマホを触るのがもはや癖になっている」。そんな現代人の“あるある”に共感するTRIPPYHOUSINGの3人に、今回、約1時間の“脱・スマホ体験”をしてもらうことにした。
 
彼らが訪れたのは四谷にある陶芸教室「陶房九炉土」。道具を使わず、手で形を作る「手びねり」という陶芸の手法にチャレンジする。アトリエに着くなり、まずは問答無用でスマートフォンをポケットへ。ひたすら土と会話する陶芸体験を通して、3人は何を思うのか?デジタルに浸る彼らのオフライン体験が、静かに幕をあける。

TRIPPYHOUSING

それぞれがソロミュージシャンとして活動しているSkaai、yuya saito (yonawo)、Alex Stevensによって構成された音楽ユニット。Skaaiはヒップホップアーティスト、yuya saitoはバンドyonawoのギタリスト兼プロデューサー、そしてAlex Stevensはシンガーソングライターとしても活動しており、2024年2月から3人が共同生活を始めたことを契機に楽曲制作を開始。ヒップホップやソウル、ファンクやロックなど多様な音楽ジャンルを背景に、衝動的でアンバランスだが気持ちの良い音像を追求しながら、なにより生活を共にする3人だからこそ語ることのできる物語と世界観を提示している。

Instagram:@trippy_housing, @skaai_thepro, @juriank, @alexgwstevens
X:@trippy_housing
YouTube:@TRIPPYHOUSING

何を作る?スマホに頼らず、イマジネーションを広げるべし

先生「今日は何を作りますか? 完成形を最初にイメージしないと、作っていてもなかなか形が定まらないんです」

クリエイティブの現場と同じく陶芸も「コンセプト」が大切。何を作るのか、それはどんな形なのか。まずは、理想の作品像を自由にイメージしていく作業からスタート。愛煙家トリオは悩んだ挙句、全員が「灰皿」を作ることに。

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yuya saito(以下、yuya)「まん丸で大きな灰皿を作ることにします」

Skaai「バームクーヘンみたいな半円にしようと思います」

Alex Stevens(以下、Alex)「個性的なシェイプの灰皿を作りたいな」

自分たちが毎日使うものだからこそ、こだわりもひとしお。完成系に想いを馳せて、まずは土を丸めて行く。

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Skaai「お~、何とも言えない感触で、気持ちいい」

yuya「最初は硬かったけど、だんだん柔らかくなってきた」

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こねた土をろくろに乗せて広げたら、ベースとなる形を整える。そして、細長く伸ばした土をそのベースに載せ、灰皿の縁を作っていく...のだが、これがなかなかに難しい様子。

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Alex「めちゃくちゃ難しい...。やっぱ先生はすごいですね」

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アナログ作業で見出す、デジタルとの距離感

3人それぞれがひたすら土を伸ばし、形を整え、イメージを具現化する作業に打ち込む。

Skaai「今、めちゃくちゃ楽しいです。ここを伸ばしたらいいのかなとか、もっと綺麗に整えたいなとか。目の前の土のことだけを考えて、あとはただただ無心です。なんか考えてる?」

yuya「元々悩みがないことが悩みだからな(笑)。地元の福岡に住んでいた頃、何回か手びねりを習ったことがあって。今日は久しぶりに土に触っていますが、やっぱり難しいですね」

3人が黙々と土と向き合う中、共同生活や制作活動について尋ねてみた。(作業のお邪魔をしちゃってすみません!)

ー先生から3人ともとても上手!とお褒めの言葉が出ていましたが、3人の中でアートに一番明るいのはどなたですか?

Alex「家のインテリアとかを選ぶのはyuyaだよね」 

Skaai「模様替えとかも好きだもんね」 

yuya「でも選ぶだけだからね。作れはしない(笑)」

ー楽曲制作は家で? 

yuya「家でやってますね。でも3人で一緒にやることは少ないよね。それぞれの部屋が作業できる環境が整ってるから、みんなこもって作っていますね」

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ー共同生活を送る中での一番の思い出はなんですか?

Alex「去年、3人で川に行ったよね」

 yuya「しかも台風の次の日でめちゃくちゃ川の流れが早い時で、危なかった(笑)。思い出ですね。そもそもライブで遠征が多いので、それが旅行みたいな感覚で、休みの日に3人で出かけるみたいなことが少ないかも。今月末も(取材時は6月)3人で奄美にライブに行くんです」 

Skaai「ライブは1日しかいないのに5日間くらいいますからね、僕ら(笑)。初めて3人で旅行みたいなことするよね」 

Alex「楽しみですね」

今回のテーマでもある「スマホとの向き合い方」についても聞いてみたところ、全員が”中毒かもしれない”という自覚があった。

Skaai「自分でも嫌だな~と思いながら触っちゃってますね」

 yuya「YouTube中毒すぎて、嫌で、何回もアプリを消してます。Xなんて俺もう6年くらいSafariから入ってやってます。アプリ入れたら終わるから(笑)」

Skaai「何かを調べたり、作ったり。目的を持ってデジタルデバイスを触るのはいいと思うんですよ。目的がないからダラダラ見ちゃうんですよね。暇を操られている感じになるのであれば、やめた方がいいなと思います」

Alex「こうやって、1時間でもいいからスマホを触らない時間って大切ですよね。本当にそう思います」

”無心”が導く、オフラインで見つけた達成感

丁寧に土を固めていき、形が整ってきたところで、タバコを置く部分を作ったり、真ん中に穴を開けたりと、それぞれのこだわりを散りばめていく。

yuya「結構満足かも、完成です。細かいところまで自分の好みで作れるっていいですよね。楽しいな。色は緑にしようと思います」 

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Alex「僕も完成です。自分のイメージを完璧に具現化させるのは難しかった...。でも自分のオリジナリティが入れられたので大満足です」

 yuya「もっとうまくなりたいな。練習します。気づいたら家に灰皿がどんどん増えていくみたいな」 

Skaai「灰皿しか作らないのね」

 yuya「灰皿作家としてやっていきます(笑)」

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どんなことを考えて作っていたのか尋ねると、3人からは共通して「無心」という言葉が返ってきた。

yuya「とにかく無心でした」

Alex「ツルツルにしたいの一心で、ほんと無心」

Skaai「目の前にあるといつまでも触っていたくなっちゃうんですよね。いや~楽しかったな。無心を楽しみました」

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最後に、改めて今日の感想を尋ねてみた。

Skaai「僕の作品名は『肺皿』です。この肺に繋がっている気管支(タバコ置き)が1番のこだわり」

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Alex「作品名は『シェイプレス』で。めちゃくちゃ集中できて、気持ちいいな~と思いました。サーフィンとかも好きなんですけど、その場、その時間を集中して楽しむ感じ。僕はその入り込む感じが好きで、今日も楽しかったです。角を綺麗に整えたかったんですけど...なんか違うなの繰り返しで、自分自身との戦いでした(笑)」

yuya「先生の言葉をお借りして『火山』にします。上の部分をフラットに整えるのに、時間がかかりましたね。久しぶりに陶芸をやって、また定期的に挑戦したいなと思いました。やっぱり土に触っていると落ち着きますよね。音楽は実体がないものだけど、陶芸はちゃんと実体として残るから、より“作った”っていう感覚がある」

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Skaai「達成感があるよね。少し力を加えるだけで変化が生じるから、繊細だけど自由。表裏一体でいいですよね。灰皿とかコップとかって買うものでしかなかったから、0から自分で作っていくって、面白いし沼だなと思います。デジタルデトックスもそうですけど、何かに向き合って、ひたすらに作る作業が純粋に楽しかった。頭のコリが取れた感じ。いい気分転換になりました」

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ちなみに、この日3人が作った灰皿の焼き上がりまでにはもう少し時間がかかるので、完成系は乞うご期待!

Photo:Cho Ongo
Edit&Text:Mizuki Kanno

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