細さわずか38mm、重さは驚異の1.8kg――ダイソンがまたしても新たなイノベーションを見せてくれた。2025年5月22日から発売される新モデル「Dyson PencilVac」は、常識を覆すほど細身で軽量なコードレス掃除機。その革新的な特徴と、開発に込められたダイソンの想いを家電スペシャリスト・滝田勝紀が紐解く。
なぜこんなに細くした?ダイソン流イノベーションの裏側
ダイソンが発表した「Dyson PencilVac(ダイソン ペンシルバック)」は、コードレス掃除機史上最細となる直径38mmの極細ボディが最大の特徴だ。家電業界で20年以上取材を重ね、ジェームズ・ダイソン氏本人へのインタビュー経験も豊富な筆者だが、今回のモデルほど驚かされた製品は久しぶりだ。

ジェームズ・ダイソン
ダイソン創業者 / チーフエンジニア。1947年イギリス生まれ。 美術専門学校セントラル・セント・マーチンズを経て、英王立芸術大学院を卒業。紙パック不要のサイクロン式掃除機の発明を成功させ、1987年に日本で「G-Force」を発売。その後1993年にイギリスでダイソン社を創立した。2002年にジェームズ ダイソン財団を設立、次世代のエンジニアのアイデアを奨励するジェームズ ダイソン アワードを毎年開催、また2017年にダイソン大学を開校するなど、未来のモノ作りを担う若者の支援や育成にも力を入れている。
ダイソン氏自身、以前弊誌のインタビューで「良い製品は必ずしも大きくなくても良いのだと気付けたのは、来日がきっかけ」と答えていたが、そんな彼の哲学に基づき開発されたPencilVacは、コンパクトさだけでなく、強力な吸引力を維持するための革新的技術を搭載している。

Dyson PencilVac Fluffycones(ダイソンペンシルバックフラフィコーンズ)
• 価格:ダイソン公式オンラインストア参考価格 税込89,800円
• サイズ:直径38mm×長さ1150mm
• 重量:約1.8kg(本体・バッテリー・クリーナーヘッド装着時)
• モーター:Dyson Hyperdymium™140k モーター(直径28mm、毎分最大140,000回転)
• 連続運転時間:約40分(エコモード)、約10分(強モード)
• 充電時間:約3.5時間(フル充電)
• 集じん容量:0.2L
• バッテリー:リチウムイオンバッテリー(着脱式)
超小型モーターが生み出す驚異の吸引力
ダイソン掃除機の心臓部とも言えるモーターには、直径28mmという超小型サイズながら毎分14万回転という高速回転を実現した「Dyson Hyperdymium™140k モーター」が採用された。500円硬貨とほぼ同じサイズのこのモーターは、ミクロ単位の精度で設計されたパーツによって、従来モデルよりも34%高い出力密度を実現。細くても吸引力が弱まることは一切ない。
ジェームズ・ダイソン氏は発表会で「日本市場は高性能な小型製品が最も求められる場所だ」と語ったが、まさに日本人が好む「小さくても高性能」という理想を体現したモデルと言える。
新クリーナーヘッド「Fluffycones」の画期的な仕組み
さらにユニークなのは新開発のクリーナーヘッド「Fluffycones」。円錐形ブラシを4本搭載し、それらが互いに逆回転することで、掃除機ヘッドを自由自在に動かせる。また、ブラシに絡まった髪の毛は自動的に取り除かれ、ユーザーは手入れの手間から解放される。
緑色LEDライトが床の微細なゴミを鮮明に映し出し、掃除漏れも防いでくれる。特に一人暮らしの若者や忙しいユース世代には、この手軽さとスマートさが支持されるはずだ。



インテリアを邪魔しないデザイン
デザイン面でもダイソンらしさが光る。スリムでスタイリッシュな外観は、家具の隙間やソファ下などにも無理なく入る。インテリアに自然に馴染むよう設計されているので、掃除機を目立つところに置いても違和感がない。これまで掃除機の置き場所に困っていた人たちにとって、非常に嬉しいポイントだろう。
コードレス掃除機市場をリードするダイソンの挑戦
日本のコードレススティック掃除機市場では、2025年現在もダイソンが約25%程度のシェアを占めているが、国内外のライバル製品も急速に増えている。そんな中、ダイソンは新たな技術革新を武器に、さらなる市場拡大を狙う。特にユース世代を中心に、ライフスタイルにフィットする製品として、このDyson PencilVacは注目を集めることが予想される。
ジェームズ・ダイソン氏の「常識を疑い、改善を続ける」という精神が詰まったこのモデルは、間違いなく新たな掃除機のスタンダードを作り上げることになるだろう。