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「壊れやすい」「燃費が悪い」なんてウソ

僕が「旧いアメ車」を25年以上乗り続ける理由

author: 茨木一綺date: 2021/10/16

前回書きなぐった僕の半生の中で、色んなクルマと出会い別れてきたことをお伝えした。別れ方はほぼ僕の心移り、悪く言えば浮気だったわけだけど、それぞれのクルマには自分で手を入れて愛情は掛けてきた。乗り継いだクルマはおおよそ20台だ。

20台乗り継いで、辿り着いた「シェビーバン」

ワーゲンType-1、ミニクーパー1300、メルセデスW123ワゴン、アメ車の四駆、フルサイズトラックなど、様々な形状のクルマに乗ってきたけど、ここ15年くらいは子供も大きくなってきたのと趣味のアウトドアの積載、車旅も考えてフルサイズバンに行きついた。キャンプ道具やアウトドア用品を積んで毎週のように出かけるようになっていた15~6年前には、移動中が楽なことと、荷物キャパを考えるとフルサイズバン以外選択肢として残らなかったっていうのが正直な理由だと思う。

そこから2002年製シボレーエクスプレス、1992年製GMC ラリーワゴンを経て、今の愛車は2年ちょっと前に乗り換えた1979年製GMC Rarry STX。アメ車3大フルサイズバンのひとつ、通称「シェビーバン」の新型から旧型へと乗り換えていった感じだ。

GMC Rarry STXは40年前のクルマの現状販売だったから、お願いしてたオイル交換と可動部の増し締め以外の整備はなく、外装内装はそこそこだったけど、エンジンの調子はゴミクソ、エアコンは動かない、足回りはガタガタ、ブレーキに至っては片側だけしか効かず、ブレーキ踏むとハンドルを取られるという危険な状態……。

さすがにこれじゃ帰れないから、車屋で場所を借りてブレーキホースの応急処置で片効きだけはどうにか直して、ハンドルはフラフラしてるしガタピシ言いながらだけど恐る恐る帰った。「結構なポンコツくん買っちゃったなぁ~、イチからだねー」って夫婦で話しながら帰ったのが懐かしいよ。

「旧いアメ車=壊れやすい」は、バブル時代の話

アメ車の旧車に乗っててホントによく言われるのが「よく壊れるんじゃない?」「ガソリン垂れ流しながら走ってる感じでしょ?」という2つの言葉。残念ながらうちの愛車はどちらにも当てはまらない。確かに、機械だから壊れることはある。でも「遠出が怖くないですか?」とか「壊れても部品高いし手に入りにくそう」とか、バブルの頃の悪い印象が現在まで引きずられてる感はある。

悪い噂ほど早く広く広がるもので、バブル当時は外車がホントによく売れて、その中でアメ車も人気が高かった。マッスルカーって言われるスポーツカー的なエンジンが大きくてよく走る車は今でも人気だが、馬力が高い分燃費も悪いのはしょうがない。そういうアメ車をしっかり整備して仕上げて売ってたショップも多かったものの、一部の良くない業者がいた。

タクシー上がりや相当乗りつぶされた車をアメリカ本土でかなり安く買って、外装を塗装して内装を小ぎれいにし、エンジンルームを洗ってメーターを変え、走行距離をごまかしてから日本に輸入。そんな車を高い値段で売りっ放なしてたのも事実。当然エンジンや足回りは本質的に直してない乗りつぶされた車のままなんだからそりゃ壊れるし、整備されてなけりゃどんな車でも燃費が激悪なのは当然のこと。

そういうのを経験したり聞いたりしてきた人もいっぱいいるから、アメ車に良くないイメージを抱いている人は多い。でもね、マッスルカーみたいに特別速かったり、馬力を出してるわけじゃない車は、ちゃんとツボを押さえて整備すれば街中で5~7km/Lくらいは走るようになるんですよ、実は。

ただ、いくら整備してても特に旧いクルマは気分屋だから、あまり乗らなかったり整備をほったらかしにしてるとすぐに機嫌を損ねちゃう。あとこれはアメ車や旧車に限ったことじゃないけど、当分乗らないとガソリンタンクや配管、エンジン内の燃料も腐るし、タンク内が錆びちゃうことも。じゃあって「乗ってはないけど、週イチくらいでエンジンだけ掛けてるよ」っていうのは、実は乗らないだけよりもっと悪い。軽く温めた位だとエンジン内部に水蒸気が付いて、それが乾かないうちにエンジン切っちゃうからエンジン内部に錆が出ちゃうこともある。

だから僕はどの車に乗っても日常でもなるべく乗ってあげるし、時々カーオーディオを切って車の声を聴いたり、車内車外の匂いを気にしながらドライブするようにしてる。時々「こんな音じゃなかったよな?」とか「いつもと違う匂いはどこから?」など「あれ?」と思える軽微な音や匂いの変化にも気づいてあげられるようになる。その“会話”のおかげでずいぶん助けたし助けられたかな。日常使いしてればしっかりメンテナンスしておこうと思うし、十分に対話も出来るから大体でもどの辺が悪いのかすぐに分かってあげられるし、お互い気分よく良いパートナーとしてやっていけてるんだと思う。

アメ車選びは補修部品の手に入れやすさが大切

旧車を整備やメンテナンスするうえで避けて通れないのが主要補修部品の供給期限事情だ。在庫管理や金型の問題から、発売後ある程度の期間を過ぎると部品の追加生産は行わなくなり、在庫がなくなり次第廃盤となっていく。

主要補修部品のおおよその供給期間は自動車メーカーで10年前後というのが一般的。それ以降も大切に使っていくためにメンテナンスや修理をしようとした時、もしお目当ての部品が廃盤で入手不可の場合は、次のいずれかしか方法はない。

①中古部品を探す②世界中の流通在庫から新品を見つける③ネットオークションなどで個人所有の部品放出を探す④汎用品や他部品から流用できるものを探す⑤ワンオフで製作⑥オーナーズクラブなどで同じ部品を探している人を募ってある程度の個数で製造可能な工場にオーダーメイドしてもらう。

部品が見つからない場合、諦めて買い替えを選択するオーナーも多数出てくる。それで経済が回ってるという意見もあるが、僕みたいにビンテージ好きや一度買ったものはずっと大事に付き合いたいという考えの人はどこかのタイミングで頭を悩ませるシーンが必ずと言っていいほど出てくる。そんな時、クルマの場合はアフターパーツメーカーなる純正部品相応のパーツを製造販売しているメーカーやショップが存在する。それらは自動車メーカーに純正部品をOEM供給していたり、主にレース用部品を製造してたりするところもあれば、個人商店だがそこが得意とする特定車種用に自社オリジナルで部品を作っているところもある。

GMはアフターパーツが豊富にそろう

色んな国のクルマを乗り継いできて、ここ25年くらいアメリカGM(ジェネラルモータース)社製ばかり好んで乗り継いでる理由の一つはまさに上記の理由が大きい。世界的に見てもGM社製車種用のアフターマーケットパーツの流通が多いことには正直驚かされる。外車の部品を頼むと入荷までに半年掛かったとか、まったく見つからないとかよく聞くけど、GM車用パーツの入荷日数は日本国内の専門パーツショップ(在庫部品多数)でほぼ翌日、アメリカに注文だと、送料が高くても良ければ最短3日、通常でも1週間から10日ほどで手元に届くのはうれしい。

アメリカ国内には純正部品、社外部品とも扱ってる企業が本当に多く、エンジン専門、ミッション専門、足回り専門、マフラー専門のように、クルマ文化社会ならではの専門店があふれてるから、パーツのバリエーションも豊富で選択肢が多いのもありがたい。僕が乗ってるシェビーバンはボディパーツに関しては新品だと簡単には揃わない。ただ、その気になれば国内外オークションでだいたい手に入るし、現地でそんな中古部品を探して解体屋を回ってWebショップで販売してる個人商店もあるから今のところ困りはてた事は無いかな。

もし海外通販は分からないし怖いし、パーツもどれを注文していいのか分からないって人は、国内にある自分のクルマのカテゴリーに合った専門店に連絡すればパーツの輸入から取り付けまでお願いできるところも多くあるので安心だ。

僕は旧い車に乗っても当然日常のアシとしても使うし、出張や帰省でかなりの長距離も平気で走っちゃう。つい先日も愛車に乗って仕事で四国や九州まで3000kmほど走ってきた。そんな使い方が前提だから、日常からのメンテナンスは欠かせないし、怪しいところは壊れる前に気付いてあげて惜しまず予防交換もする。悪い部品だけじゃなく、もしそうなった原因として怪しい所が他にもあるならそこも交換しちゃう。部品もしっかり吟味して少しでも良さげな部品をケチらずに奢る。

愛車なら大事にするのは当たり前だけど、特に旧車に乗るということはクルマとの距離をもう一歩踏み込んで親身になって気にかけて付き合ってあげるってことだと思う。お店任せじゃなく、乗り手も少しずつでも勉強して詳しくなって、クルマに歩み寄ってあげる。そんな付き合い方が大切なのかもしれない。

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クリエーター・クリエイティブディレクター
茨木一綺

CielBleu. le petit atelier主宰。ウッドクラフトをはじめアウトドアギアからカーカスタムまで幅広く製作しながら、アートディレクター、クリエイティブディレクターとしても多方面で活躍。アウトドアイベントのオーガナイズ、プロデュースも数多く手掛ける。2021年2月にソニー・ミュージックから発売されたdaisuke katayamaのアルバム「THE MIDNIGHT BONFIRES」ではクリエイティブディレクターとして参加。
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