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洗濯と乾燥を見直せば、ソーシャルグッドにつながる

エレクトロラックスが新機能で挑む洗濯習慣のバイアス

author: 田中 謙太朗date: 2022/09/27

北欧スウェーデンに拠点を置くヨーロッパ最大の家電メーカー「Electrolux(エレクトロラックス)」。1912年に世界初の家庭用電気掃除機「LUX1」、2001年に世界初の家庭用ロボット掃除機「トリロバイト」を発売するなど、革新的な試みへの積極的な姿勢によって、世界での家電業界における地位を確かなものにしている。そんな伝統的なテクノロジー企業である同社の次なる挑戦は、洗濯習慣の変革だ。

エレクトロラックスが展開するブランドの中で、最も長い歴史を持つのがドイツ発のブランド「AEG」である。「Allgemeine Elektricitäts-Gesellschaft=総合電機会社」を意味する直球すぎるネーミングが実にドイツ的(例えば「BMW」は「バイエルン自動車工場」の意)だなと思うと同時に、その実直さも感じられるだろう。

1883年に設立されたAEGは、当時の電力会社としての役割を担いつつ公共交通機関の電動化を実行するなど、中枢事業である電力事業を担っていた。電力事業を一手に引き受ける巨大企業だったAEGは、大戦によるドイツの分割などによって1970年代に財政難に陥り、結果的に1995年に企業としての歴史に幕を閉じることになった。

しかし、AEGの家電部門を買収したエレクトロラックスの家電製品をはじめとして、現在でも多くの電力関連事業でその名前を目にすることができる。

新機能が彩る新たな洗濯習慣

欧州最大の家電の見本市「IFA 2022」にて、エレクトロラックスはAEGブランドとして展開する製品の展示を行った。その中でも初のお披露目となる新機能や、それらを備えた洗濯機シリーズを紹介しよう。

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IFA 2022にて展示された洗濯機シリーズ

今回発表された主な機能は、ろ過した水を用いて洗濯する「ソフト・ウォーター機能」、効率的な洗浄によって30℃の低温水による洗浄を可能にする「パワー・クリーン・プログラム機能」、そして衣服の厚みによって乾燥を調節する「3Dスキャン機能」だ。

3Dスキャン機能を用いた乾燥の比較。左が通常の空気乾燥、右が3Dスキャン機能を用いた仕上がり

エントリーモデルである「6000S ProSense」から、「7000S ProSteam」、「8000S PowerCare」、そしてハイエンドモデルの「9000S AbsoluteCare」の4つのグレードがラインナップされている。グレードによって追加される機能が異なっており、ユーザーに合った機能と価格帯を選ぶことができる。

例えば、「7000S ProSteam」以上のグレードに搭載されているスチーム機能を使えば、洗濯するよりも手軽に衣服の臭いやシワを除去できる。スチームにかかる時間は洗濯・乾燥のサイクルと比較して非常に短い25分間。なおかつ96%の節水を実現するなど、目的に応じた操作をすることで、より効率的な洗濯習慣が構築ができるというわけだ。

また、同社の製品は専用のアプリケーションである「AEGケア・アプリ」によって洗濯プログラムの設定が可能だ。“どんな衣類をどのように洗濯するか”という個人の洗濯習慣の分析によって、効果的な洗濯方式の提案とそのためのヒントが提供されることも時代の要求に沿ったシステムといえるだろう。

低水温での効率的な洗濯を実現するパワー・クリーン・プログラム機能の実装に関連して、エレクトロラックスは1万2000人以上の欧州在住者を対象とした史上最大の調査プログラムである“The Truth About Laundry”(「洗濯機の真実」の意)を行なっている。その結果、ある事実が明らかになった。

全体の63%が40℃以上の高温で洗濯をすることを好んでおり、その中のおおよそ半分にあたる47%が高温で洗濯をする理由として「洗濯機が清潔か不安だから」という理由を掲げているのだ。つまり、欧州の人々の間では温水で洗濯をすることは共通認識となっており、これは日本に住む我々にとってかなり意外な事実だろう。

しかし、実際にはあまり頻繁に高温水で洗ってしまうと、繊維の傷つきや色あせなどによって結果的に衣類の寿命を削ることになる。水温30℃で汚れを落とせる同社の技術は、ヨーロッパにおけるユーザーの常識を超えて衣類を持続的に愛用することにも繋がるのだ。

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「洗濯・乾燥を考え直そう」という言葉は、洗濯は高温水でやらなければならないと考えるユーザーに対する呼びかけだろうか

CO2排出量の85%を占める製品使用の段階にアプローチする方法

同社のプレスカンファレンスには、エレクトロラックス欧州CEOのクリス・ブラーム氏、エレクトロラックスドイツ・オーストリアにおいてゼネラル・マネージャーを務めるマイケル・ガイスラー氏、そしてエレクトロラックスにて欧州のサスティナビリティ担当副社長を務めるサラ・シェーファー氏が出席し、製品の注目ポイントと同社のサスティナビリティ戦略についてコメントした。

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左から、シェーファー氏、ガイスラー氏、ブラーム氏。右に映るのはモデレーターのマルコ・コッホベック氏

プレゼンテーションの中で、シェーファー氏は次のように指摘している。

「ライフ・サイクル・アセスメントに基づいて分析をすると、CO2排出量の最大の発生源は使用段階にあります。具体的には世界全体の85%のCO2量が製品の使用段階に排出されるものです」

CO2排出量の85%を占める製品利用の段階へのアプローチについて、製品性能からの働きかけだけではなく、利用者の習慣を変えていくことも必須条件と言っても過言ではない。しかし、自分ではない何かを変えることは往々にして骨の折れる話だ。

新たなテクノロジーを導入することでその地位を確保してきたテック企業として、同社はどのようにその課題に取り組むのか。私の疑問に対して、CEOのブラーム氏は次のように答えた。

「まずは、私たちの使命は“衣服ができる限り長く、新しく見えること”です。それをユーザーに対して伝える努力をしなければなりません。そのために、データとして見せることで、よりよい選択肢としてユーザーに対して提案することが重要だと考えています。水温、洗濯をする時間、洗剤の量など、データで示すことで最良の選択肢をユーザーに対して提示しなければなりません。

たしかに私たちは、高温の水で洗うべきではないと思ってはいますが、ただ“思うだけ”です。カスタマーの皆様に対して強制するのではなく、より良い案として提案できる機能をつけた上で、データを見せることでカスタマーの皆様がその中からより良いものを選び取っていくというプロセスが重要だと考えています。

カスタマーにも我々にも、そしてこの星に対しても最適な選択肢を提示できるようにすることが何よりも重要なのです」

そして、ガイスラー氏は次のように付け加えた。

「そのひとつの例として、AEGケア・アプリの機能のひとつである『スマート・アドバイザー』によるプログラムのアップデートがあります。例えば、低温水によって軽い素材の衣服を洗っていたら、普通の洗濯よりも良いチョイスとしてスチーム機能の利用を提案します。

OK、と押せばプログラムはアップデートされますし、却下すれば変わりません。製品からはちょっとしたリマインダーが流れながら変更が可能な状態は維持しますが、ユーザーが望まない限りはプログラムの変更などは強制しません」

人類の変化が技術とともにあったことは間違いない。そして、これからも技術の進歩によって人類の生活は予測し得ないライフスタイルへと変わっていくだろう。

企業としての長い歴史を持ち、これまでさまざまな社会の変革を乗り越え続けてきた同社だからこそ、テクノロジーによってメーカーとユーザーを結びつけ、社会の変容に対して高い解像度を有することができるのだ。

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ライター
田中 謙太朗

2001年東京生まれ。早稲田大学在学中。共同通信社主催の学生記者プログラムに参加したことをきっかけに執筆を開始。その後、パナソニックのイベントへの登壇など、記者としての活動と並行して、英自動車雑誌『Octane』の日本版にて翻訳に携わる。主専攻である土木工学に関連したまちづくりやモビリティに加えて、副専攻に関係するサスティナビリティに関する話題など、これからの時代を動かすトピックにアンテナを張る。
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