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CES2024でも異彩を放つふたつのテクノロジー

生活密着型の「AIロボット」と「透明TV」が未来の暮らしを変える?

author: 山根 康宏date: 2024/03/07

アメリカ・ラスベガスで毎年1月上旬に開催される「CES」は世界最大のテクノロジーイベントだ。日本を含む世界中から最新IT技術を駆使した製品やサービスが展示された。その中でも注目されたのは「AI」。今の生活をより楽しく、そして豊かにしてくれる「生活密着型」のAI製品として、AIロボットが登場した。さらにはTVの概念を変える「透明TV」の実用化が始まった。

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「AIロボット」が毎日の生活スタイルを一変させる

今やテクノロジー業界で最もホットなトピックが「AI」だ。1年前までは「メタバース」という言葉が話題になっていたが、VRグラスをつけて体験する仮想空間でコミュニケーションを図るのはまだまだ現実的ではない。それに対してAIは、着々と自分たちの生活を便利なものにしている。たとえば天気に応じて室温を調節してくれるエアコンのコントロールや、映える写真を写せるスマホカメラの画質調整など、AIは日常生活の一部にはいりこんでいるのだ。

そのAIがより進化したら、生活はどのように変わるのだろうか。CESで家電メーカーが見せた答えのひとつが「AIロボット」だ。

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LGの自走型AIロボット「Q9」

ロボットと言ってもすぐに頭に浮かぶ人間の姿をした機械ではない。LGが発表した「Q9」は2つの足の先にタイヤを内蔵し、顔のような表情を表示できるディスプレイを搭載した玩具のような形状だ。一方、サムスンの「Ballie」はボーリングの玉のような球形で、もはやロボットとは思えない外観をしている。しかしどちらも音声認識機能を内蔵し、ユーザーの言葉を理解して室内を走り回ってくれる。またスマートフォンで操作できるスマート家電とも連携しており、自動で家電のコントロールも行ってくれるのだ。

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サムスンのAIロボット「Ballie」はボーリングの玉のような形をしている

自宅にアマゾンやグーグルのAIスピーカーを置いている人も多いだろう。「OKグーグル、今日の天気を教えて」「アレクサ、K-POPの音楽を流して」のように、音声で指示すればスピーカーが応答したり、TVをつけて動画を流してくれる。これらはAIスピーカーと呼ばれており、AI機能の一つとしてユーザーの声と指示を解析し、それに対応した動作を行ってくれる。

AIロボットもAIスピーカーとよく似た機能を持っている。だが最大の違いは、AIロボットは室内を自由に動き回ってくれることだ。つまりAIスピーカーが手元にない場合でも、AIロボットは自分のそばまで来て指示を受けてくれるのである。AIロボットはカメラも内蔵しており、誰が話しかけたかを認識する機能も持っている。「面白い映画を見せて」と伝えると、それを指示した人を認識して、その人が最も好む映画を自動検索してくれることもAIがやってくれる。

実際にAIロボットがある生活は、どのようなものなのか。サムスンのBallieのデモを例に見てみよう。朝、目が覚めたらBallieに「おはよう」と声を掛けると、Ballieは電動カーテンに指示を出してカーテンを開けてくれる。続けてコーヒーメーカーのスイッチを遠隔でいれて、自動的にコーヒーを入れてくれるのだ。ベッドから起きだして洗面台に向かえば、Ballieが後からついてきてくれる。「今日の予定は何があったかな」と聞けば、Ballieに内蔵されたプロジェクターが壁にその日の予定を投影してくれる。電話がかかってきても、スマートフォンを手に取る必要はない。Ballieが近づいてきて、壁に通話画面を投影してくれるのだ。

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電話がかかってくると内蔵プロジェクターで壁に投影してくれる

このようにBallieはプロジェクターを内蔵しているので、壁や天井をスマートフォンに変わる大画面として使うことができるのだ。さてリビングルームでゆっくりコーヒーを飲んでいると、Ballieが「今日は電車が遅れているから、早めに出たほうがいいですよ」とアドバイスしてくれる。その日は通常の出社日なので、朝の鉄道運行状況を確認して、問題があれば先に指示してくれる。これはAIならではの機能だろう。

家を出かけてから学校や会社に行っている間、AIロボットは何をしてくれるのだろうか?今度はLGの「Q9」の機能を見てみよう。自宅で犬や猫などペットを飼っている場合、Q9はペットの動きを内蔵カメラで監視してくれる。外出先から自宅の「Q9」を通して、ペットが今何をしているのかをライブ中継で見ることができるのだ。ペットが別の部屋に移動したときは、ペットの後を追いかけて移動するので、どこにいても監視が可能だ。ペットが退屈そうなときは、「Q9」が動き回ってペットの遊び相手までしてくれる。

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昼間は室内をパトロール

さて日中は部屋の温度や湿度が変わることもあるだろう。たとえば部屋の温度が上がってきた場合、エアコンのスイッチを自動的に入れてくれる。また夕方になればカーテンを自動で閉めることもできるのだ。室内の家電がすべてスマート家電ならスマートフォンから状態を確認したり操作できるが、AIロボットがあれば操作も自動で行ってくれるのである。

帰宅する時間を伝えれば、自宅のドアを開ければ「Q9」がにこやかな笑顔の表情をディスプレイに映し出して「おかえりなさい」と出迎えてくれる。Ballieならプロジェクターが「おかえりなさい」と文字や映像で出迎えてくれる。もちろんその時間に浴室のお風呂はちょうどいい湯加減に沸いている。着替えてシャワーを済ませてリビングルームに向かえば、自動的にTVでは自分の好みの映画の放映が始まる。

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AIロボットが出迎えてくれる生活が始まる

このような生活はSF映画の中に出てくるワンシーンのようだが、現在の技術があればすでに実現可能になっているのである。もちろん今すぐには実現しないが、数年もすれば当たり前になっているだろう。AIロボットは実用的なデジタルアシスタントであり、家事の時間を開放してくれる。余った時間は余暇や勉強に使うこともできる。いずれはスマートウォッチと連動して、ユーザーの健康状態も自動的に認識するだろうから「映画が見たい」というだけで、その時の気分に応じた映画を自動的に選んで投影してくれるだろう。

LGとサムスンのAIロボットの発売時期は未定だが、何年も先の話ではなく、数年後には家電量販店で誰もが買える製品として販売されているはずだ。「AIロボット無しの生活なんて考えられない」そんな日がまもなくやってこようとしているのだ。

家の壁や窓がスマホになる?透明TVが変えるこれからの生活

AIロボットの実用化よりも先に、今年中に誰でも買える新しい製品がCESでは展示されていた。LGの透明TV「Signature OLED T」だ。実はお店のショーケースでも一部で使われ始めている透明TVだが、家庭用の一般製品として発売されるのはLGの製品が世界初となる。

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LGの透明TV

自宅にTVを置くと大きな「黒い板」の存在感が気になってしまわないだろうか。映画やゲームを楽しんでいるときは気にならないが、スイッチを切るとTVは無用の板になってしまう。透明TVなら背景が透けて見えるので、部屋の中でも存在感は薄くなる。気に入った壁紙の前にTVを設置しても、TVがそれを邪魔してしまうことも無い。「Signature OLED T」は本体自体は透明な板状であり、コントロール部分などは外付けのワイヤレスBOXに収納させている。そのため透明な表示を遮るものはないのだ。

透明なTVだと背景が透けて映像が見にくいと思うだろうが、「Signature OLED T」は巻き取り式の黒い背景幕も備えているので、映画に没頭したいときは普通のTVと変わらぬ表示ができるのだ。

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背景に幕を出して普通のTVと同じ表示もできる

透明TVの最大のメリットはTVを「ガラスの板」「窓ガラス」のように使うことができる点だろう。たとえばキッチンとダイニングテーブルのガラスパーテーションに透明TVを組み込めば、必要な時だけ情報を表示することができる。料理中にスマートフォンやAIスピーカー、あるいはAIロボットに「ラザニアの作り方を動画で流して」と指示すれば、ガラスのパーテーションに料理レシピの動画を再生することもできる。料理中に旅行に行った時の写真を見ながら食事を楽しむ、なんてこともできるだろう。

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透明TVはパーテーションや窓ガラスを情報ウィンドウにできる

透明TVはまずは家庭用、あるいは店舗のショーウィンドウなどの製品が登場し、数年もすれば当たり前の存在になるだろう。そしてその次には窓ガラスなどへの応用も進むだろう。すでに韓国などでは地下鉄の窓に透明TVを内蔵し、トンネルを走行中に広告や次の駅の情報を流す試みも行われている。

ただの「扉」である自分の部屋のドアに透明な窓を取り付け、普段はTVと使い、プライベートな空間にしたいときは映画を観たり、TVに絵画を表示して外から室内を見えなくできる、なんてアパートも登場するかもしれない。急ぎの電話が来れば家族からのビデオ通話が投影され、緊急時の連絡も滞りなく行うことができるだろう。TVが透明になるだけで部屋の使い方が変わるだけではなく、あらゆる情報やコンテンツをより生活の中に取り入れることができるようになるわけだ。

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透明TVが情報やコンテンツをより身近なものにしてくれる

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携帯電話研究家
山根 康宏

香港在住。最新のIT・通信事情を取材するため世界各国の展示会・新製品発表会を1年中追いかけている。日本のメディアに海外事情の執筆記事多数。訪問先では現地取材と称し地元のキャリアや家電店を訪問し必ずスマートフォンを買い求める。最新のハイスペックモデルからジャンクなレトロ端末まで興味の幅は幅広く、時には蚤の市で20年前の携帯電話を買っては喜んでいる。1度買った端末は売却せず収集するコレクターでもあり、集めた携帯電話・スマートフォンの数は1700台を超える。YouTubeでは日本で手に入らないスマートフォンや香港情報を発信している。YouTubeチャンネルは「yamaneyasuhiro」。Twitter ID「hkyamane」、Facebook ID「hkyamane」。
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