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意外と身近でも体験できる?

東京でイスラム文化に触れる1日旅 

author: Beyond magazine 編集部date: 2024/09/18

イスラム文化と聞いた時にどんなイメージをするだろう? 遠くの国の知らない文化、ルールが厳しそうなどなど……。そんな風に感じている人も多いのではないか。

しかし、実はイスラム教の国は数多くある。例えば、トルコ、モロッコ、インドネシア、エジプト。日本国内でもイスラム教徒の人口は20万人を超えるといった推計もある。思っているよりも身近な存在なのだ。

そんなイスラム圏の文化をもっと知ってみたい、ということで、モデルのみのりさんと一緒に旅へ。都内でイスラム文化に触れられるスポットを巡った1日の様子をみのりさんに綴ってもらった。

ミノリ

モデル・執筆家・俳優。学生時代より活動を開始。現在は広告、MV、ファッション、舞台、雑誌の執筆を行うなど活動の場を広げている。一人旅とジャズが大好き。特技はピアノとお米を鍋で炊くこと。 

note:『ミノリなにかう?』かいものにまつわるエッセイ
Tumblr:『ミノリよりみち』旅日記
Instagram:@mino_nono_mino

国内最大のモスク「東京ジャーミイ」でイスラム教とトルコのアートに触れる

 「なんなんだろうこの異国の雰囲気をまとった建物は……」と自転車で前を通るたび、よそ見をし眺めていたこの建物。今日、初めて足を踏み入れる!

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ここは代々木上原駅から10分もかからないところにある、東京ジャーミイ。誰にでも開かれたイスラム教の礼拝堂、モスクである。戦前からの長い歴史を持ち、日本で3番目にできたモスク「東京回教礼拝堂」がその前身。2階建ての建物で、1階にはハラルマーケットと、トルコのアートや民芸品の展示、書籍を閲覧できるスペースなどがある。そして2階に礼拝堂というつくりだ。

イスラム教の礼拝

イスラム教の教えでは、夜明け前、昼、午後、日没時、夜と1日に5回の礼拝を行う。 各礼拝の時間は、場所と日の出、日の入りの時間によって異なる。 礼拝はイスラームの聖地メッカのカアバ神殿の方向を向いて行う。

まず私たちは広報の下山さんにお話を伺った。その説明の節々から、東京ジャーミイを愛する気持ちが伝わってきて、見学がますます楽しみになる。

最初に私たちは1階を探索した。ハラルマーケットでは見たことのないトルコの食材や雑貨が販売されている。私はここで触り心地のよい新緑色のスカーフに一目惚れをし、思わず購入。あとで礼拝堂に入るときに頭に被ろう。

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広間には建物の美しさに負けない、トルコの工芸品やアート作品がたくさん。下山さんのお話を聞きながら一つひとつ眺める。

なかでも「これだけで1日話すことができる」という下山さん一押しの注目ポイントは、チューリップ。よく知られていないが、チューリップは実はトルコから世界に広まった花で、トルコの人々は長い間チューリップを愛してきたという。トルコのチューリップは、私がチューリップと聞いてイメージするのほほんとした姿とは様子が違っていて、大人っぽい。花びらは外側に向かってのけぞるようなカーブで描かれ、葉や茎を自由に動かし艶めかしくダンスしてるように感じる。

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チューリップだと教えてもらわなければ気付かなかったくらい。展示されているアート作品のいたるところにチューリップを発見することができ、隠れミッキーを見つけたときのような気持ちになる。遊びに行かれる際はぜひ探してみてほしい。

そして私たちは2階の礼拝堂に。靴を脱ぎ、女性は髪の毛をスカーフで隠して入ることは決まりだが、意外にも緊張感はなくどんな人でも歓迎するような開かれた公衆の場という雰囲気がある。

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一歩中に入ると、目の前に広がるのは大きなシャンデリアと真っ白い壁。そのまま目線を上げると、万華鏡のような美しい柄のドーム型天井に圧倒される。しばらく天井を見つめているとすっぽりと球体に覆われてしまったような感覚になり、その場から動けなくなってしまった。

圧倒されてしまうのは、この礼拝堂の均整な左右対称の造りのためだと下山さんが教えてくれた。ドームのてっぺんから垂直に伸びるシャンデリアがこの空間の中央線となり、その左右は細かな模様や文字の違いを除きほとんど左右対称のつくりになっている。

左右だけでなく上下のつくりにも大きな意味がある。天井ドームの部分は神のいる世界を表し、そこから垂直下に降りてきた絨毯の床が私たちのいる人間界を表しているという。絨毯には均等な間隔で水平にラインが描かれているが、この水平の線は人間界では人間みな平等であるという事を示しているらしい。

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12時頃、礼拝の呼びかけ(アザーン)が響き始め、お昼の礼拝が始まったようだ。イスラム教徒の方々は時間ぴったりに合わせてくるわけではないらしく、男性たちがばらばらと集まってきた。礼拝堂内の天井に近いロフト部分が女性専用の礼拝スペースになっていて、女性達はここに集まる。

礼拝堂の中に響くアザーンに耳を澄ますと不思議と心地よい。男性たちは先頭の方へぴったりと横並びになり、言葉に合わせてだろうか……立ったり、座ったり、頭を下げたり……を繰り返して祈っていた。人が祈る姿を見学という形で見たのは初めて。その姿は澄んでいて美しかった。

下山さんは、東京ジャーミイ内の話だけではなく、東京のどこから見えるか、どんな風景の中に見えるか、ということも教えてくれた。東京ジャーミイはイスラム教の人々にとって、普段の生活で見えるだけで安心するような拠り所となっているのだなと想像する。そんな場所、私にはあるかなあ……。  

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東京ジャーミイ

住所:〒151-0065 東京都渋谷区大山町1-19
営業時間:年中無休 10:00〜18:00開館
(※金曜日は集団礼拝のため、信徒の方を除き、一般の見学は14:30以降可能)

公式サイト:https://tokyocamii.org/ja/page/31/
Instagram:@tokyocamii
X:@tokyocamii

モロッコの可愛い雑貨に出合える「Fatima Morocco」

続いて、表参道のモロッコ雑貨店「Fatima Morocco (ファティマ モロッコ)」へ。お店に一歩入ると、まず目に飛び込んでくるのがかごバッグたち。積み重なった大小様々なバッグは現地の市場を連想させ、一気に旅行気分に。白い店内は思わず踊り出したくなるような、ビビッドな雑貨で彩られ、ワクワク。足元から天井まで雑貨が詰まっていて、全部見きれない! と困ってしまうのが嬉しい。よーし隅々まで見ちゃうぞ! と意気込み、念入りに商品を見ていく。

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まず気になったのは、壁の一角を埋め尽くすバブーシュ。バブーシュは「Fatima Morocco」オリジナルで、色や模様が選び放題。私が気になったのは、花火のような刺繡に華やかなスパンコールがあしらわれたもの。この柄は定番で、モロッコの町中を彩るモザイクタイルにも似たようなモチーフが見られるそう。ぜひいつか現地に行って見つけてみたい。

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バブーシュ(5500円~)

繊細で美しい刺繍は一針一針手作業。刺繍やラタン織は主に女性が担う仕事だそう。デザインや仕上がりを褒め合いながら、ワイワイおしゃべりして作る様子を思い浮かべてみると、ものすごく愛しい一品に見えてきた。

次は、とんがり帽子をかぶったような蓋つきの小物入れ。この形は見かけたことがある人も多いであろう、モロッコの料理には欠かせないタジン鍋がモチーフになっている。もう、何も説明するまでもなく可愛い! 形、柄、色、大きさ、同じものはひとつもなく、あれこれ見比べながら、自分の部屋にこれがいくつも並んでいたらいいなあと想像する。

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カラフルタジン 黄色(3520円)

この小物入れを含め、お店にはラタン(つる性のヤシのこと)のアイテムが多く並んでいた。モロッコではラタンが有名で、様々な雑貨や家具に生まれ変わる。モロッコの土地の自然を少し分けてもらい、現地の職人さんによって形作られ、今遥か遠くの日本、青山で私たちをワクワクさせている。モロッコのほんのひとかけらが私の手の中にあると思うと、なんだか遠く離れた地が少し身近になったように感じる。

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Fatima Morocco

住所:〒107-0062 東京都港区南青山 3−9−12 佐藤ビル2階

営業時間:月~土・祝 11:00~18:00

公式サイト:https://www.fatimamorocco.com/
Instagram:@fatimamorocco
X:@fatima_morocco

新大久保「イスラム横丁」でハラルフードのお土産を

若者が溢れるコリアンタウン、新大久保。実はイスラム横丁というハラルフードを販売するお店が集まる一角があることをご存じだろうか。横丁では外国語が飛び交い、海外の市場のような雰囲気で活気が溢れ、新大久保にいることをうっかり忘れてしまう。

ハラルフードとは?

イスラム教の戒律によって食べることが許されている食べ物のこと。逆に食べてはいけないもののことを「ハラム」という。全面的に禁忌とされているのは豚肉とアルコール。

私たちはスーパーマーケットのようなお店を何軒か回った。大量のスパイスや、ジャスミンライス、乾麺、お菓子や冷蔵のお肉や魚も売っている。日本語のパッケージの商品は限りなく少なく、何か分からない食材達にこれは何だろうと目を輝かせてしまう。

今日は初心者らしく調理の必要がなさそうなものに狙いを定め、私はビスケットとスナック菓子を2袋、レンズ豆&マトンのレトルトカレーを購入。海外のお菓子って、予想を斜めに裏切ってくることも多いが……今回は全て当たり! 買って待ちきれず開封したビスケットはほのかなレモン風味で、小さい頃からなじみ深い赤いパッケージに男の子が描かれているあのビスケットと似たようなほっこりする味。

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スナック菓子のひとつ目は揚げパスタを小さく刻んだような感じで、サラダの上などにのせても美味しそう。もうひとつのスナック菓子はサモサ。まさかカレー屋さんで食べるように具が入っていると思わなかったのだが、ずっしりと中身がつまっていて驚く。スパイスが効いておかずの1品になるくらいのボリューミーさ。お菓子はどれも200円弱で購入でき、お得に楽しませてくれた。

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イスラム横丁の雰囲気を思い出しつつ、カレーを自宅で食す。具がたっぷりで驚く。マトンはスプーンの先で少し触るだけでほろほろと崩れるくらい柔らかく、レトルトカレーとは思えない! レトルトカレーは400円ほどで、10種類以上販売していた。他の種類も買っておけばと後悔……今度はお肉やスパイスを買って料理にも挑戦してみたい。

イスラム横丁

住所:〒169-0073 東京都新宿区百人町2-10−9
概要:新大久保駅すぐ近くの路地に入った一角。
ハラルフードを扱う食料品店や、飲食店が立ち並ぶ。

都内でも、知らなかったイスラム文化の一面を体験できる

今回の旅はたまたま同世代女子4人での取材でした。取材が終わったあと、私たちはカフェで1時間ほど時間を過ごしたのですが、それは旅行終わりに解散が惜しくなる雰囲気と同じく。ほとんどのメンバーが初対面、都内で1日一緒に過ごしただけなのに、すっかり旅行を終えた気分になっていたようです。“国内海外旅行” 大成功だったのではないでしょうか……♡

私は正直、今回の取材に参加することへ不安がありました。イスラム圏の文化に対して間違ったことを書いたり、思わないようにしなきゃ……と。その不安はメディアの情報だけから得る、ほんのわずかな側面しか知らなかったからだと分かりました。実際にイスラム圏の文化の中に身を投じてみたら、イスラム文化の美しさ、美味しさ、可愛さ、寛容さに、心惹かれていました。まさに「百聞は一見に如かず」です。勉強や情報収集ももちろん大切だけど、実際体験するとまた違ったものが見えてきました。

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最後に、東京ジャーミイの下山さんが建物の歴史を説明してくれる中で印象的だった言葉を。「どんなにくだらなくて、小さなことだとしても、深く調べていくと全てのことは面白い。疑問に思うことには全て物語がある」。

大切にしていきたいことを学んだ1日でした。素敵な企画に参加させていただき、ありがとうございました! ぜひ国内海外旅行してみてください!

Text:ミノリ
Photo:野口花梨
Hair & Make:伍島琴美
Edit:白鳥菜都

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Beyond magazine 編集部

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