いざ身体を動かしてみようと思っても、スポーツに縁がない生活をしていたら何から始めていいのか分からない。それより身体を動かす気分にならずベッドでゴロゴロしてしまう。そんな日はスポーツ漫画を読んでみるのはいかがだろうか。熱い主人公や仲間たちの姿に、きっと心も身体も動くはずだ。
マヂカルラブリーの野田クリスタルさんは、学生時代から漫画に心身ともに突き動かされてきたそう。野田さんが部活前に必ず読んでいた1冊から、最近刺激を受けているスポーツ漫画など3冊をご紹介。そして、現在経営しているクリスタルジムにて身体を鍛えることやメンタルを保つ方法について聞いてみた。

野田クリスタル(マヂカルラブリー)
1986年生まれ、吉本興業所属、マヂカルラブリーのボケ担当。『R-1ぐらんぷり2020』で自作ゲームをプレイするネタで優勝、コンビとして『M-1グランプリ2020』優勝、「ヒルナンデス!」(日本テレビ)、「マヂカルラブリーのオールナイトニッポン0」(ニッポン放送)などテレビ・ラジオなどで活動する一方、「野田ゲー」シリーズの制作、「クリスタルジム」のプロデュースなども手掛けている。
2021年7月に「クリスタルジム」をオープン。2024年10月に現店舗に移転し、パーソナルトレーニングとスタジオトレーニングを加えてリニューアルオープンした。https://crystal-gym.jp/
YouTube:@野田クリスタル野田ゲー
X:@nodacry
“毎日の積み重ね”という言葉に逃げない
――野田さんといえば筋トレのイメージがあります。そもそもトレーニングを始めたのはどういった理由ですか?
たまに芸人たちで集まって、バスケをやる機会がありました。麒麟の田村さんが主催して芸人たちを集めてくださったりして。バスケをやっているとき、人生でこのままダンクシュートをしないままなんて悔しい! と感じたんです。
――それは何歳ごろですか?
27歳くらいですかね。そこからダンクシュートをするために、身体を鍛え始めました。
――それまで運動はあまりされていなかったのでしょうか?
そうですね、しばらくやっていませんでした。

――今回『スラムダンク』をスポーツ欲が高まる一冊として挙げてくださっています。ダンクシュートがしたいときに読まれていましたか?
いや、学生時代に読んでいました。僕は兄がいて、ジャンプ漫画は常に家にあって。『スラムダンク』も連載を読み始めて、すごく熱中しましたね。小学生でバスケチームに入るくらいハマりました。
――連載当時バスケを始める人は多かったですよね。スポーツ欲を駆り立てるのはどんなシーンでしょうか?
主人公の桜木花道と、彼がライバル視している流川楓が練習で汗をかいた量を競い合うシーンですね。部活が終わったあとにタンクトップを水場で絞って、どっちの方が汗をかいたか。そのシーンが大好きで、練習のあとにみんなで真似するほどでした。
――影響を受けていたんですね。他には『ブルーロック』『ベー革』といった漫画も今回挙げていただきましたが、どれも主人公が熱い印象でした。
僕はスポーツ精神やアスリートの考え方が好きで。今回挙げた3冊の漫画は、それぞれ作者が思うスポーツの考え方がまったく違っています。
――どういったところに違いを感じますか?
まず『スラムダンク』は“1人じゃない、チームだ”という考え方。それと反するのがサッカー漫画の『ブルーロック』。“チームワークじゃない、お前が強くなくちゃいけない”というのが1巻で監督が言っています。
――相反する考え方ですね。
そうなんですよ。そして野球漫画の『ベー革』は“挨拶なんかいらない。効率よく練習する”という情熱や練習の量じゃなく質だという話です。スポーツ論がすべて違うのは、もちろん描かれた時代背景もあると思いますが、作者の考え方だと思います。全部正しいなと感じますし、それぞれの違いが読んでいて非常に面白いです。同時に熱い気持ちにもなりますね。

――そうですね。『ブルーロック』『ベー革』の始まりは衝撃的です。
特に『ブルーロック』はびっくりですよね。サッカーってチーム戦のはずなのに「お前だけが強くなれ」という。今人気の漫画ですし、王道かなと思って持ってきました。僕らの時代にみんなが読んでいたような作品、例えば『スラムダンク』に近いのかなと思っています。『ブルーロック』を読んでサッカーを始めた小中学生は多いのではないでしょうか。

――好きなシーンはありますか?
自分の活躍次第で、その日のごはんが変わるシーンですね。上位にランクインするといいおかずがもらえて、主人公はまだまだ下のレベルで、納豆とか漬物しかもらえない。それを読んだとき「いや、全員に食わせたほうがいいだろ!」と突っ込みましたね(笑)強い選手を育てるなら栄養はきちんとあげたほうがいい。
――(笑)。『ブルーロック』は大人たちの癖が強いですよね。
はい。僕は監督がすごく好きですね。まだ全容は分かっていませんけど、何か過去にあっただろうと。極端な考え方には何かきっかけがあっただろうと思います。
――そう思うと他の漫画も監督に一癖ありますね。
『スラムダンク』の安西先生も、『ベー革』の乙坂監督もそう。一筋縄ではいかない性格。そして漫画特有ですが、監督が主人公に思いや自分を重ねるシーンが好きですね。
――『ベー革』を今回挙げてくださった理由は?
漫画好きの間で話題になった作品です。考え方が極端で、スポコンと呼んでいいのか分からない。でも僕は考え方が乙坂監督と近いものがあると感じました。
――どんな部分に共鳴しましたか?
“毎日の積み重ね“という言葉に逃げないところですね。漠然と毎日練習しない。僕がもう一度小中学生に戻ってバスケをやるなら、『ベー革』と同じスタイルで練習すると思います。

――漫画から運動したい気持ちは高められると思いますか?
もちろんです。僕は、バスケ部がキツかった上に顧問の先生は怖かったので行きたくなかったんですよ。それでも部活に行けていたのは、毎日『スラムダンク』を読んでいたからだと思います。漫画で何とか気持ちを上げたり、落ち着かせたりできていましたから。
毎日アップデートをしながら継続していく

――小中学生でスポーツをやっていて、得たことは何でしょう?
中学のバスケは、顧問の先生が昭和の考え方でした。スパルタで怖い感じ。その反面教師で、人に優しくしようというのは得たことかも。人を殴ったり、貶したり、そういうことは絶対にしたくないなと思っています。
――今、学生時代よりも身体を鍛えたり運動したりしていると思うのですが、トレーニングをする上で大事なことは?
「毎日スクワットを30回やっています」という人って結構いると思うのですが、いつか効果があるだろうとしていても、そのいつかはやって来ない。毎日30回やることではなく、このトレーニングにどんな意味があるのかを考えることが大切です。ただ毎日同じことをやっていても、何も変わりません。“継続は力なり”と言うけれど、何を継続しているのか考えなくちゃいけないと思います。

――確かに、ただこなすだけではいけないですよね。
毎日アップデートしながら継続していることが、本当の意味での継続であると思います。これは『べー革』で学んだことでもありますね。
――人生においても、この言動でどういう意味があって、と考えることが重要だと思います。
そうですね。そういった考えの人の方が成功している気がします。成功しようと思っている人は、毎日悩んでいるというか。どうしてこれで成果が出ないのかと、悩みながら生きている。それって変わろうとしているからですよね。
――常々疑問を持つことは大事ですよね。
例えば毎日50メートル走を7秒で走って満足している人がいるとして、それはすごいことだけれど、大会で6秒では走れないじゃないですか。毎日どうしてうまくいかないのか悩んでいる人の方が、かっこいいですよね。
――自分の理想を追い求めるのであれば、何かを問い続けていたいですね。
目標があるならその方がいいと思います。毎日新しいことに挑戦している人は「どうしてそんなに頑張るの?」と言われがちですが、やっている本人は楽しんでいることが多い。
心も、人生も、雑に扱わない

――野田さんはトレーニングを始めて、現在はこのジムまで造られました。良かったことは何でしょう?
僕は最上級ですよね。ジムまでできちゃってるんだから。メリットがなかったなんて言ったら意味が分からないですよ! 僕がトレーニングをしていなかったらどうなっていたのかなと思います。
――10年でジムができるほど打ち込むなんて、すごいと思います。
似たような人が周りに多かったからですね。芸人さんの中にはサッカーの強豪校出身とか、スポーツが強い人が多くて。吉本の社員さんも、野球部やアメフト部出身の人がたくさんいるみたいです。

――今はどれくらいトレーニングをされていますか?
週に3回か4回、1時間ほどトレーニングに行きます。部位に分けて、胸、肩、腕、背中、足みたいに順番に。
――今もトレーニングをやっていて楽しいという感覚はありますか?
きついけど積み上がっていく瞬間が楽しいです。追い込む量が多いので、しんどいなと感じますけどね。
――10年間トレーニングを続けられているコツは?
毎日同じことをやる、みたいなメニューは僕も続いていません。ただ目標があって積み重ねていくものは、やめられなくなっていますね。今やめたら、これまでやってきたことが終わると思うと怖くてやめられないという。トレーニングも、ゲームもそう。レベルを上げるタイプのものはやめられなくなるから、コツはそういうところかと。ジムでも、目標設定なく続けられる人はいませんよ。

――身体と一緒で、メンタルも鍛えておく必要があると思います。野田さんのメンタルの保ち方はありますか?
いやー、本当に漫画かもしれない……。火を見ていたら落ち着くように、僕は漫画を読んでいたら落ち着きますね。最近は大人買いできるようになったので、一気に電子書籍で読んでいます。
――そうなんですね。野田さんにとって、健康な心とはどういったことだと思いますか?
雑なったら雑になるよ、と思います。心も、人生も。雑にならないように生きようね、と言いたいです。例えば借金を作ったら借金まみれになって、お金の使い方も雑になって、身体も雑に扱うようになる。心が整うと、さまざまなことが整うと思いますね。せっかく綺麗に整えた布団に雑に寝ないじゃないですか。健康面に気を遣うということは、人生を整えていること。雑にしないことが、健康な心なんじゃないでしょうか。

――運動をしたい人に、何かアドバイスはありますか?
きっと身体を動かすことは、何かにはなるよ、ということですね。部活も、大人になって意味がなかったわけじゃないと思うんです。スポーツをやっていたことは、何かが残っている。あと単純に体力は必要ですからね。人生は持久戦なので。体力は年齢と共にすり減っていくから、やっていて損はないと思います。
SLAM DUNK
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