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WAKAYAMAごんぱち家族の移住日記

最寄りのコンビニ38km、電動自転車が無力の地に住む

author: 利根川 幸秀date: 2021/08/17

「いざ!WAKAYAMAへ!」ということで東京在住のカメラマン、利根川さんは一念発起して和歌山県の限界集落へ移住した。なぜ和歌山? 仕事はどうするの? どんな子育て? そんな賑やかな一家の姿を赤裸々にレポートしてもらう。

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向こうに見える集落まで800m

「いつかは田舎で暮らしたい」と思っていたけれど

2021年3月、東京杉並区から和歌山に家族で移住した。最寄のコンビニまで38km、駅まで40km、牛丼が食べたくなったら39km。こっちに来て電チャリを一度も見たことはなく、親子三人乗りスタイルもここにはない。縁もゆかりもなく住み始めたこの地で、先祖代々ここで生活を営むご近所さんたちに交わって暮らす。まるで荒れ地に生える植物「ごんぱち(=熊野山岳地域で“イタドリ”の呼び名)」のような、華はなくともたくましい、そんな一家の日常を記録していく。

妻と僕との間で、将来は田舎で暮らすという考えは一致していた。キャンプに行ったり川遊びに行ったりするたび、この感じの自然が好きだとか、山あいにある集落の雰囲気や都会との距離感など、思いついた理想を言いあった。

「ここええ感じやん」「あそこはちょっと住みにくそうだったなー」「畑もやろうやー」「雪深い所はやめとこう」そんなノリでいつかはするであろう、田舎暮らし妄想トークの日々を過ごしていた。

電チャリも三人乗りも、ここでは見かけない。
2019年、東京都杉並にて。現在、妻・利根川 希美代(42歳)/長女・種(7歳)/長男・今(3歳)、筆者は43歳の4人家族

そんな折、家族ぐるみで仲良くしていた友達が、静岡に新天地を決めて東京を去って行った。そこへ遊びに行った時に、友達が言った言葉が移住をリアルに考えるきっかけになった。

「自分の都合じゃなくて、行くに行けなくなる事情は、この先どんどん出てくるから、本気で行く気あるなら早く行った方がいい」

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今後、いくらでも踏み出せない理由は出てくる。その時に言われたことで、一番が気になった事は両親のことだった。当時、60代後半のウチの両親は、埼玉で元気に暮らしていて、ちゃんと話したことはなかったけれど、母親はそのうち僕たちが、実家のそばで暮らすと思っているようだった。

移住を伝えていない2020年の正月

「ご両親が元気なうちに行った方がいいよ、行ってしまえば、そこで色々と考えられるけど、何かあってから動くのは、実際無理だと思うから」

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この話を聞いて、いつかは田舎への”いつか”が、“老後は田舎へ”になってしまうと思った。それは僕たちが望んだ移住のスタイルではない。焦りに似た感情が芽生え、「いつかは田舎へ」から、「本気ならすぐにでも」へと、モードが切り替わった。

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東京時代は綺麗な川まで二時間ちょいだが今は目の前。ウチから一分でちゃぽん

いろんな田舎がある中で、一体どこに住む?

知り合いに移住する話をして行き先を伝えると、100%聞かれるのが、「どうして和歌山に決めたのか」と言うことだった。田舎暮らしを妄想してた時は、なんとなく気候や出会った人たちの人柄から九州をイメージしていて、それが急遽、和歌山になったきっかけは、いろいろリサーチし始めた2016年。

丁度その頃、車中泊をしながら日本全国を旅して回っている友達がいて、今まで行った場所でどこが良かったかを聞くと、即答で「和歌山!」と返ってきた。

「WAKAYAMA……わかやま……和歌山……」。位置関係はなんとなく分かるのだが、一体どんな感じなのかまったくイメージが湧かず、ピンとこなかったのが和歌山のファーストインプレッションだった。あまりにノーマークだったせいか、逆に和歌山が気になり始めて、ネットであれこれ調べるようになった。

いろいろな人に「関東近辺でも良い所あるから、もっと探した方がいい」と何度も言われたし、長野や山梨、他にも気になる地域はあった。でもそれを言い始めると、次から次へと気になる所は出て来てしまい、行き先迷子になりそうな気がしたから「WAKAYAMA」という、響きだけの直感を強く信じ、僕たちは新天地を和歌山に定めた。

WAKAYAMA一本勝負とにかく現地に行ってみる

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移住に向けた一番最初のリアクションは、有楽町にある「NPO法人ふるさと回帰支援センター」和歌山デスクに相談しに行ったことだ。タイミング良く、2泊3日移住体験ツアーの募集があったので、2016年の秋、家族でそのツアーに参加した。

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東京から自走で和歌山へ、短期滞在住宅に宿泊。2017 @紀美野町

この時はまだ2歳半の娘と妻と僕の三人家族。ツアー内容は、3日間で移住に力を入れている市町村エリアを、一つ~二つまわり、移住者向けの定期借家を見たり、先輩移住者との交流、各自治体が独自で進めているサポートや、仕事に関しての情報等を、詳しく聞いたりするものだった。同様のツアーに合計三回参加した。

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物件探しの旅の宿、民宿すみ家はグローバル。2019@川湯温泉

そして妻の実家がある、大阪に帰省する度、目星をつけた地域の移住担当の方と連絡を取り、空き屋を紹介してもらうことを繰り返した。第二子妊娠出産が重なり、まる1年動けない年もあったが、探し始めて3年が過ぎた頃、世界遺産登録されている熊野古道や熊野本宮大社がある、本宮町に新天地を決めた。

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長距離移動の旅の途中。2020

暮らし方は変わるけど、生き方は変わらない。

移住して、少し落ち着いた頃に撮った家族写真

和歌山に引っ越してきて4カ月が過ぎる。国内移動だから、移住というのは大げさだと思っていたけれど、実際に引っ越して来て、これは移住と言ってもいいんじゃないかと思うくらい、生活環境は一変した。

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いなかの公園にはトラクター。2021

そんなディープ和歌山に移住した我が家は、4月に小学生になった7才の長女、保育園に行き始めた4才長男、42才自称自然派大阪人の妻、43歳カメラマンの僕の4人家族。次回は、住みはじめた家との出会いや、生活環境、こっちに来てから日常をスタートさせるまでのいろいろなことを、インスタ映えとは程遠い泥くささで、できる限り詳しく伝えていこうと思う。

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ドアto頂上30分、あらためて思う。ずいぶん遠くへ来たもんだ。2021

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フォトグラファー
利根川 幸秀

1978年埼玉育ち、99年にインドよりエジプトまで陸路で旅して、途中イスラエルで旅費を稼ぎ、2000年ハンガリーより帰国、その後も東南アジアなどバックパッカーしたのち、職人などを経て、2006年写真家・𣘺本雅司氏に師事。2010年フリーランスとして独立。雑誌、webメディア、ポートレート、家族写真等、多岐にわたり撮影。趣味:川遊び、ダム瞑想。2021年、家族で東京より和歌山に移住。
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