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Beyond的“未来考察”

内閣府に聞く「2025年からどんな社会になるの?」

author: 三宅 隆date: 2021/11/20

スマートフォンの登場、SNSの発達、電子マネー、AIの導入、自動運転車といった最先端テクノロジーが社会を加速度的に変革させている。もういつクルマが空を飛び、人とロボットの共生するSF映画のようなゲームチェンジャーが現れてもおかしくない。そこで、この潮流はいつ始まったのか調べたところ、時をさかのぼって2007年、かつて内閣府は2025年までの長期的な未来像を視野に入れた「イノベーション25」プロジェクトを発足・推進してきた。奇しくも大阪・関西万博が開催される2025年まであと4年、わたしたちの暮らし方がどう変わっていくのかを内閣府に伺った。

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内閣府が進めてきた「イノベーション25」とは?

「一番好きな映画は?」と問われると、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と答えるようにしている。タイムマシン、ホバーボード、自動で靴紐が結ばれるシューズなど、子ども心にワクワクが止まらなかった。大人になった今もその気持ちは薄れないし、なんとなく世界を変えるのはそういった未来的ガジェットなのだろうと、漠然と感じている。

ただITによる技術革新、つまり“イノベーション”はそういった目に見えるモノばかりではないが、この十数年で生活はずいぶんと変わったように思う。たとえば電話にネット機能を備えたスマートフォンも、登場時はメールや簡単なWebブラウジング程度しかできなかったのが、今や電波帯は高速・大容量通信を実現する5G(第5世代移動通信システム)にまで発展し、デバイスも手のひらサイズのパソコン並みにスペックアップしている。

おかげで仕事は場所を選ばないし、好きなときにYou Tube動画が観られ、Twitterで著名人とコミュニケーションすらとれる。ブラウン管テレビと黒電話で育った自分には信じられない変化だ。

「『イノベーション25』(平成19年6月1日閣議決定)とは、2025年までを視野に入れた成長に貢献するイノベーションの創造のための長期的戦略です。2007年当時に、2025年の具体的な未来像をイメージしながらまとめられた戦略でした。いまは2021年ですが、電子決済や自動翻訳など、皆さんの身近なシーンで当時の未来像に近いサービスも実現され始めているかと思います」

そう話してくれたのは、内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局 参事官(統合戦略担当)付 参事官補佐の川崎さん。およそ14年前、現在のような社会を描き内閣府は「イノベーション25」戦略を掲げた。しかし、時代の変化に合わせて現在はその思想を受け継ぎ、最新の「第6期科学技術・イノベーション基本計画」(令和3年3月26日閣議決定)では日本の未来社会像として「Society 5.0」の実現を掲げている。

AIとネットを使い人間の生活をより良いものに

この「Society 5.0」とは狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会」で「持続可能かつ強靭で、一人ひとりの多様な幸せ(well-being)が実現できる社会」としている。

ここで言う“サイバー空間”とはネットを中心としたデジタル世界のことであり、“フィジカル空間”とは体だけでなく現実世界すべてを指している。狩猟や農耕社会までさかのぼるとはまた大げさな話だと思ったが、とはいえ、それほどの時代の変革期にわれわれはいるようだ。そしてこれまでの情報社会(4.0)とも違うフェーズに入ることを目的としている。

「Society 5.0」ではフィジカル空間からセンサーとIoTを通じて、あらゆる情報を集積(=ビッグデータ)。そしてAI(人工知能)がビックデータを解析し、高付加価値を現実空間にフィードバックする。その結果、高度な自動運転、ロボットの自動生産、AIが人に提案をするといったことが可能になる。

「イノベーションはもちろんのこと、データやデジタル技術を用い生活様式やビジネスをより良いものへ変容させるデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進により、例えば、高度なAIやロボットが今まで人間が行っていた作業や調整を代行・支援し、誰もが快適で質の高い生活を送ることができるようになるなど、社会そのものの変革を目指しています」(川崎さん)

AIを使った予防検診、ロボット介護、農作業の自動化、ロジスティクスによる最適な配送、フードロス問題のほか、格差なくニーズに対応したモノやサービスを提供することで、経済発展と社会的課題の解決を両立するとしている。

その実証実験も現在、企業・大学などでさまざまな研究者たちが多岐にわたり行い、2025年以降の“よりよい社会”はもはや夢物語ではなくなってきている。タイムマシンは難しいかもしれないが、誰もが暮らしやすい社会はもうすぐそこだ。

……え? 時間を超えるのも無理じゃないって?

2025年から2050年までを見据えた「未来の暮らし」

「目標1.2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」

これは空想でも冗談でもなんでもなく、内閣府が2050年までに実現を目指す「ムーンショット目標」の一部だ。内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局 未来革新研究推進担当の土井さんは、以下のように話す。

「超高齢化や大規模自然災害、地球温暖化問題への対処等、多くの困難な課題解決に科学技術が果敢に挑戦し、未来社会の展望を切り拓いていくことが求められています。これらの社会課題は加速度的に進行しており、これまでとは全く異なるアプローチが不可欠です。

『ムーンショット型研究開発制度』は、我が国発の破壊的イノベーションの創出を目指し、従来技術の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発(ムーンショット)を推進する新たな制度です。

2040年又は2050年をターゲットに、人々の幸福な未来を創造することを目指し、その基盤となるアバターやAIロボット、医療、地球温暖化、食料対策、量子コンピュータ等に関する目標を設定し、研究を開始しています。また、本年9月に台風・豪雨の制御やこころの安らぎ・活力に関する目標を追加決定したところです」

その目標は現在9つ。超早期の疾患予測・予防、AIとロボットの共進化により自ら学習・行動し人と共生するロボット、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環の実現など、もはや“人生100年時代”が常識となったなかで、誰もが幸せに暮らせる社会を目指す。

すでに取り組みも始まっており、「多様な人々が社会参画できることを目指し、自在に遠隔操作できるアバターの要素技術の研究を進めています。その中で、保育所やカフェなどでの実証実験を通じて、社会受容性の検証もスタートしました」と土井さん。

さらに超高齢化による健康問題に対し、医学的アプローチと数理学的アプローチを統合することによって、超早期に疾患を発見する研究。地球温暖化問題に対し、大気中から二酸化炭素を回収して利用する“DAC(Direct Air Capture)”技術の研究。予想される食料需給のひっ迫に対して、食料の生産や流通過程で発生する未利用食材を3Dフードプリンタによって新たな食料として利活用する研究など、驚きに満ちた内容ばかり。

というわけで4年後の2025年を皮切りに、社会はさらなる変革を遂げるかもしれない。そこには間違いなく、いつか映画で観た光景も実現されていくだろう。空飛ぶクルマに乗るのが先か、ロボットを操作して旅するのが先か、世界を変えるゲームチェンジャーの登場はもうすぐそこだ。

取材協力:内閣府

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編集者・Beyondディレクター
三宅 隆

ライフスタイル誌、モノ情報誌、TV情報誌などの編集部に所属し、現在はWebメディアのプロデュース・編集・執筆を中心に活動。カバージャンルは家電、ガジェット、時計、アウトドアなど。趣味はキャンプと釣り。Beyondディレクター。
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