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ハワイ三部作①噴火直後のハワイ島に上陸!

世界一の火山と星空がある島

author: 堀 真菜実date: 2022/06/24

地球のエネルギーを感じるのに、「ハワイ島」ほどぴったりな場所はない。世界屈指の活火山である「キラウエア」からは、今この瞬間もマグマが流れ出し、ゆっくりと新しい大地を生み出している。ハワイ島の面積は、わずか四国の半分ほど。それにも関わらず、火山が生んだダイナミックな地形によって、世界にある17の気候帯のうち、氷雪に覆われるツンドラ気候と氷雪気候以外の15種類もの気候が存在する。ゆえに見られる景色も多様だ。

手つかずの自然に、素朴なハワイアン文化。ホノルルのあるオアフ島よりも「素」のハワイに出会えるのがハワイ島である。

2018年、ハワイ島で大噴火が起こった。私は噴火の直後の島を二度訪れ、火山のエネルギーと、ハワイアンの思想に触れた。トラベルプロデューサー堀 真菜実が「人生に一度は行くべきハワイ島の旅」を紹介する。

世界一の活火山と、世界一の星空がある島

ハワイ島は、「ビッグアイランド」の愛称で呼ばれる、ハワイ諸島最大の島だ。車でぐるりと回ると約6時間。景色が海、山、草原、火山、町と目まぐるしく変化し、車窓を飽きさせることがない。

観光客が溢れるワイキキとは違って、完全な「観光地」はごく一部。町の店舗には、地元の人と観光客が混在する。私のお気に入りの「ポキ(ハワイの漬けマグロ料理)」や「アサイーボウル」の店もローカル色が強く、列をなす現地人から島の情報を得ることもある。

日本から島最大の都市「コナ」へは直行便があるため、実はアクセスも抜群だ(2022年6月現在は運休)。

この島は、火山の存在なしに語れない。世界で最も活発な火山のひとつであるキラウエアは、必ずと言っていいほど観光客が訪れる場所である。ただし、そこまで行かずとも、島のいたる場所でマグマが作り出した地形を見ることができる。

溶岩が冷え固まってできた場所。

一方、ハワイの最高峰はマウナケア。その山頂は、星の美しさゆえに「世界でもっとも宇宙に近い場所」と呼ばれ、各国の研究機関がここで天体観測をするほどである。高さは4,205mと富士山を優に超える。マウナケアも、海底火山による造形物のひとつだ。

マウナケアからの夜空は「世界一の星空」とも言われる。私は三度登ったが、3回とも満天の星を見ることができた。

ほかにもハワイ島には、緑に覆われた渓谷や、全米一位となった美しいビーチ、虹のかかった巨大な滝など、見るべき場所が実に多い。

海と火山が織りなす絶景が絶えないハワイ島。

噴火真っ最中のハワイ島に上陸

2018年5月、キラウエア火山のハレマウマウ火口で大規模な噴火が起こった。約700棟の世帯が焼失し住民は避難を余儀なくされた。

日本では噴火というと爆発的なイメージが強いが、ハワイの火山は比較的安定しており、噴火は爆発をともないながらも徐々に進行することが多い。私がハワイ島へ向かったのは、最初の噴出が確認され、住人へ避難勧告が出たころだった。やや不安はあったが、事前に申し込んでいた「キラウエア火山ハイキングツアー」がキャンセルになっていなかったことが出発の決め手となった。

しかし、コナ空港へ降り立つと、キラウエア一帯の封鎖が決定したという知らせが。ほんの数時間前に発表されたらしい。

旅の目的のひとつが中止になったことは残念だったものの、火山以外の観光にはまったく影響がなく、連日朝から晩まで島を楽しんだ。

ハワイ島は、品質が高く有名な「コナコーヒー」の産地でもある。

噴火1カ月後、再びハワイ島へ

帰国後、キラウエアから流れ出た溶岩流が住宅を押し流す映像が日本のニュースでも流れるようになり、私はようやく「被害」の様子を目の当たりにした。

翌月にも、自らプロデュースしたツアーでハワイ島に行く予定だったが、参加予定のメンバーからは「ニュースを見た。怖い」「キラウエアに行けないのなら、行く意味が半減する」と相談を受けていた。

そこで、ツアー中止を覚悟してメンバー全員に「この状況なので、キャンセルは遠慮なく」と連絡するとともに、1ヶ月前に訪れた率直な感想を添えた。

「現地に実際に行ってみると、火口エリア以外はいつもと変わらなかった。また、たとえキラウエアに入れなくても、ハワイ島には見尽くせないほどの見どころがある」

すると、驚くことに翌月のツアーは1人のキャンセルもなく迎えることができた。こうして、私たち旅の一行は「噴火直後ならでは」の体験をすることになったのだ……。

赤く燃える夜空の下で続く日常

ジャングルで乗馬、海でダイビングと、ハワイ島を満喫していた私たちではあったが、スーパーマーケットで買い出しをしていると、現地のハワイアンに声をかけられた。しばらく話しているうちに、彼はこんな話をしてくれた。

「キラウエアの閉鎖は残念だったね。もしレンタカーで来てるのなら、夜に封鎖エリア近くの町に行ってみるといいよ。火山の威力を感じられるから」

そして注意事項として「車を停めたり、車から降りたりせずに通り過ぎてくるんだよ。そうすれば誰の迷惑にもならないから」と付け加えた。

私たちは、夕方まだ明るいうちに、教えてもらった場所を目指した。日が落ちるにつれて、進行方向の空が赤くなっていく。はるか遠くの火口に流れる溶岩の熱が、一帯の空までも染め上げているのだ。

夕焼けとは明らかに違う空の色に騒然とする車内。

世界中のどんな大都市のネオンでも、これほど煌々と夜空を照らすことはない。やすやすと人間の活動を超える自然のエネルギーに圧倒された。

スーパーマーケットで教わった通り、車は停めずに車内から撮影しようと窓を開けたとき、近所の家から住民の笑い声が響いた。ホームパーティーを楽しんでいるようだ。ーーこの空の下でも、いつも通りの生活が続いている。住人にとっては赤い夜空さえ日常になりつつあるのだ。

恐ろしさから一転、私たちは、少しほっとして、町を後にした。

火口からはまだまだ距離があるため、空のビジュアルとは裏腹に熱風や爆発音は一切なく、町は静寂に包まれていた。

「脅威」を報道するメディアと「驚異」を語るハワイアン

「今週は海外からの観光客が、半分以上キャンセルになったよ。島のほとんどの場所は安全なのに……」

滞在中、こういう声をよく耳にした。「海外では、噴火の恐しさばかりを報道して、他のエリアが普段通りだとは触れないのでしょう。君たちはよく来てくれたね」

私はたまたま前の月に来て安全に旅ができることを知っていただけで、そうでなければやはり躊躇していただろう。こういうとき、自分の目で見ることの意義を改めて実感する。

「ぼくたちハワイアンはね」あるガイドが言った。「今回の噴火で、自分たちをかわいそうだなんて思っていないんだ」。聞くに、「同情すべき被災者」という感覚はないのだという。

ではどう捉えているのか尋ねると、「ペレが怒ってるんだなって。ここに住むというのは、そういうことなんだよ」と返ってきた。「ペレ」とは、キラウエアを棲み家とする火の女神のことである。

「もちろん誰にも怪我はしてほしくないし、みんなの家が無事であってほしいけれど」彼は続ける。「火山が活動するのは当たり前のことだからね」

メディアでは、自然が、猛威をふるい人々の生活を脅かす「脅威」として切り取られるが、ハワイアンにとっては脅かされている感覚はない。噴火に驚嘆しながらも、「新しい大地を創造するペレ」へ敬意すら感じていた。

マウナケアの星空とキラウエア火山の光。噴火後ならではの一枚。

自然と共生する。もはや使い古されたこのフレーズは、日本では「自然が人のコントロール下にある」シチュエーションで登場しがちだ。かたやハワイアンは、そもそも自然をコントロールしようとはしない。自然の恵みには感謝し、自然によって失うことも受け入れるのだ。

人を介した情報と、実際に見るものの間には、乖離があることが多い。

火山の恐ろしさが注目された噴火直後のハワイ島。その裏では、普段の観光で見ることのない、自然の力と現地の思想に触れることができた。

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トラベルプロデューサー
堀 真菜実

新しい旅を作るトラベルプロデューサー。世界弾丸一周、廃校キャンプなど、手掛けるツアーは即日満席。はじめましてのメンバーで行く「シェアトリップ」の仕掛け人として、数千人の旅人と国内外を巡り、その経験をもとに、地方自治体や海外の観光局と、観光資源の発掘やツアー造成を行う。人と地域を繋ぐ場作り、メディア出演などでも活躍中。
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