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モーターショー「IAA Mobility 2023」で見た、クルマに代わるクルマとは

1人乗りのコンパクトカー「マイクロモビリティ」が自動車の概念を変える

author: 山根 康宏date: 2023/11/30

都市部に住むなら、自動車の必要性を感じることはないだろう。ガソリン代や駐車場代、毎月の保険代に車検費用など車にかかるコストはかなりのものだ。とはいえ、ちょっと遠くに出かけたいときや雨が続く日など車があると便利だろう。最近では、好きなときに自動車を使えるシェアサービスもあるが、好みの自動車が常に空いているとも限らない。

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 スイス生まれのマイクロモビリティ「Microlino」

側面にドアがない!? スイス生まれのレトロかわいい「Microlino」

スイス・Micro Mobility社の「Microlino(マイクロリーノ)」は最大2人が乗れる超小型車だ。丸みを帯びた全体のデザインはどことなくかわいらしく、駐車スペースもわずかで済む。都心でこんな自動車ばかりが走れば渋滞も解消されるかもしれないし、移動先でもちょっとしたスペースがあれば駐車場にできる。

なお、この手のマイクロモビリティはほとんどが電気駆動であり、「Microlino」も最長200km走行できるバッテリーを搭載している。充電は家庭のコンセントからも可能だ。

「Microlino」は乗り降り方法もユニークだ。側面にドアはなく、なんとフロントが大きく斜めに開くのだ。これなら左右にスペースの余裕のない場所に停めても楽に乗降できる。車内後部は荷物置き場で最大220Lの空間を確保。サンルーフもあるので、晴れた日は手錠を開けて解放感溢れるドライブを楽しめる。

最高速度は90km/h。価格は約2万ユーロ(約314万円)と決して安くはないものの、維持するコストは一般の車よりはるかに少なくて済む。なによりもこんな自動車で街を走っていれば注目の的になるだろう。

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 フロントを開けて乗り込むスタイル。大人の男性でも2名が乗車できる

着せ替えできるクルマ「YOYO」

イタリアに拠点をもつ香港のX Electrical Vehicle(XEV)社の「YOYO(ヨヨ)」は、より車らしいデザインといえる超小型車だ。「Microlino」はレトロな雰囲気の車だが、「YOYO」はスポーツウェアのような明るくカジュアルなイメージに仕上げられている。「YOYO」の大きさは全長2,500mm、幅1,500mm、高さ1,575mm、重量が750kg。最大2名乗りで最高速度は70km/hだ。

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カジュアルデザインの「YOYO」 

「YOYO」の側面を見るとボディ保護の役割も果たすカラーブレードがはめ込まれている。これは「YOYOブレード」と呼ばれ、自由に交換することが可能だ。数多くの「YOYOブレード」が販売されており、アーティストとコラボしたブレードも販売される。

洋服を着替えるように、あるいは腕時計のベルトを交換するように、「YOYO」は側面デザインをTPOや気分に合わせて交換できるのだ。なお、室内には10.25インチのタブレット型スクリーンも搭載。スマートフォンを使って「YOYO」の充電状態やスクリーンへの映画の投影などもできる。「YOYO」の発売は2023年末の予定で、価格は約1万7000ユーロ(約26万7000円)。

側面の交換可能な「YOYOブレード」

マイクロモビリティカーを出しているのはスタートアップだけではない。ドイツの大手自動車メーカーの「Opel(オペル)」も市場に参入しており、マイクロモビリティ「Rocket-e」を販売中だ。

充電ケーブルは、車内収納式で家庭コンセントが利用可能。4時間でフル充電ができ、最長75kmの距離を走ることができる。価格は7990ユーロ(約126万円)と、さすが大手メーカーの製品だけあって安く抑えられている。月々49ユーロ(約7700円)からのリースプログラムも利用できる。

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 「Opel」の「Rocket-e」

「Rocket-e」は乗用車としてだけではなく、貨物車としての利用も考えられている。助手席側には、座席ではなく荷物室に変身させるカバーを装着すれば、車内後部に加え運転席から手の届くところに荷物を置くこともできる。

これならフードデリバリーに使うときも便利だろう。あるいは、貨物室に旅行用品を詰め込んで「Rocket-e」でヨーロッパ各国を旅するのも悪くはない。マイクロモビリティは都市内のあらゆるヒト・モノの移動を手軽に簡単にするモバイルツールなのである。

助手席側を荷物席にすることもできる

その考えを発展させたのが、中国の「JIAYUAN EV(ジャイアン EV)」の超小型車だ。共通のシャーシをひとつだけ開発し、その上に乗せるボディーを変えることで貨物車にも乗用車にも早変わりするのだ。軽自動車のトラックよりもさらに小さく黄色いボディの車体は見た目もかわいらしく見える。お店の配送用や広告宣伝カーとして使うのもいいだろう。

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 「JIAYUAN EV」の超小型トラック

乗用車スタイルのボディーにもさまざまなカラーバリエーションがあり、ファッション感覚で選ぶことができる。移動ツールではあるものの、所有することだけで高い満足度も得られそうだ。

「クルマ」の概念を180度変える「マイクロモビリティ」

これまでの自動車は最高速度や燃費、あるいは居住性などで選んでいたが、マイクロモビリティは、そもそも1人か2人で短距離移動に使うものである。そうなるともっとも重視されるのはデザインになるかもしれない。

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 マイクロモビリティは乗用車もカラフルな色使いが特徴的

また、マイクロモビリティカーは小型であることから本体の強度設計も大型車より比較的容易であり、また製造コストも安く済む。完成した自動車も保管や輸送費も安く抑えられるだろう。

そして、大手メーカー以外のスタートアップも参入しやすく、IAA Mobilityの会場ではいくつもの超小型車を見ることができた。メーカーが増えれば技術の進化も進むだろうから、いずれはコストダウンも期待でき、数年後には超小型車も50万円程度で買えるようになるかもしれない。

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 スタートアップの参入が購入コストを引き下げてくれる

マイクロモビリティカーは、電気自動車なので制御もコンピューターで行いやすく、スマートフォンとの相性もいい。キーレス乗車や車内コントロールなどもスマートフォン片手でできるようになるに違いない。

そして、10年もしないうちに自動運転も可能になり、ドアを開けて乗り込んだ超小型車の中で映画を見ているうちに会社や学校に到着する、なんて時代も夢ではなくなる。スマートフォンがパソコンの役割を奪い、誰もがどこでも情報収集や情報発信ができるようになったように、マイクロモビリティも自動車の概念を180度変えるものになっていくだろう。

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携帯電話研究家
山根 康宏

香港在住。最新のIT・通信事情を取材するため世界各国の展示会・新製品発表会を1年中追いかけている。日本のメディアに海外事情の執筆記事多数。訪問先では現地取材と称し地元のキャリアや家電店を訪問し必ずスマートフォンを買い求める。最新のハイスペックモデルからジャンクなレトロ端末まで興味の幅は幅広く、時には蚤の市で20年前の携帯電話を買っては喜んでいる。1度買った端末は売却せず収集するコレクターでもあり、集めた携帯電話・スマートフォンの数は1700台を超える。YouTubeでは日本で手に入らないスマートフォンや香港情報を発信している。YouTubeチャンネルは「yamaneyasuhiro」。Twitter ID「hkyamane」、Facebook ID「hkyamane」。
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