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こばかなの、無駄話から生まれる“感性”の法則

MBTIという補助線で、UXの悪い“自分を知る”問題を解決する

author: こばかなdate: 2024/03/05

外からの力が作用しなければ、物体は静止、または等速度運動を続けるという「慣性の法則」をなぞり、「こばかなの無駄話から生まれる“感性”の法則」と題した連載。こばかなさんと無駄話をして、日々の生活で静止しがちな思考を動かし始めよう。第18回目は、自分を知るためのお話し。

“自分らしさってなんだろう?”という問い

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生き方においてもキャリアにおいても、“自分らしくありたいよね”という思いは、特に最近の若い世代の間で広く共有されているテーマだと思います。

時代背景的な考察をすれば、終身雇用の時代ではなくなったことによって、企業に人材が不足しているため、従業員側が以前より力を得たことが大きい。個々人は自分らしさを発揮しやすい職場を選ぶようになっていますし、逆に企業はそのニーズに応えられる働き方を提案しないと、選ばれない会社になってしまう。加えてフリーランスの選択肢も広がってきていて、“自分らしい生き方”の幅は広がっています。

一方で、「自分らしさって何だろう?」という問いに答えるのは簡単ではありません。下手するとドツボにハマってしまい、悶々と考えた挙げ句、自己否定に走る……といった負のループに陥ることも。

簡単な問いに見えて、実は悩ましい“自分らしく働く”こと。それを紐解く上で、最近私が面白いなと思ったのがMBTI(Myers-Briggs Type Indicator)なんです。

ユングのタイプ論をもとにしたMBTIってなに?

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MBTIは、スイスの精神科医カール・グスタフ・ユングのタイプ論をもとにした性格検査のこと。ユングの許可を得て、マイヤーとブリッグスという親子が20年以上かけて生み出した、国際規格に基づいた検査です。最近Z世代の間で流行している無料の性格診断コンテンツ「16Personalities」は、ISTJやENFPなどアルファベットを使って人のタイプを表していますが、実は公式なものではありません。

ちなみに私が代表を務めるコーチングの会社「THE COACH」では、私含めて正社員全員が本家のMBTIを受けました。それはメンバー全員のタイプが分かると相互理解ができるから。「こういうタイプの人が多いから、組織的にこういう課題が起きやすいんだ」という発見が生まれるんです。

前置きが長くなりましたが、私は“自分らしく働くこと”について、MBTIの言葉を使うと一段掘り下げて考えられるなと思っていて。MBTIでは、「外向的(E)と内向的(I)」とか、「感覚型(S)と直感型(N)」などのパターンを組み合わせて、英字4列で考え方の傾向を表します。

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人間の内面は複雑なので、外向と内向どちらの性質も持ち合わせていることはよくあることだと思います。でもMBTIの考え方では、人の性質をグラデーション的に捉えるのではなく、咄嗟に出る“利き手”がどちらか、という仕方で捉えるんです。

例えば、私は美大に通っていたのですが、美大生には作品をつくるときにあれこれと言葉にせずに、抽象的な思考をそのまま作品に投影する人が多いです。ただ、私の“利き手”の傾向は、抽象的な思考よりも、具体的で分かりやすい考え方を好みます。私には、抽象的なものを抽象的なまま理解しようとするのではなく、体系的に理解しようとする傾向が明らかにあるんです。

美大時代は周りに違うタイプの人が多くて、マジでみんな変わった人だなと思っていて(笑)。その美大生らしい特質性がないことを、コンプレックスに思う時期も正直ありました。でも自分のタイプが一般的な美大生とは違ったんだなということが、MBTIの講習を受けてあらためて理解できたんです。

「抽象的なものを扱えるような自分にならないと」ではなく、「抽象的なものを体系的に理解しようとするのが自分なんだ」と理解する。“自分らしくいる”ためには、自分の傾向を知った上で、それを生かそうと考えればよいのだと思います。自分の特性がどこに向いているかを理解すれば、働き方も円滑にするし、人間関係も円滑になります。

自分を知るためには、考える軸があると良い

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MBTIが教えてくれるのは、人間という複雑なものを深く理解しようとするときに、考える手がかりとしての羅針盤が必要だ、ということでもあると思うんです。例えば、写真が上手くなりたいときに、構図という概念を知っていたり、露出という概念自体を知っていたりすれば、技術の改善や分析ができますよね。それは「構図」や「露出」といった考える軸自体を知っているからです。

“自分を知る”ということも同じで、やっぱり考える観点が必要。自分を知ることを上達させるのは普通に難しいので、まず軸を知る勉強をした方がいいと言えると思います。一方で私自身のことを振り返ると、そういった手法など何にも知らないまま、正面から人生にぶつかりながら分かってきた部分もあります。

もともと私は、他人の目をかなり気にするタイプ。だから人に振り回される傾向もあって、「周りの人たちが結婚し始めたから結婚しなきゃ」とか、「みんなが大企業に行っているからとりあえず私も行こう」とか、そういう考え方をしていました。レールっぽい生き方にフィットする人もしない人もいるとは思うんですが、私は一度ハマってみてそれが合わなかったタイプです。

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でもそうやって足掻いているうちに、自分の生き方がだんだん合ってきたという気がすごくしていて。今もまだ完全ではないんですが、10年前と比べると相当フィットしています。

大体のキャリアのパターンって、まずどこかの会社に入って、苦労したり試練を乗り越えたりしているうちに、一周くらいまわって、変わりたい時期がやってくる。気持ちも若干しんどくなって、「今のワタシのままでいいんだっけ」と考えて、転職したりする。この流れって一般的だと思うんですが、実はちゃんとPDCAが回されているんですよね。

年を取るにつれて悩みが少なくなる人は多いと思うんですが、そりゃそうだよねと最近思います。若い頃は何にも分からないから、とりあえずやってみるしかない。学生時代の恋愛とかも、2週間で別れるとかあるあるですよね(笑)。自分を知ることも、それに近い部分はあるなって思います。

“自分を知る”こと自体が、UX悪い問題

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「16Personalities」だけではなくて、いつの時代も定期的に診断系コンテンツって流行ります。占いのニーズはいつまでも尽きませんし、年始のおみくじも大体みんな引く。

誰だって、みんな自分のことが知りたいんです。でも、自分を知るということ自体が、漠然としていて掴みどころがない問題があるんだと思います。どうすれば自分を知ったことになるのか、そのこと自体の抽象度が高いので、そもそもUXが悪いというか。だから性格診断が流行ったりするわけで、自分を知るに補助線を引くサービスにニーズが集まる、という構図だと思います。

もう一度MBTIの話に戻ると、私はMBTIを受けての最初の感想が、「ああ、安心したな」でした。自分について言語化されることは、とても安心するものなんです。人のタイプに優劣はなく、自分が誰かと噛み合わないのは、ただ違っているから。自分が変わらなきゃとか、あの人が変だと責めたりとか、そういう必要はない。他人との違いを深いレベルで理解すると、自分と他人を切り離して考えられます。

本家のMBTIでなく、ストレングスファインダーとか、コーチングを1回お試しで受けてみるとか、もう少し気軽なところから始めてみてもいいと思います。ポイントは、それを使って“自分を知るための軸”を理解すること。みなさんの2024年が実り多い一年になることを願っています。

Text:弥富文次
Edit:小林雄大

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THE COACH 代表
こばかな

THE COACH 代表。デザイナーとして株式会社DeNAに入社後、株式会社THE GUILD、フリーランスを経て株式会社THE COACHを創業。キャリアとエグゼクティブを中心にコーチングの実績400人以上。国際コーチング連盟認定コーチ(ACC)。開講以来、講師として150名以上のトレーニングを担当。Twitterやnoteでコーチングについて発信しており、SNS合計フォロワー数6万人以上。
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