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Z世代のアドベンチャー(冒険者)たちに捧ぐ

山田Gの大人の社会見学Vol.8:合コンマスター

author: 山田ゴメスdate: 2023/05/24

アラカンのベテランライターが老体に鞭打ちながらも「考えるな! 感じろ!」と自身を奮い立たせ、あらゆるジャンルの「新しい経験」にチャレンジ! そこで得た感動と成長を、Z世代の『Beyond』読者諸君にもお伝えすることを旨とする体験ルポ型の本連載──第8回目は、「一般社団法人 日本合コン協会」が認定する、れっきとした民間資格「合コンマスター」の取得にチャレンジ!

ある日、山手線に乗って渋谷駅から恵比寿駅へと向かっていたら、田中絵音(えのん)さんという女性と5年ぶりくらいにバッタリ再会した。

絵音さんという女性は、たしか「一般社団法人 日本合コン協会」なる団体の代表を務めており、「恋愛の専門家」として何度かコメントをもらったことがある。『VoCE』だかなんだかの企画で、彼女がプロデュースした西麻布だかどこだかの「街コン」に潜入取材させていただいたこともあった。

わずか一駅間の再会だったので、この日は「またお仕事ご一緒できればいいですね」と社交辞令を交わして、さよならした。

しかし、その数日後──絵音さんからInstagramを通じてメッセージが届いた。

「今度、日本合コン協会が主催する『合コンマスター』の資格認定講座があるんですけど、もしよければ受講してみませんか?」

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ごうこんますたー??? 聞けば、試験とかは一切なく、講座を(真面目に)受けさえすればもらえるたぐいの民間資格であるらしい。「HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)カウンセラー」「温泉マイスター」……と、50代半ばあたりから密やかに「資格取得」に目覚め、一つでもたくさんの資格を有しておきたくてたまらないわたしにとっては、もってこいの“企画”である。

毎度のように、ダボハゼのごとく二つ返事で快諾した。

合コンの自己紹介タイムで必須な3つの項目

認定講座の当日13時40分ごろ、会場として指定された渋谷区の某文化センターの会議室に行ってみると……いかにも「セミナー教室」といった雰囲気の飾り気がない中規模程度の部屋に長テーブルが数台並んでいる。

受付にはサッパリとした風貌の爽やかなおニイさんが。「こんにちは~」と微笑みかけ、いきなりトランプの束からその一枚を引くように指示された。その図柄で席を決めるという、いかにも合コンチックな段取りである。

テーブル上には、簡単なプロフィールなどを記入する一枚の用紙と今日のスケジュール表、それに認定講座用のテキストが置いてあった。テキストをパラパラとめくると、100P近くにもおよぶ、けっこうしっかりとしたつくりで、相当に細かい文字で「歴史」から「ノウハウ」「アフターフォロー」にいたるまで……「合コン」に関するさまざまな情報がびっしりと列記されている。

まだ開講予定時間の14時までは20分近くあるので、プロフィール用紙に必要事項を記入する。少々早く着きすぎたのか、他の “受講生” もまばらでしかない。

難解そうな折れ線グラフまでが記載されている「認定講座用テキスト」。まるで、なにかのビジネススクールのよう?

プロフィールを記入しようとしたら……その項目は「名前(本名ではなくニックネーム)」と「職業」と「休日の過ごし方」の3つだけだった。

「ダラダラと長すぎる自己紹介は、合コンでは禁物!」

……といった配慮によるものなんだろう。すでに “擬似合コン” は開催されているのだ。

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プロフィール用紙に記入!

のちにテキストの「自己紹介」のページを読んでみると、この「名前(=ニックネーム)」「職業」「休日の過ごし方」は、合コンの自己紹介における “テッパンの3点セット” であるという。

大きな声でハキハキと、簡潔に……。「ニックネーム」は「◯◯ちゃん」「◯◯リン」「◯◯っち」……と、なるべくリズミカルで可愛らしい響きのあるものがオススメ。

「職業」に関しては「簡潔に」とは言えども「サラリーマンです」「OLです」……だけの素っ気ないソレだと、初対面の相手の印象には残らない。業種や勤務地……など、できるかぎり具体的な情報を開示することを心がける。

あと、「趣味」ではなくあえて「休日の過ごし方」としているのにも、「このほうが回答がぼやけづらくなる」との狙いがあるらしい。「趣味は映画です」で終了してしまうのではなく、たとえば「映画が好きで、前の休日は銀座で庵野監督の『シン仮面ライダー』を観てきました」と、自己紹介内に「銀座」「庵野監督」「仮面ライダー」といった “検索ワード” を一つでもたくさん盛り込むことがポイント……なのだそう。

ふむふむ、初っ端からちゃんと勉強になるじゃないか……と、自身の記入欄に

名前(ニックネーム):ゴメス(ゴメちゃん)
職業:恵比寿の「喫茶室ル◯アール」を根城としているフリーライター兼イラストレーター
休日の過ごし方:草野球(週3ペースで年間約80試合。プロの2軍と同じくらいの試合数をこなしています)

……みたいなことを書き連ねているうちに、場内も徐々に賑わいはじめてきた。

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認定講座開始前に『一般社団法人 日本合コン協会』会長の田中絵音さんとツーショット

会場横には絵音さんの著書がズラリと並んでいる

「合コンマスター」とは、なにをするヒトたちなのか?

「第7回 合コンマスター認定講座」の参加メンバーは9人。年齢は30代前半から40代といったところで、うち女性は二人。おそらく “たった一人” であろうアラカン世代のわたしからすれば、「まだまだ新しい男女の出会いをアグレッシブに求めるだけの熱量を残す若人たち」であり、ある意味微笑ましさすら感じたものだが、ここでいくつかの素朴な疑問が頭をよぎる。

「このヒトたちは合コンマスターの資格を取得して、一体なにがしたいのか?」


「合コンの手練れ者になりたいのか?」


「それとも、合コンを仕切る側にまで立ちたいのか?」


「そもそもこの資格に実際的な効能はあるのか?」

 「合コンの手練れ者」になりたいだけなら、「ボク…じつは合コンマスターって資格持ってるんですよ~」の一言は、それなりの “会話のツカミ” にはなるだろう。

しかし、「合コンを仕切る側にまで立ちたい」──すなわち「デキる幹事」を目指すのなら、わたしの意向とは多少の食い違いが生じてくる。「幹事」になってもいらん苦労が増えるだけ。わたしは、他人が開催した合コンにひょっこりと参加して、ちゃっかりと “漁夫の利” を得るほうが大好きだからだ。

ただ、同認定講座はどちらかと申せば「デキる幹事」──(願わくば?)いずれは「街コン」クラスの大規模な合コンを “ビジネス” として仕切れる人材を育成することを目標としている様子であり、「だったら自分は絶対無理!」と、早くも家に帰りたくなる。が、まあいい。せっかくスケジュールを削って参加したのだから、イケるとこまでイッてみよう……。

明治時代にまで遡る(?)「合コン」の歴史

14時ほぼちょうどに「一般社団法人 日本合コン協会」の会長として、講師を務める田中絵音さんが壇上に立つ。よく通る声に形状記憶合金で型取られたかのような揺るぎない笑顔は、いかにも “百戦錬磨” といった趣(おもむき)である。

今日の参加メンバーおのおのが自己紹介(※一人MAX約2分。この鉄則は “本番” でも同様)を済ませたのち、 “会長” の絵音さんからの挨拶が。

「日本特有の出会い文化『合コン』を万国共通の言葉にし、みんなで国内のみならず海外にまで合コン文化を浸透させるよう、頑張りましょう!」

……と、掛け声も勇ましい。

ちなみに、協会が掲げる「合コンの定義」とは、以下のとおりであった。

【1】(原則として)恋愛的な出会いを目的とする

【2】男女各1名ずつ幹事を立てる

【3】男女が均等の人数で集まる

わたし個人としては「別に恋愛目的じゃなくても…ねえ?」「わざわざ幹事を立てなくても、もっと自然なかたちで寄り集まっても良いのでは?」「無理に人数を揃える必要ってある?」……なんて “反論” はなくもなかったのだけれど、これくらいガチガチな縛りがあったほうが、よりセレモニー的な装いになる……ような気もしなくはない。とりあえず、ここらへんは “保留” にしておく。

自己紹介タイム。

絵音さん曰く、「合コン」の歴史は意外と古く──そのルーツは、明治時代の旧制高校(帝国大学の予備教育を行う高校)の学生が「company(カンパニー=集まり)」の隠語として、「コンパ」という造語を使ったのがはじまり……とされている。

当初は男性の学生同士でパンや菓子を持ち寄って語らう、いわば「男子会」であったが、1970年代初期には学生運動が沈静化されたことにより、大学に入学する女子学生が増加──そこで男女の交流の場として「合同コンパ」という言葉が生まれる。

その後、「合同コンパ」が「合コン」と略語化され、「お見合いパーティ」「カップリングパーティ」「異業種交流会」……ほか、ときには名前を変えながらも「合コン」の歴史は続き、昨今では「街コン」「趣味コン」「Jコン(=自衛隊合コン)」などの「職業限定コン」etc.……と細分化が進み、2020年代はコロナ禍の影響で「オンライン合コン」が “新たなスタンダード” となりつつある……。

こうやって「合コン」の社会貢献や定義や歴史を深掘りして学んでいると、まるで文化人類学だかなんだかの講義を受けているかのような充実感が漲(みなぎ)り、「合コンマスター」なる資格の取得にも「それなりの意義があるのではないか」と思えてくる……。

そして、約1時間の “講義” を終え、いよいよ「認定講座」は “実践編” へと突入する。

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ホワイトボードもフル活用!

大学時代の(試験前だけの)授業風景を懐かしみながら、要点はすかさずメモ! 案外几帳面で勤勉なゴメス

仮想の「イベント合コン」を各参加メンバーがプレセンテーション!

 “実技編” の第一講は「イベント企画」──実際に受講者たちが立案した「イベコン(=イベント合コンの略)」企画を順次ローンチし、それらに絵音さんが感想を述べていくというスタイルである。

・合コン人数の黄金比率は3:3
適度にキャラが分散し、同性グループが分裂しづらい

・スタート時間は19:30がベスト
「終電23時半」から逆算して、一次会を2時間、移動に30分、二次会は1時間半…と設定する

・男性は「チームワーク」、女性は「仲が良すぎない」ことがポイント
女性チームの仲が良すぎると内輪話や足の引っ張り合いになることも多い…のだとか?

・円卓◎ 座敷×
円卓はどの角度からでも相手の顔が見える。座敷はブーツからコーデしている女性もいるため、事前にアナウンスを

・会費は前もってメンバー全員に伝える
会計の段階でモメるのは最悪!

・ダメな合コンでも「わらしべ合コン」になる可能性もあるため気を抜くな!
わらしべ合コン=合コンで知り合った男女がまた別の合コンを開催すること

……と、「合コンの基本の基」を絵音さんに叩き込まれてから(※わたしにとっては “目からウロコ” な教えもいくつかあったのだがw)、各メンバーのプレゼンがはじまる。

寿司職人を自宅に呼んで男女で寿司づくりの体験も……というラグジュアリーな「寿司合コン」から、プロレス好きだけを集める「プロレス合コン」に、「季節のスイーツ合コン」「高尾山合コン」……まで、さすが「マスター」を志す者たちの集まりだけあってか、ユニークなアイデアが目白押し!?

わたしがプレセンテーションしたのは「野球合コン」──店内にバッティングスペースが設置されている中目黒の某野球バーで開催し、「ゲッツー」「タッチアップ」「スクイズ」の3ワードの意味がわからない女性は(※男性も)参加不可。さらにスコアがつけられる女性は会費無料といった内容で、他メンバーの反応は「ややウケ」いったところ?

だが、「参加者のターゲットを絞るのはいいことです」と絵音さんからは褒められた。ほんのりうれしくなった。どうやら絵音さんは「褒めて伸ばす」タイプであるようだ?

ゴメスのプレゼン

「カラオケの盛り上げ方」にもマニュアルが!?

“実技編” の第二講は「ゲーム・カラオケのシミュレーション」──講座開始前に配られたトランプの図柄で席替えをしてから2グループに分け、まずは合コンには欠かせない(?)「ゲーム」を “実習” する。

けれど、いきなり「さあ、みんなでゲームをやりましょう!」って課題を出されても……ねえ(笑)? アルコールが入っていないせいか、誰もがぎこちない表情のまま固まっている。しょうがないので、わたしの得意ネタの一つである「ちょっとだけエロい山手線ゲーム」で先陣を切ることにした。

(なんとなくエロい響きのする言葉を言い合う)

……そこそこに “場が温まる” くらいには盛り上がったのち、次は「カラオケ」の “実習” へと移る。協会が推奨する「カラオケの盛り上げ方」がかなり面白かったので、そのすべてを以下に箇条書きしておこう。

①曲がはじまったら、イントロで「この曲好き〜!」と大きな声でつぶやく

②1番のAメロは、リズムに合わせて首を軽く左右に振る

③1番のBメロ終わりに、「あ〜ヤバイ!」とお腹付近を両手で押さえ、足をバタバタさせてテンションを高める

④1番のサビは、首を左右に振りながら手拍子をする

⑤2番のAメロは、1番のときよりも激しく首を左右に振る

⑥2番のBメロになったら、左右の首振り+縦振りも加える

⑦2番のBメロが終わるころに、テンション高く「イイ曲〜!」と言って立ち上がる

⑧2番のサビからは、一緒に口ずさみながら手拍子をして、体でリズムに乗る

⑨曲が終わった瞬間に、歌い手とハイタッチ!

コレって一歩間違えたら、単なる危ないヒトじゃないのか(笑)!? 「合コンマスター」になるのも大変だ。

合コンで「幹事」を務めるメリット

約4時間におよぶカリキュラムを修了し、晴れてわたしは「日本合コン協会最年長の認定合コンマスター」の称号と資格を取得した。

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「協会最年長の合コンマスター」が誕生!

証明書のようなものとプラスティック製の会員カードもいただけた。協会のロゴは自由に使用できて、名刺などに印刷してもOKらしい。

証明書のようなもの
会員カード

さて! ここで、先に書いた一つの根本的な疑念が再びわたしを悩ませる。そう! わたしは「合コンを仕切る側にまで立ちたい」わけでは決してなく、なるべくは「幹事」という役割を避け、他人が開催した合コンにひょっこりと参加して、ちゃっかりと “漁夫の利” を得たいのだ。

そんなわたしに絵音さんはこう諭す。

「幹事をやれば、異性幹事との接点も多くなるし、幹事ならではの信頼感も生まれるし、仕事でもいざというときの “プレイングマネージャー” としてのスキルや人間力も高まります。嫌がってばかりいないで、積極的に幹事役に回るよう努めましょう!」

承知いたしました! 

たしかに、コロナ禍もようやく落ち着きを見えはじめてきた昨今──合コンめいたイベントも、ちまたではじわじわと開催されつつあるし、そうした兆候がよりこのまま活発になってくれば……「合コンマスター」のレゾンデートル(存在意義)も、次第に増してくるのかもしれない。

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 『第7回 合コンマスター認定講座』で「合コンマスター」になった頼もしき “同志” の皆さま(※媒体掲載不可のメンバーは除く)

田中 絵音(たなか・えのん)

東京都生まれ。タレント時代より2000回以上の合コンに携わり、2012年5月8日の「コンパの日」に「一般社団法人 日本合コン協会」を設立し、会長に就任。国内外での合コンイベントや商品のプロデュース、「合コンマスター」の資格認定講座などを行う。また、男女問題に精通する「恋愛専門家」としてメディア出演も多数。著書は6冊。プライベートでは一児の母。

「一般社団法人 日本合コン協会」とは
「合コンは日本の文化」「合コンを万国共通の言葉に」「合コンで日本を元気に」を3大モットーに、2012年5月8日の「コンパの日」に設立。「結婚につながる合コン!」をテーマに、合コンによる男女の出会いを応援。イベント・商品プロデュース・合コン主催者のための資格講座など、幅広い活動を行っている。

公式サイト:723|Vithmic Model Agency
※次回の「合コンマスター認定講座」は6月24日に開講予定! 詳細はHPより

取材協力:一般社団法人 日本合コン協会

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文筆家・イラストレーター
山田ゴメス

大阪府生まれ。年齢非公開。関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション・学年誌・音楽&美術評論・人工衛星・AI、さらには漫画原作…まで、記名・無記名、紙・ネットを問わず、偏った幅広さを持ち味としながら、草野球をこよなく愛し、年間80試合以上に出場するコラムニスト兼ライター&イラストレーター。『麗羅』(漫画原作・作画:三山のぼる/集英社)、『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版)、『「モテ」と「非モテ」の脳科学~おじさんの恋はなぜ報われないのか~』(菅原道仁共著/ワニブックスPLUS新書)ほか、著書は覆面のものを含めると50冊を超える。特に身体を張った体験取材モノはメディアからも高い評価を得ている。2019年、HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)カウンセラー資格取得。2020年、温泉マイスター取得。2022年、合コンマスター取得(最年長)。
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