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Interview

【キーマンと気ままに、クルマ放談】#09

10年連続人気No.1。みんなに好かれる「メルセデス・ベンツ」のファン化戦略

author: 若林敬一date: 2023/11/20

自動車業界に精通したオート・アドバイザーの若林敬一が、気になるクルマメーカーのキーマンと対談する連載企画。今回は東京・六本木にある「メルセデス ミー東京」で、メルセデス・ベンツ日本 マーケティング/O2O推進部ゼネラル・マネージャーの長谷川孝平さんにインタビュー。長年、世界のクルマメーカーの王者として君臨し続けてきたメルセデス・ベンツ。そのラグジュアリー・ハイブランドとしての強みと今後の戦略についてマーケティング視点で聞いてみた。

僕ら世代でも入りやすいカフェ併設の直営店

若林 長谷川さんは現在マーケティングをご担当されていますが、主にプロモーションを担っているということでよろしいでしょうか。

長谷川 はい。私は新卒でメルセデス・ベンツ日本に入社して、最初は品質管理、それからドイツ赴任や社長室でアシスタントなどを経験して、2年前からマーケティングを担当しています。

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若林 具体的にマーケティングはどのような方針で進めているのでしょうか?

長谷川 メルセデス・ベンツのマーケティング・プロモーションというと、これまでは媒体への宣伝広告が中心でしたが、現在はデジタルの施策を強化。マーケティング部内にお客様のデータ管理をする専用部門を持つなど、「One to One」のデジタルコミュニケーションを深めていこうとしています。

若林 それはつまり、一人のお客様の「ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)」を意識していくということでしょうか?

長谷川 もちろん、ライフタイムバリューは強く意識しています。我々は2通りのお客様がいると考えていて、ひとつは、長年メルセデス・ベンツを乗り継いできたロイヤルのお客様です。そういう方々は、デジタル化がいくら進んでも、やはり核となるのは販売員との対面コミュニケーションです。販売員が豊富な商品知識で丁寧に接客することが、どれくらいお客様の満足度を上げるかはしっかりデータでもチェックしています。

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長谷川 もう一方が新規のお客様ですが、こちらはデジタル中心のOne to Oneコミュニケーションを積極的に展開しています。ここ六本木も含めて、全国に4カ所あるブランドストア「メルセデス ミー」なども活用して、より多くのお客様との接点を広げていきたいです。

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「メルセデス ミー」は、2011年にオープンした「メルセデス・ベンツ コネクション」というブランド情報発信拠点が前身です。レストランやカフェを併設した空間にクルマを展示し、メルセデス・ベンツのブランドに気軽に触れてもらう機会をつくろうとスタートしました。その役割は現在の「メルセデス ミー」にも引き継がれ、より多くの方にブランドを知って体験してもらえる場となっています。

ONE PIECEともコラボ。顧客層に合わせたアプローチ

若林 カンパニービジョンは、「メルセデス・ベンツ 最も愛されるブランドへ」です。このメッセージについても解説をお願いいたします。

長谷川 実はこのカンパニービジョンを策定したときに私は社長室所属でした。弊社のマネジメントトップ層の思いとしては、販売店を含めた日本法人としての一体感を強め、お客様を中心としたビジネスをさらに発展させたいというものがありました。そのためのひとつの軸として、「最も愛されるブランドへ」というワードが生まれたのです。

背景としては、小型車のAクラスの発売がありました。新規のお客様にとって、メルセデス・ベンツ販売店はどうしても敷居が高いところがある。そこで我々のほうからお客様と接点を持てるような空間を作ろうということで、カフェなどを併設する「メルセデス・ベンツ コネクション」へとつながっていきます。

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長谷川 メルセデス・ベンツというと、高級で大きなクルマというイメージが強いかもしれませんが、それに限らず自分たちのライフスタイルに合うクルマもあることを知っていただく。そのためにカンパニービジョンを策定し、カフェを併設する施設も展開するというような、マーケティング戦略を続けていました。

若林 2022年の夏に行ったアニメの「ONE PIECE」とのコラボ、三井アウトレットパークへの出店なども、その戦略の一環といえそうですね。

長谷川 その通りです。大事なのは、誰に「最も愛されるブランド」となるのか、です。それは我々のブランドを好きになってくださる方々であり、お客様です。そこはブレないで、一切の妥協もしないということは大事にしていますね。

若林 一方で2022年に発売したのが、世界限定100台の「メルセデス・マイバッハ GLS 600 4MATIC Edition 100」です。国内販売価格は3570万円で、超富裕層がターゲットのクルマですよね。このような超富裕層と新規顧客の間口を広げるのを両立するうえで、何か工夫している点はありますか? 

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長谷川 現在、各販売店には、販売員のほかにプロダクトの説明に特化した「プロダクトエキスパート」、電気自動車全般に精通した「EQエキスパート」という人材を配置しています。その流れをさらに発展させて、トップエンドのお客様専用スタッフも今後は検討していきたいですね。

特別なお客様に対しては特別な空間による体験を演出することも重要です。そのため販売店も、青山と横浜には電気自動車専用ショールーム、銀座にメルセデス・マイバッハ、メルセデスAMG、Gクラスに特化したハイエンドモデル専売拠点を設けて、空間演出の差別化を図っています。

世界初のMercedes-EQ 専売拠点となる「Mercedes-EQ Yokohama」

若林 結果として日本の輸入車では、10年以上NO.1ブランドとしての地位を築いています。まさに、「最も愛されるブランド」を体現しているということですね。

長谷川 もちろん、まだまだやらなくてはいけないことも数多くあります。お客様にさらなる満足を感じていただけるよう、しっかりとデータ分析をして改善を繰り返す。それによってより高みを目指していきます。

予約が4倍になった電気自動車「1日試乗キャンペーン」

若林 電動化戦略についてもぜひお伺いしたいです。メルセデス・ベンツの電気自動車は現在7車種、急速にラインナップが充実していることからも、「電動化シフト」への強い決意を感じています。

長谷川 先日も弊社会長のオラ・ケレニウスが来日し、トップ直々にEQSUVの発表を行いました。そこからも会社としての電動化シフトへの本気度をご理解いただけると思っています。

若林 電気自動車は、ほかと差別化した特別なマーケティング戦略があるのでしょうか。

長谷川 メルセデス初の電気自動車「EQC」の販売当初は、メルセデス・ベンツの電気自動車という認知拡大を目的にテレビCMなどを展開しましたが、現在は次のフェーズに移っています。日本特有の課題である「充電」への不安をどう解消するかというのが課題となっています。

その解決策として現在展開しているのが、「1日試乗キャンペーン」です。販売店の周りを1時間弱試乗するだけではわからない、充電についてのあれこれをご自身の生活空間で確認していただくためのキャンペーンです。このキャンペーンが非常に好評で、普通の試乗に比べて4倍も申し込みがあります。

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若林 充電への不安を具体的に確認して払拭したり、逆に気をつけるべきポイントにも納得したうえで購入できますね。

長谷川 メルセデス・ベンツのお客様は、年間走行距離が約7000~8000kmほどで、月平均1000km以下です。満充電時の走行距離が約500kmとすると、単純計算で月2回充電すればOKということになります。そういう細かい部分も、1日試乗をする中でご理解いただいています。

ハードとソフトを強化し、愛されるブランドへ

若林 これまで伺ってきたように、トップブランドであることへの自信は、そこで働く人たちのモチベーションにも大きな影響を与えているのではないでしょうか。

長谷川 ブランドと商品、それを支える技術への確固たる自信は大きく、それが我々の強みだと自負しています。ハード面だけでなく、ソフトでもトップブランドとしてのクオリティを強化。ソフトとハードの両輪を回すことで、厳しい競争を勝ち抜き、強いブランド力をキープし続けていきたいですね。

若林 ソフト面とは具体的にどのようなことを指すのでしょうか。

長谷川 「MBUX(Mercedes Benz User Experience)」といってナビゲーションシステムにエンターテイメントを加えたインフォティメントを強化しています。加えて自動運転、ボディ&コントロール(自動車制御)、充電、コンフォート(快適性)の4つを追求し、ハイクオリティなソフトとしてお客様に提供していきます。

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若林 ハード、ソフトの両面を強化し、ますます多くの人に愛されるラグジュアリーブランドへの成長を目指しているんですね。

長谷川 「最も愛されるブランドへ」という道筋のいちばん中心にあるのがお客様です。お客様を第一に考えてあらゆるスタッフが行動することで、目指すべき「最も愛されるブランド」を実現できるということを常に意識しています。

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オート・アドバイザー/R-BRAND株式会社 代表取締役
若林敬一

ケロッグ経営大学院MBA、Marketing&Finance をメジャー。フォード本社広報やマツダのグローバル広報部長、本部長などを歴任。その後ボルボ・カー・ジャパン、ジャガー・ランドローバー・ジャパンのマーケティング・広報ダイレクターに転じた。2021年に独立し、R-BRAND株式会社を設立。マーケティングおよび広報の視点からコンサルティングを行う。
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