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IFA2023、日本は“失敗したくない”を抜け出せるのか?

世界に出よ!欧州家電業界が日本のブランドに贈る言葉

author: 山本 敦date: 2023/11/26

9月にドイツの首都ベルリンで世界最大級のエレクトロニクスのイベント「IFA 2023」が開催されました。毎年IFAを取材してきた筆者が見たヨーロッパのエレクトロニクスの「勢い」を、IFAを主催する関係者のコメントとともに伝えたいと思います。

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ドイツ・ベルリンで毎年秋に開催される世界最大級のエレクトロニクスのイベント「IFA」を取材。世界中から5日間のイベント期間中に18万を超える来場者が集まりました

欧州のエレクトロニクス市場が活気にあふれる理由とは?

私はジャーナリストとしてIFAを20年近く取材してきました。2010年代には日本の主要なエレクトロニクスメーカーがIFAに大きなブースを構えて、総展示面積16万平米のメッセ・ベルリン会場の中で強く存在感をアピールしていました。

2023年は日本からは両手の指で数えきれるほどの出展しかなく、ソニーやパナソニックも一般来場者が訪れるブースをつくらなかったことがとても残念でした。

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ソニーが2019年のIFAに出展したブース。一般のコンシューマーからトレードビジターまでいつも大勢の来場者で賑わっていました

世界各所ではまだ、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックのダメージから立ち直る道を模索しています。さらに2022年の春にはロシアによるウクライナ侵攻が始まり、日本からはヨーロッパの経済と社会の先行きが不透明に感じられてしまいます。ヨーロッパ市場に注力することは、今はリスクが大きいという判断に至ることに道理はあると思います。

しかしながら実際のところ、ヨーロッパのエレクトロニクス市場は日本と同様にコロナ禍の間にもいわゆる「巣ごもり需要」による好景気を迎えました。現在はエネルギー価格の高騰を逆手に取って、長く経済的に使える「サステナブルな家電」に対する市場の関心が向いたことで、クリスマスセールには商品の売れ行きが再び活発化しそうです。

IFA主催者に聞く“日本企業の印象”

メッセ・ベルリンの会場で、イベントを主催するIFA Managementのリーフ・リンドナーCEOに今年のIFAの手応えを聞きました。

IFA Managementの新しいCEOに就任したリーフ・リンドナー氏。来年はIFAが100周年のアニバーサリーを迎えます。イベントをどのように盛り立てるのかリンドナー氏の手腕に注目が集まっています。

今の日本のエレクトロニクスメーカーに対する印象について、リンドナー氏は「先進的な技術を持ちながら、現在は世界の市場に打って出ることに対して少し自信を失っているように見える」と語っていました。

私は今年のIFAを取材して、リンドナー氏とは少し違う印象を受けました。日本のメーカーは発想と技術力、そこから生まれる製品やサービスに自信があるからこそ、世界に打って出たときに「失敗したくない」のだと思います。

世界にはさまざまな考え方を持つ人がいます。同じディスカッションのテーブルについたら、どんなに下手な外国語でも胸を張って主張した者の意見が通ります。ビジネスにおいてもリスクはなるべく未然に避けることが賢明ですが、ヨーロッパのエレクトロニクス市場に吹いている「風」を読み違えてしまうと、日本のメーカーがこのまま存在感を失ってしまう怖さを、私は今年の取材を通して強く感じました。

ドイツでは中小企業のまじめなものづくりが革新を生んできた

IFAが開催されるドイツではいま人々の間でどのようなテクノロジーのトレンドが関心を集めているのでしょうか。リンドナー氏に聞きました。

「世界で最も注目されているのはアメリカから発進される最先端のテクノロジーです。アメリカの場合は新しいものを生み出そうとする力、つまりイノベーションがテクノロジーの源泉ですが、ドイツは少し違います。ドイツでは『Mittelstand(ミッテルシュタント)』、つまり中小企業の創造力や革新性に、いつの時代も最大の関心が集まります。価値ある製品やサービスを粘り強くつくり、信頼を勝ち取ることに多くのミッテルシュタントは情熱を注いでいます。その中から世界に名を馳せる企業やブランドが次々と生まれてきました」

ドイツ南部の都市ミュンヘンからIFAに出展したRitterwerk。調理器具を専門に扱うドイツのミッテルシュタント。新しく起ち上げたブランドのBeezerでは、ワインのボトルや清涼飲料水の缶を瞬間的に冷やせるクーリングデバイスを開発。数多くのスタートアップが集まるIFA NEXTの特別展示に参加して大きな成果を得ていました。

このようなドイツ人の気質は、日本人のものづくりに対するこだわりに呼応するのではないかというリンドナー氏は「だからこそ、来年のIFAに日本から多くの出展があることを心から願っている」と呼びかけています。

2024年のエレクトロニクスのトレンドは? 競争を勝ち抜くヒント

今年のイベントの成果を踏まえて、来年以降にヨーロッパで注目を集めそうなエレクトロニクスのトレンドについて、IFA Managementのセールス・ディレクターであるルパート・アダムス氏に話を聞きました。

インタビューに答えてくれたIFA Managementのセールス・ディレクター、ルパート・アダムス氏

「来年もやはりサステナビリティに関連する動向から目が離せません。コンシューマーにとって『節約』にも結びつく大きな関心事だからです」

パンデミックが明けて、ヨーロッパでも人々が外に出かける機会が増えました。旅行も楽しまれるようになり、2022年の頃から巣ごもり消費の勢いは少しずつ落ち着いています。アダムス氏は「だからこそ、この時期にサステナブルなものづくりの方向性をしっかりとアピールできた企業が、これからの時代の競争を勝ち抜けるはず」とも語っています。この先、各コンシューマーの家庭に訪れるエレクトロニクス家電の「買い換えサイクル」に、サステナビリティや節電・省電機能を特徴に掲げる新製品をぶつけることができるメーカーやブランドに勝機があるとアダムス氏は考えているようです。

来年のIFAもベルリンで9月上旬の開催を予定しています。アダムス氏が期待する「2024年のエレクトロニクスのトレンド」を聞きました。


「スマートフォンに関連する技術やサービスは既に成熟期を迎えています。人々はスマートフォンに代わって人々の生活をサポートする、次世代の新しいデジタルデバイスに関心を向けつつあります。そのようなデバイスが単体で現れる可能性もありますが、私はスマートフォンと連携するウェアラブルデバイスにも、次世代の主流を担うチャンスがあると見ています」

アダムス氏は、各社のサステナブルな取り組みに「比べながら触れて、理解できる場所」の大切さを説いています。エレクトロニクス市場をリードする企業が、メッセ・ベルリンに集まり、それぞれのコンセプトと技術力を華やかに競い合うIFAが理想的な機会であることは言うまでもありません。私も日本の企業が多数参加する来年のIFAで、またエレクトロニクスの最先端に触れてみたいと思います。

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韓国のサムスン、LGもIFA2023で「サステナブルな取り組み」を強烈にアピール。欧州の来場者に製品やサービス、企業の取り組みについて強いインパクトを残しました。

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スマートエレクトロニクス・ライター
山本 敦

オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はオーディオ・ビジュアルからIoT、ウェアラブルまでスマートエレクトロニクスを幅広くカバー。ヘッドホン・イヤホンは毎年300を超える新製品に体当たり中。国内・海外スタートアップの製品やサービスを多く取材、開発者の声を聞くインタビューなどもしています。
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