MENU
search icon
media
Beyond magazineでは
ニュースレターを配信しています
検索
Tags
  1. TOP/
  2. ANNEX/
  3. メルセデス・ベンツの持続可能な進化と未来への対応
ANNEX

メルセデス・ベンツの持続可能な進化と未来への対応

author: Beyond magazine 編集部date: 2024/01/26

メルセデス・ベンツは自動車業界での伝統的な存在でありながら、新しい時代に挑戦し続けている。燃費向上や電動化など、持続可能な未来に向けた取り組みを積極的に推進し、車両だけでなく製造プロセス全体においてもカーボンゼロを目指し、さらに、自動車業界のトレンドを読み取り、高齢者のモビリティをサポートするための新たなアプローチにも挑戦している。

ここでは昨年行われた東京モビリティショーで、メルセデス・ベンツが持続可能な進化への取り組みと、大企業が新たな挑戦にどう立ち向かっているかなどについて、メルセデス・ベンツ日本の社長である上野金太郎氏が、自身の出身大学の後輩である現役大学生2名のユース目線の質問に答えてくれた。

変化するモビリティの未来への対応

ーー今回、東京モーターショーからモビリティショーへとテーマが変わりました。ドイツを代表する自動車メーカーであるメルセデス・ベンツにとって、将来の「モビリティ」とはどのようなものとお考えでしょうか?

メルセデス・ベンツ日本株式会社 代表取締役社長 兼 CEO上野金太郎さん(以下、上野さん):メルセデス・ベンツ内ではケイス(CASE)という言葉が頻繁に使われています。Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric。この言葉は一般的にも使われ、今後のカーライフスタイルの変化を表しています。

車と人が今後生活の一部分でどういうふうにつながっていくのか、さらに高齢化社会の日本では特に自動運転はどう進化するのか? シェアリング、電動化などは? コロナ禍でシェアリングは一服してしまった感じはありましたが、今後、車に限らず自転車、スクーター、いろいろな乗り物でモビリティ界全体をどう支えていくかが、我々の考えていることです。

fade-image

上野 金太郎(うえのきんたろう)。メルセデス・ベンツ日本の代表取締役社長兼CEO。早稲田大学社会科学部卒業。1987年、メルセデス・ベンツ日本に新卒で入社し、営業、広報、ドイツ本社勤務などを経て、2003年に取締役、2007年に副社長に就任。2013年に社長兼CEOに就任

メルセデス・ベンツは一般的な乗用車はもちろんのこと、電動スクーターも作っておりますし、シェアリング事業も行っています。電動化は今まさにこのモビリティショーでも話題の中心ですね。お二人はご存知かどうかわかんないですけれども、メルセデス・ベンツは138年前に車を発明した会社なんですよ。だからこそ、今後の自動車モビリティの将来に対して先駆者として、安全性や技術の面で常にフロントランナーとしてやっていけるか、会社の一つの方向性、今よく使われているパーパス「ファースト・オン・ザ・ワールド」を変えていくぐらいの高い意識で、自動車業界、モビリティ業界を牽引していこうと考えています。

東京モーターショーがジャパンモビリティショーに名前を変えたことは、世の中の流れがモビリティの方に向かって傾斜したこともあるので必然だと思います。これまでの車とオートバイという限られた乗り物だけのショーではなく、例えば空飛ぶ自動車なども含めた未来の可能性を探るためのショーになったと感じております。今まではどちらかというと車好き、バイク好き、という人たちが多く集まるショーでしたけれども、モビリティショーと名前を変更したことで、一般の方が入れるオープンデイには、これまで車にあまり興味がなかった人などが、実はモビリティというものをもう一度見直すために来てくださるのではないかというのがすごく楽しみです。

fade-image

メルセデス・ベンツのイノベーションへの挑戦

ーー自動車を発明した会社として有名なメルセデス・ベンツですが、新しいものを生み出そうとするとき、会社の中では、従業員の皆さんはどのようにお仕事をされているのでしょうか? 

上野さん:自動車は一般的にはタイヤが4つ付いていて、ハンドルが付いているという固定観念があるのですが、そのうち自動運転車が将来的に、車に抱いていた人々の固定観念を変え、新たな移動手段の形となっていくことでしょう。これからモータリゼーションの新たなトレンドをずっと勉強しています。それに伴う人間の新たな行動というのを常に模索しているんですね。

会社に就職してくる職種の方々も変わってきました。これまではどちらかというとエンジニアが多く入ってきていましたが、今はプログラマーのような人たちが多く就職をしてくるので、車メーカーとしてハードウェア開発しますが、ソフトウェアもかなり開発するようになりました。

fade-image

実は、私たちは自動車のオペレーションシステム(OS)を今までは外部から調達していました。しかし、コロナから学んだ教訓の一つとして、これからはそれを内製化していく予定です。依存から脱却し、自己完結型の生産を目指すことは、将来的にも重要です。

また、EVの普及により、部品点数が減り、設計が単純化される傾向にあります。このデジタル化の流れは、車の設計におけるオイルの使用減少や、必要な部品の削減にも繋がっています。これらの変化は、新たな企業が自動車業界に参入しやすくなる環境を生み出していると考えています。

伝統企業の革新への道

私たちは「昔からやっている自動車屋」という考え方に固執するつもりはありません。2年後や10年後には、現在のやり方が通用しなくなることもあります。そうした固定観念に縛られず、常に次のステップを目指しています。私たちにとって重要なのは、技術の革新だけでなく、安全性の向上とサステナビリティの追求です。

電動化への移行は、製品だけでなく、工場から販売店に至るまでのカーボンゼロへの取り組みを含む大きな挑戦です。これは社員の意識にも深く根付いています。

fade-image

大企業の新たな挑戦

ーーメルセデス・ベンツのような伝統的な大企業は過去の成功体験があるので、なかなか新たなことにチャレンジしづらいという傾向があると想像するのですが、そういうところへの対策はどのようにしているのでしょうか?

上野さん:とてもいい質問だと思います。結構有名だった会社が突然勢いをなくしてしまう、一世を風靡したものがいきなり飽きられてしまったり、違う世代に変わってしまった、ということはよく起こることです。そのような局面に直面しないよう、常に先を向く投資を継続する前向きな企業になることです。後ろを振り返ってばかりではなく、先々に何があって、これは当然失敗もあるでしょうし、損もするかもしれないけど、それをやることによって次のトレンドを探す、次の技術を見つける、次の世代、世界にマッチするようなことをやっていきます。

もちろん予想が外れることもありますが、138年間、メルセデス・ベンツとして残っているのは、これまでそういうことを怠らなかったからで、今後もちゃんと先々の時代や環境変化を読み取りながら、企業として行動していきたいですね。もちろんコアビジネスをしっかりと持ちながら、その傍らでしっかりとした次のステップの開発、講習をやっていく。これが全てだと思います。

fade-image

(左)川端準(かわばたじゅん)。2005年生まれ。早稲田大学⚫︎⚫︎学部1年生在学中
(右)平田静花(ひらたしずか)。20⚫︎⚫︎年生まれ。早稲田大学⚫︎⚫︎学部4年生在学中

時代を先取る企業戦略

ーー人間も企業も同じで、時代に応じて行動していくという感じですね。

上野さん:時代に応じるだけでは足りなくて、時代を先駆けていかないとダメなんじゃないかと思います。ですから、商品を作ったとして、そのヒット商品にただしがみつくのではなく、新たなヒット商品開発に向けて先行投資していく。次の世の中のトレンドをどうやって読んでいって、それに対応するような商売を考える。これを企業として常にやっていかなくちゃいけません。

売り方にしても同じで、メルセデス・ベンツは現在、商品在庫を開示して、オンラインでの販売を始めています。利用頻度はまだまだ低いですけど、将来的には各お店の在庫をリアルタイムに開示することによって、お客様には自分に合う1台を探してもらって購入してもらう。いずれは車もそういう買い方が普通になっていくのではないかと思います。Amazonがまさにそうですよね。ポチッとしたら家の前にも置いてあるみたいな。

fade-image

個人的に考えているのは、日本は今後高齢化社会が進んでいく中で、高齢の方は免許証を返納してくださいねという動きがますます強まっていくと思うのですが、自動運転技術をもっと向上されることで、そういう方々を救えるんじゃないか、ひいてはそのままお客さんとして次の車を購入いただけるのではないかと考えています。

日本は特にライドシェアの導入が法律の面で現状難しい状況ですけれども、そういう高齢者の方々を将来的に家に閉じ込めるのではなく、自動運転技術が発達すれば、車は最低限の音声入力で動くようになることが予想されるので、これまで通り外出していただけるような社会が実現できると思います。多くの方が自動運転の車に乗って行きたいところに行く世の中になれば、もしかしたら、いずれ免許証が必要ない日が来るかもしれません。

fade-image

持続可能な進化への取り組み

メルセデス・ベンツは自動車を発明したメーカーとして、これからも責務を果たしていきます。進化を止めるのではなく、これからも進化し続けます。例えばエンジン車の場合、燃費を1Lあたり10キロ、20キロ、25キロというように、永遠と可能性を追求し続けます。ただし、排気ガスなどで、地球を汚してまで燃費を伸ばすことは間違っています。汚れは構造上完全に無くすことはできませんが、最小限にすることは常に追求して行きます。

fade-image

電動化への取り組みは、私たちにとって大きな一歩です。2030年までに、市場の状況が許す限り、電動化を進めたいと考えています。これは2005年に定められた協定に沿ったものです。私たちの野心は大きく、それ以降にわたって、メルセデス・ベンツとしてこれを実現することが目標です。大志を持つことが重要で、時として偶然の成功に甘んじるのではなく、積み重ねられた技術を通じて効率性を高めることが私たちの戦いです。これをお客様には理解していただくよう努めています。

例えば、Gクラスのような人気車種を早期に電動化し、より高い性能を提供することを目指しています。これは私たちが誇るドイツの技術力の象徴であり、世界中のさまざまな視点を取り入れることで、さらなる革新を目指しています。

Interview&Text:川端準、平田静香

author's articles
author's articles

author
https://d22ci7zvokjsqt.cloudfront.net/wp-content/uploads/2023/03/001-EDIT2.png

Beyond magazine 編集部

“ユースカルチャーの発信地“をテーマに、ユース世代のアーティストやクリエイター、モノやコトの情報を届けるWEBマガジン。
more article
media
福岡市が「デジタルノマド」の聖地になりつつある理由。そして「AI PC」がもたらす変化
ANNEX
date 2024/11/21