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Interview

【キーマンと気ままに、クルマ放談】#10

新型SUVが若者にも人気。イタリアン・ラグジュアリーで人生を彩る「マセラティ」の魅力

author: 若林敬一date: 2024/04/28

自動車業界に精通するオート・アドバイザーの若林敬一が、気になるクルマメーカーのキーマンと対談する連載企画。今回のゲストは、イタリアの憧れブランド「マセラティ」からマセラティ ジャパン業務執行取締役・ジャパン ジェネラルマネージャーの玉木一史さんが登場。ブランドの歴史、そして日本マーケットでの展開について語ってもらう。

110年の歴史が創り出すイタリアン・ラグジュアリー

若林 イタリアのラグジュアリーブランド、マセラティですが、まずはその歴史について教えて下さい。

玉木 マセラティは1914年、イタリアのボローニャでマセラティ兄弟が創立しました。今年でちょうど110周年になります。マセラティブランドのこだわりは「イタリアン・ラグジュアリー」という言葉に代表されます。

3つしかない工場はすべてイタリアにあり、デザイン、研究開発、生産までを一貫してイタリア国内で行っています。

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「マセラティはかねてより、私にとって憧れのブランドでした」と語る玉木さん。日産自動車を経て2023年3月に同社業務執行取締役 ジャパン ジェネラルマネージャーに就任

若林 イタリアのものづくりの魅力はどのような点にありますか。

玉木 ご存知のようにイタリアはクルマだけでなく、ファッションやインテリア、食器など、さまざまな高級ブランドを輩出しています。そこにあるのは、洗練されたエレガントなデザイン、クラフトマンシップの精巧さです。それは我々がこだわっている点でもあります。

若林 具体的にデザインを進めていくうえで、どのようなことが重視されるのですか。

玉木 今の流行を追いかけるというよりは、50年後にも評価されるデザインを目指しています。イタリアで生まれたルネッサンスの作品は、その心を揺さぶるような美しさで現代でも愛されています。マセラティのクルマづくりでも長く愛され続ける美しさを追求し、細部にまで徹底的にこだわっています。

長距離とサーキット走行を両立するグラントゥーリズモ

若林 ラグジュアリースポーツカーの中でも、マセラティはグラントゥーリズモ、つまり長距離を走れるクルマというイメージが強くあります。

玉木 マセラティというブランドのポジショニングそのものが、長距離を快適に走れ、かつサーキットも走れるグラントゥーリズモです。1947年にロードカーを発売して以来、マセラティのすべてのクルマがグラントゥーリズモ精神にもとづいてつくられています。

若林 当然、長時間を過ごす車内のインテリアにも力を入れることになりますね。

※グラントゥーリズモは英語で言うと「グランツーリング」。大旅行(グランド・ツーリング)を意味する言葉で、19世紀に英国の貴族が子供の教育のために長距離を移動する習慣があったことに由来する。

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玉木 車内のデザインのキーワードは、ひとことで言えば「控えめなエレガントさ」です。それに加えて、快適に運転できるレーシング仕様のシート、高品質の音楽を楽しめるイタリア製のソナス・ファーベルの音響システムなど、車内の心地よさを実現する工夫が随所に感じてもらえるはずです。

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若林 試乗して感じたのが、「人の感性にやさしいクルマだ」ということです。

玉木 「長距離を運転していて疲れない」という視点を大事にしているので、それが乗っていてやさしいと感じる理由かもしれませんね。

もうひとつ、我々はクルマを売るというよりは、お客さまのライフスタイルや人生を彩るブランドであることを常に念頭に置いています。そういったお客さまに寄り添う姿勢も、若林さんがやさしさとして感じた部分かもしれません。

若林 「イタリンラグジュアリー」「グラントゥーリズモ」など、マセラティを形容するキーワードはいくつかありますが、それらが総合的に掛け合わさり、乗っていて気持ちがいいクルマになるのでしょう。

玉木 おっしゃるようにマセラティはエンジンパフォーマンス、イタリアン・ラグジュアリーの持つエレガントさと美しさ、そしてグラントゥーリズモなどが、絶妙なバランスで成り立っています。それこそが、マセラティが唯一無二のブランドである理由でもあるのです。

マセラティの思想を体現するトライデント

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若林 マセラティのエンブレムの三叉のもり「トライデントマーク」も、ブランドコンセプトを表しているのだと思います。

玉木 マセラティが生まれたボローニャの広場には、町の守護神としてネプチューンの像があります。そのネプチューンが手に持っているのが、三叉の槍を持つ「トライデント」なんです。トライデントマークの3つの槍が意味するのは、エレガンス、ラグジュアリー、ハイパフォーマンス。まさにマセラティの真髄といえます。

もうひとつ、面白いのが、ボローニャのネプチューン像はトライデントを後手にもっているんですね。

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イタリアのボローニャ広場にあるネプチューン像

その姿が、戦う意志がないと表明しつつ、ひけらかさないような威厳を醸し出しています。これはまさにマセラティそのもの。ゴリゴリの派手さというよりは、エレガントでラグジュアリー、しかし力強い威厳は、マセラティの思想の土台になっています。

若林 そういう思想に共感する方がお客さまとなっていくわけですね。

玉木 マセラティのお客さまは、ご自身の個性やライフスタイルへのこだわりが強く、マセラティをツールとしてそれを体現されています。パフォーマンスの高いクルマを乗りこなしたいという一方で、豊かな感性をクルマの芸術性を通して表現したいと考えている方が多いですね。

認知度アップの起爆剤となったSUV「グレカーレ」

若林 唯一無二のブランドとしての価値を確立しているマセラティですが、今後の戦略はどう考えているのでしょう。

玉木 2020年に「新しいマセラティの時代」を宣言し、スーパースポーツカー「MC20」の受注を開始しました。MC20では40年ぶりに、630馬力を出せる「ネットゥーノ」という自社開発のV6エンジンを搭載しています。

また、新たなゲームチェンジャーとして登場したのが、新型SUVの「グレカーレ」です。1000万円を切る価格で、市場に非常にインパクトを与えています。イタリアン・ラグジュアリーをより多くの方に知っていただく起爆剤になっているといえるでしょう。

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若林 それは日本マーケットでの戦略においても同じですか。

玉木 もちろんです。日本でグレカーレが納車されたのは2023年。まだ2年目なので、ご存知ない方も多くいます。ですから、これからグレカーレの認知度を上げることで、マセラティブランドをもっと知っていただけたらと考えています。

若林 実際に認知が広がっていると感じるようなことはありますか。

玉木 2023年「カー・オブ・ザ・イヤー」のベスト10にグレカーレを選んでいただいたのは、大きいですね。「カー・オブ・ザ・イヤー」44年の歴史の中でマセラティが選出されたのは初めてだったので、とてもうれしかったです。ジャーナリストの方々にも、我々の世界観を理解していただけたのだと思っています。

若林 メディアからの評価も、マーケットに大きなプラスの影響がありそうですね。

玉木 はい、そういう後押しを活かす一方で、購入体験のグレードアップも並行して行っています。今年から新しいCIデザインの店舗を随時展開していきます。アパレルの高級ブランドのようなブティックスタイルで、自動車ディーラーとは一線を画した店舗になっています。

若林 クルマを選びの時点から特別なラグジュアリー感を演出しているんですね。

玉木 その通りです。マセラティには「フォーリセリエ」というビスポーク(特注)プログラムがあります。オプションから自分好みのものを選ぶというのもありますが、お客さま自身が思い描くデザインをイタリアのデザイナーとやり取りしながら実現していくことも可能です。

若林 自分でクルマの色合いやデザインをクリエイトできるということですね。 

玉木 はい、外装を自分の好きな絵画のイメージカラーにすることも、可能な限り実現していきます。

例えば、2022年に発表した特別仕様車「グレカーレ ミッション フロム マース」は、「火星からのオーダーを実現する」というコンセプトで作ったものです。

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火星に存在する赤い砂や酸化した岩をイメージしたデザインを車内外の構成部品に採用した「グレカーレ ミッション フロム マース」

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シートは火星で発生する電気や宇宙飛行士のスーツをイメージしてデザイン。天井には宇宙を旅するドライバーのための星図を投影している

若林 遊び心があって、非常に面白いですね。

玉木 美しさ、かっこよさと同時に遊び心を追求する。そこにマセラティのカルチャーや方向性を知っていただけたらいいですね。

ハイパーターゲティングで富裕層に働きかける戦略

若林 お客さまとのコミュニケーションは、具体的にどのように行っているのですか。

玉木 我々のマーケティング戦略の基本は、マス広告ではなく、ハイパーターゲティングです。ターゲティングをする際も年齢や職業という単純なことではなく、お客さま自身の価値観を重視。ライフスタイルへのこだわりやイタリアン・ラグジュアリー志向を持つ方々を、我々自身が見つけに行くことを大事にしていきたいと思っています。

若林 手法としては、どんな施策があるのでしょうか。

玉木 富裕層の方がいらっしゃる場にクルマを展示したり、百貨店の外商と組んでクローズドの特別なイベントを開催したりしています。いろいろなメディアの活用も、積極的に考えていきたいですね。

若林 リアルでクルマを見て、実際に乗ってみる体験は重要ですよね。

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玉木 その通りです。グレカーレは、女性からの人気が非常に高いんです。運転もしやすいですし、男性はかっこよく、女性はきれいに見せてくれるクルマです。

若林 年代をセグメントしたターゲティングはしないというお話でしたが、20代、30代からの反応はいかがですか。

玉木 若い方、特に小さなお子さんのいるファミリー層や女性は確実に増えていますね。SUVは世界的にも人気ですし、そこでしっかりお客さまの心をつかめる商品としてグレカーレを投入できた意義は大きいと感じています。

富裕層も若年化しており、パワーカップルや20代、30代のアントレプレナーなどへのアプローチも今後もっと注力していきたい層です。そのためにもこれまで以上に認知度アップを重視していきたいと思っています。

~インタビューを終えて~

「強い人ほど美しく優しい」。マセラティは、そんなことを思い起こさせてくれるブランドでした。トライデントマークに表現されていることが、正にマセラティが他とは一線を画し、輝く存在なのだと一層感じさせられたインタビューでした。(若林敬一)

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オート・アドバイザー/R-BRAND株式会社 代表取締役
若林敬一

ケロッグ経営大学院MBA、Marketing&Finance をメジャー。フォード本社広報やマツダのグローバル広報部長、本部長などを歴任。その後ボルボ・カー・ジャパン、ジャガー・ランドローバー・ジャパンのマーケティング・広報ダイレクターに転じた。2021年に独立し、R-BRAND株式会社を設立。マーケティングおよび広報の視点からコンサルティングを行う。
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