まとめ買い需要で大型冷蔵庫が売れている。さらに食材を冷蔵・冷凍保存するだけではなく、最近注目されているのは食材の鮮度保持能力だ。たくさん購入した食材は、なるべく状態のよいまま保存したい。そんなニーズにメーカーも応えている。
また、大容量のメリットを活かしつつ、食材が整理しやすいタイプも改めて見直されている。最近では奥行きが狭くなり、背が低い人でも取り出しやすい冷蔵庫が増加。特に冷蔵室にある一番上段の棚は、奥側まで手が届かず、フードロスになることがある。少し容量が減っても、食材の消費期限を見ながら、きちんと整理できるので、ムダを防げるというわけだ。
今回は代表的な6社の冷蔵庫を比較。冷蔵室、野菜室、冷凍室の鮮度保持、使いやすさなどを比較して、総合的に優秀な一台を決めた。特徴をぜひ参考にしていただきたい。
テストした項目は「冷蔵室の鮮度保持(10点満点)」「野菜室の鮮度保持(10点満点)」「冷凍室の鮮度保持(10点)」「使いやすさ(10点)」「お手入れのしやすさ(5点)」「オリジナル機能(5点)」の6項目合計50点となる。
シャープ「SJ-MF55M」の特徴
500L以上の大容量モデルで奥行63cmを実現。システムキッチンの標準的な奥行65cmで収まるため、並べて設置してもすっきりと収まる。また、上段の棚の奥まで手が届きやすいので、庫内のスペースを有効活用できる。
冷凍食品市場の拡大や、ホームフリージング活用の増加に対応し、冷凍室の収納性も向上している。サイズの異なる冷凍食品や使いかけの冷凍食品も効率よく“縦置き”ですっきりと収納できる「タテ置き名人」を新たに採用。冷蔵室は、独自の「センターピラーレス」構造を採用しており、密閉性を高めて冷気漏れを防ぐ。さらに、ドアポケットの容量も増えている。
電気代高騰や環境保全への意識の高まりにも対応。通常運転に比べ、最大約30%の節電が可能となる「つないでもっと節電」機能を新搭載。無線LANに接続して使用することで、クラウド上のAIが各家庭の生活パターンを学習し、ユーザーの使い方に適した省エネ運転を行う。
Point ①「冷蔵室の鮮度保持」
ラップなしで1日経過したサラダ
ラップなしで1日経過したハム
チルドルームでラップなしで5日経過したアジ
サラダは上部だけが少し乾燥していたが、内側はしっとりとした状態。ハムもフチの部分だけ乾燥して少しだけ縮んでいたが、全体で見ると良好。アジは鮮度を保っているものの、乾燥して身が縮んでおり、皮に少しだけシワが寄っていた。
Point ②「野菜室の鮮度保持」
ラップなしで1週間経過したパプリカと椎茸
ラップなしで1週間経過した小松菜
上段に入れたパプリカは、断面が少し乾燥しているものの、全体的にはそれほど乾燥していない。椎茸も乾燥が少なく、ほぼ入れたままの状態だった。小松菜は全体的に水分を保っていたが、少しシナッとした状態に。1週間経過しているので、良好と言える。
Point ③「冷凍室の鮮度保持」
ラップして1ヶ月間冷凍
冷蔵室で1日かけて解凍
解凍後のドリップ
1ヶ月経過した肉は、ラップをぴっちりとしていたものの、若干霜が付いていた。ただ、変色はなく、解凍後も凍らせた当日の状態はほぼ変わらず、状態は良好だった。ドリップは少しだけ出ている。
Point ④「使いやすさ」
冷蔵室は奥まで手が届くので整理しやすい。中も明るく、見渡しやすいのでフードロスを防ぐこともできそうだ。また、「センターピラーレス」構造で、ドアポケットが広く、たっぷり飲み物などを入れることができて使いやすい。
Point ⑤「お手入れのしやすさ」
冷蔵室は棚の奥まで手が届くので、お手入れがしやすい。引き出しの手をひっかける、くぼんだ場所は細いので少々拭きにくかった。
Point ⑥「オリジナル機能」
冷凍室が広いいのでたっぷり入る。ただ、広いと雑然としやすいが、動かせる仕切りなどがあり、食材に合わせて整理できる。また、無線LANに接続することで、クラウドサービス「COCORO HOME」につながる。「COCORO KITCHEN」レシピサービスの献立提案や、さまざまな音声案内が便利だった。
手が届く奥行と広い冷凍室が使いやすい
冷蔵室は取り出しやすい奥行で、奥まで食材がよく見える。特に気に入ったのが、センターピラーがないこと。他社はすべて冷蔵室の扉部分にピラーがある。そのぶんドアポケットが狭くなっていたが、横幅が広いので2Lのペットボトルなども余裕でたくさん入る。ドアポケットに飲み物を多く保管できるのは便利だった。
食品の鮮度保持は、冷凍、冷蔵、野菜のどれも平均して良好だった。特に使いやすかったのは冷凍室だ。広く、整理しやすい。仕切りもあり、市販の冷凍食品を立てて入れられる。たくさん購入してもきちんと整理できたので、冷凍食品をまとめ買いする方はぜひチェックしてほしい。
気になったのはチルドルームだ。奥行が狭い分、業務用スーパーで売っているような大きい肉のパックはチルドルームに入らなかった。また、チルドルームは他社のようにフタが上に上がったり、倒れたりすることがなく、ふつうの引き出し式。フタのところで引っかかってしまい、食材を入れにくいと感じた。
野菜室の上段右側が浅く、薄いのできゅうりやプチトマトは重ねて入れられない。上段の右側を薄くすることで下段はたっぷり野菜を入れられるメリットはあるが、浅い部分はあまり食材が入らなかったので、もう少し深くしてほしいところだ。
今回、6社中4社は製氷室が冷蔵室の下にあるが、シャープは冷蔵室の下が野菜室となっている。野菜の出し入れで中腰になることがなく、体への負担が少なかった。個人的には「COCORO KITCHEN」レシピサービスの献立提案や、さまざまな音声案内が便利で気に入っている。基本的にキッチンでは孤独なことも多いが、クイズなど、色々話しかけてくれるので役に立つだけでなく、和んだ。
SPEC
定格内容積:545L
本体サイズ:幅730×奥行630×高さ1838mm
質量(約):約102kg
年間消費電力量:283 kWh/年
実勢価格:33万5700円