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僕らを超えたキッチンツール

好奇心を育てる0.2mm! エアリーに香る極薄刃おろし金のキセキ

author: 藤原 奈津子date: 2022/10/27

おしゃれな時計にいい自動車、それからグルメ。僕らのセンスは上昇中。きっと、次なる世界が僕らが上がる最後の大人センスの階段、それはキッチンツールの世界! 日常であって日常を超える瞬間。それは、ちょっとした常の日の料理のアップデート。香りが調味料になる“かつてない”おろし金って、つい欲しくなりませんか?

食事ほど「昨日と違う」体験をするものはありません。美味しい「いただきます」につながる料理は、誰でも存在し得るデザイン体験です。日々の食材や調理法、そしてキッチンツールの選択が、この「昨日と違う」体験をマンネリにもバラエティにもできます。

ツール選びとして、かつてないものを選択することは、“料理”という行為に対し「昨日と違う」体験を選ぶアプローチデザインです。利便性を超えるツールを選ぶ“好奇心”が育った時に、固定概念に縛られない、でも自分らしい、真のアイデンティティーを感じられるでしょう。

京都の町工場が挑む! すだち専用おろし金への463日

果汁を絞られ、皿の端でくたびれた「すだち」。なんとも爽やかな香りを放ちながらも、可食部でもある皮は手付かず。脇目がとらえた「もったいない」。このファーストインプレッションから生まれたのが、すだちを回して皮を削る新たなキッチンツール『CITOROS(シトロス)』です。

創業73年。京都市内に工場を構える金属プレス加工会社「最上インクス」は、薄い金属のプレス加工を得意とし、指先や掌に乗るほど小さく細かいサイズの精密部品を主に製作しています。

戦後間もない1950年に創業者の自宅裏で金属プレス加工業を始めました。子どもたちに愛される「ネジ巻きネズミ」は、高度成長を追い風に「工業製品に使われる部品」に成長を遂げ、バブル崩壊後の製造業にとって厳しい時代も、多くのプレス加工職人の手技で乗り越えてきた、まさにものづくりのリアルドラマがそこにはあります。

「工業部品から、創業当時のようにもう一度、人の手に触れられて楽しみや思い出に残るような製品をつくりたい」2021年8月、最上インクス3代目・鈴木社長によるメーカーズドリームへの挑戦が始まりました。人気プロダクトブランド「METAPHYS」の村田智明氏をアドバイザーに迎え、初のBtoC向け社内デザインチームが組まれました。精密部品を得意する極薄の板金技術の“日用品”へのアプローチは、固定概念沼にハマります。50を超える製品案は、その都度精査されボツの日々。チームメンバーの鈴木社長、松井さん、道下さんの挑戦は数ヶ月続きました。

「日用品は便利やないとあかん」という本来の職人工場としての製品に対する真面目さ、そしてBtoB工場がBtoC製品をつくる、垣根を超えたものづくりへの挑戦が、“らしさ”を狭くしていったのです。

食材とシンプルに向き合う。おばんざい精神を手のひらに

ある日、脇目がとらえた……皿の端の“いつもの”すだちの皮に対する疑問。「すだちの果汁を使う機会は多いですが、皮を使うことがあるレモンやゆずと比べて、すだちの皮は意外と使われておらず、もったいないと感じた」感情。プレス加工の技術面よりも、感情がデザインを後押ししてキッチンツール『CITOROS(シトロス)』にたどり着いたのです。

「おばんざい」とは京都の常の日のお惣菜のこと。身近な食材で手間をかけずに無駄なく使い切るのが特徴です。エシカル消費と言えるおばんざい精神のもと「単なる便利グッズではなく、持つ人の日常に楽しさや幸せを提供したい」。いつもは捨てられていた、すだちの皮一直線に製品開発は進みました。

 “じゃない方”のプロダクトデザイン! 感性を与えるUXデザイン

「僕らプロダクトデザイナーに求められるものは“かつてない”使い勝手のデザイン。未来のデザインなんです。“勝手”とは、それを使うときの良し悪しであると同時に、文字通り身勝手。“自由気ままな”は好奇心であり、いわば固定概念に縛られない、でも自分らしい、真のアイデンティティーに対する行為のデザインです。

UX(ユーザーエクスペリエンス:ユーザーがプロダクトを通して得られた体験)は、今ある便利をデザインすることではありません。在り方や形状に縛られない、自由な発想のものづくりが“昨日と違う”新しい体験=感性をもたらし、ユーザーが認める使い勝手への可能性をつくっていくのです」(プロダクトデザイナー、村田智明氏)

最上インクスの板金プレス加工技術を活かして、おろし金部分の刃は薄さがわずか0.2mmのステンレス製。酸化皮膜という膜がステンレスの表面に発生している状態となっているため、通常よりも耐食性があって錆びづらい。円錐台形状のこの薄い刃が円形のすだちをガイドして「まわす」という動作によって、実まで深く削れず、皮だけをフワッと削ってくれます。

このエアリーなおろし法は、かつてない優しい豊かなすだち皮の香り体験をもたらします。今までのおろし金の形状“じゃない方”がゆえに生まれる、僕らのUXデザインプロダクトです。

Take Action!「もったいない」を好奇心で解決しよう

すだちは、香り豊かで酸味が強い香酸柑橘のひとつ。CITOROSがあれば、捨ててしまいがちなすだちの皮もサッとおろして、料理に使うことができます。円筒型のデザインは、食材やお皿、グラスの上でも、狙った場所におろしふりかけしやすく便利。

CITOROSの使用感はペッパーミルのような感じで、おろしたての柑橘皮のフレッシュさと、ツールを使った料理の楽しさを与えてくれます。インテリア性の高いデザイン、そして使い込むほど料理のアイデアが湧いて……「だって、すだちの皮を使うなんで、昨日までなかった!」まさに好奇心を育てるツール。

また、果汁も絞れる2WAY仕様なので、すだちの皮も果汁も無駄なく使えて、ひとつのツールだけでお料理の幅も広がります。料理の印象をガラッと変えてくれる“香り”は新しい調味料。テーブルいっぱいに広がる香りが、これからも続く“僕らの料理”をアップデートしてくれます。

禅に通じるが如く、思想は内省によりセンスとなると感じます。キッチンツールは、性別に関わらず誰もが手にするプロダクト分野です。日々と向い合い、自分なりに求めるモノを、心踊りながら選び使うことで、そのセンスをモノにできます。そこには、巷の流行り廃りではなく、真摯なものづくりに対する目利きを鍛えるチャンスがあります。


CITOROS(シトロス)


一般販売予定価格:6800円

サイズ:直径47.5mm×高さ40mm
重量:48g
素材:持ち手部…アルミニウム(つや消し黒アルマイト処理)、
刃部…ステンレス(酸化発色処理)

※10月14日(金)より、クラウドファンディング「Makuake」にて先行販売開始(初回限定出荷予定)

取材協力:最上インクス

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栄養士/クリエイティブディレクター
藤原 奈津子

秋田県出身。6種のクリエイティブ職種で第一線活躍し続ける新型フリーランス“ダヴィンチworker”として注⽬される。“ものづくり”の先をデザインする独自の「アプローチデザイン思考法」を軸に、クリエイティブディレクター/コピーライターとして、雑誌広告などで広告賞も受賞。料理研究家として、雑誌、広告、CM、TV、レシピ開発など実績多数。PR広報/ブランディングプランナーとして「もち麦」のブーム構築など、担当ブランドは続々ヒット。しかも、キッチンツール萌えと独自解釈が高じ、おもしろ過ぎるキッチンツールマイスターとして通販番組に出演し完売を連発中。
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